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若宮谷ダム(わかみやだに、徳島県三好市)

●概要
四国電力一宇発電所調整池。
竣功:1935年  型式:G  
目的:P(合計最大取水10.53㎥/s・有効落差111.29m・最大出力8,800kW)
堤高:32.2m  堤頂長:93.03m
流域面積(直接):5.2k㎡  湛水面積:0.01k㎡
総貯水容量:9.4万㎥  有効貯水容量:5.8万㎥


●見学情報
駐車場:無(付近スペース) 
トイレ:無 自販機:無 天端:可 直下:不可 


●参考リンク・引用

https://www.yonden.co.jp/press/2020/__icsFiles/afieldfile/2020/07/07/pr001.pdf

https://www.yonden.co.jp/assets/pdf/corporate/yonden/brochure/index/hydro_power_station.pdf


●道中

吉野川水系祖谷川。現在水力発電所が6基稼働している。その歴史は100年を超え…
1912年旧三縄発電所、
1923年祖谷発電所、
1926年出合発電所、
1936年一宇発電所と戦前で既に4基が稼働(戦後、高野・三縄・名頃発電所運開)。
今回紹介する若宮谷ダムは、戦前最後にできた一宇発電所の調整池。
ちなみに、上の写真は2023年撮影。嘗ては屋根にデカデカと書かれていた「一宇発電所」が消えており少し寂しい気も…。
改修後の建屋というのは、往々にして味気ない(失礼)外観だが、オールドな存在感を放つ高欄とのギャップが見所?だったりする。
さてそんな一宇発電所の調整池、若宮谷ダム。年季の入った非越流堤体と謎設備の数々がミステリアスな美しさを醸しており、人々を魅了して止まないダムだと勝手に思っている。
・・・今回、去年末に続き、3度目の訪問。
4年前の初訪問時、夕日に照らされた調整池は絵画のような美しさで衝撃的だった。
短いスパンでの再訪となったのには勿論ワケがある。
まず1つは、(若宮谷ダムとは別に)若宮谷の取水堰堤はどこにあるのか?
そしてもう1つは、非越流の若宮谷ダム、洪水時はどう対処するのか?
(上記リンクPDFより)
先述の通り、一宇発電所には3取水地点があり、1基は祖谷川本流、そしてどーいうワケか2基がこの若宮谷にあるという。他では見ない構成が不思議で一体どういう事か素人なりに確かめたかったのだ。
そしてもう一つの洪水対策。こちらも先程の通り、若宮谷ダムは非越流堤体であり、堤体に余水吐らしい余水吐は存在しない。
さすがにこの排砂ゲートでは無茶・・・笑
右岸にそれっぽいのはあるが、ごく小規模に見える。
2つの疑問を、始めにほどいてくれたのが若宮谷ダム天端から見える、もう一つの非越流堤体。
ちなみに↑↑写真右の水は、祖谷川本流、栗寄取水堰堤からのもの。こちらも絶品。
初めはあの堤体が、理屈はともかく兎も角取水堰堤カウントなのだ!!と思っていた。
が、若宮谷ダム直上にそんなまどろっこしい設備いるのか?、というかこれだと調整池に洪水は流入しない構造だなと我に返る。取水じゃない?となると・・・
という事で、昨年左岸下流側を少し調べた所見えたのがコチラ(付近立禁の為、山道脇より)。
この大口径、洪水吐だと確信。
同時に、あの非越流堤体が洪水調節用の堤体と。
では、取水堰堤は一体??
あの堤体に接近できれば疑問は氷解するのだと思うが、あいにく両岸ともに若宮谷ダムから立禁で、
右岸側は杉林が視界を阻む。。
そんな事を分かっていながらわざわざ現地に赴いたのだから、これぐらいのことでは退かない…!
という事で、以下ほぼ杉な写真を(苦笑。
まず非越流堤体から。左が上流。この写真が捉えている部分は通常なら川であるはずだが、川底が舗装されており、洪水の導流部と思われる。写真左上、斜め水路は左岸に向かっており、先程挙げた洪水吐出口に繋がると思われる。
非越流堤体左岸。操作室のようなモノが見えるがこれが限界。文字情報は見えず。
引きの図。写真右、縦の直線が非越流堤体天端。
そして、写真左に見えるモノがお分かりだろうか?(唐突
これは正しく、数々見てきた取水堰堤フォルム!
日陰で見えないが、右手前が排砂門、左が立禁看板か取水・除塵操作関連の看板と予想。
ズーム。右端に取水堰堤。手前側、つまり右岸に水が流れている事を確認。そのものズバリは見えないが取水口はそこにあると実感。
取水堰堤であることを決定付ける?思わぬヒントになったがこちら。
プラBOX。
これは四電の渓流取水設備でちょくちょく見かける備品保管用と思われる箱。恐らくそれなりに社内で統一しているようで、見覚えのあったこのフォルムは、樒谷第三取水設備(那賀川、広野発電所)にあったもの(写真)と同型。
(Googleマップより引用加筆)
目当ての収穫があった事もあり、これ以上は探れなかったが、多分上図のような水の流れなのだと思う。
つまり、若宮谷には3基の堰堤が連なっており、平時は取水堰堤から右岸蓋or暗渠より、洪水調節堰堤堤体内を通って、若宮谷調整池へ。洪水時は取水を停止し、洪水調節堰堤左岸から若宮谷調整池下流へと水を流す、と。(あくまで想像。四電の人にタイミングよく会えれば…)
それでもやっぱり、同一河川に同一発電所の堰堤が2基というのは不思議な感じはするが、、上記リンクを見る限りは、そういう事もあるのだろうという事で笑
気分良く帰ろうとしたが、まだ日も高いので洪水吐の先も見てみようと物色。
不法投棄気味な(怒)斜面を降りるとこのようになっている。左が若宮谷ダム(直下は厳しい…)、右が洪水吐。
穴が空くほど削られている。
上部には石張りも残る。
洪水吐(写真右)を流れた水は、トンネル(写真左)へと流下。
トンネルの向こうにやってきた。写真はトンネル出口上から。
付近にはこんな珍しいものも。
裏には「第 号」?とあった。他には見当たらず。
洪水吐下流から。同じデザインのポータル。
扁額銘板の類は無し。
人知れず洪水に備えるトンネル。尊敬の念しかない。
下流方向。この先500m程で祖谷川に接続する。
斯くして、若宮谷の物色は一段落。
先の余水吐的な設備が謎だったりはするが…また追々。

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