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アジア日記#11【 "さよなら" は再び逢う日までの遠い約束 】


5月26日。


「さよならは別れの言葉じゃなくて、再び逢うまでの遠い約束」


いつかの歌のフレーズがふと浮かび、頭の中で流れる。

流れるというよりも、言葉が機関銃の玉のようになり、右耳から左耳へ、つーっと通り抜ける感じ。って言うのかな。


ちょうどさっき、ゲストハウスで出逢ったドイツ人のお友達、ハンスとさよならのハグを交わした。


一緒にいたのはたったの4日間ぐらいだったけど、彼がいなくなり、私の心に3cm程の穴ができた。

大きすぎず、小さすぎず。
しかし、確かに"そこにある"を感じるそれ。

ふーっと、風が吹く。寂しさとともに、心の穴を乾かすように、さらっと冷たく吹き抜ける。


私は昔から「さよなら」が大嫌い。
自分が見送る側だと、尚更。


旅なんて一人で勝手に始めたもの。
だけど、いつの間にか独りじゃなくなっていた。

朝起きて
「Good morning! How are you?」
そう言えるお友達がいた。


この旅で出会った人たちの中でも、彼の存在は特別だった。

一緒にいて、なんだかホッとする。そんな存在。

英語での会話でたまに理解し合えないときもある。でも、彼のたまに発する言葉がすごく心に染みる。

「自分の心に寄り添って話してくれる。」
そういう感じ、かな。


3日間チェンマイを離れ、パーイにいるときも、ヤスミーナ、ラリッサと3人でいつも彼の話をしていた。


そんなわたしは、みんなより一足早くチェンマイに戻ってきた。

わたしがゲストハウスに戻ってきたとき、彼は外のテーブル席に座っていた。

宿に到着してすぐに、お互いの存在に気付いた。

重いバックパックを前後に担ぎ、バス乗り場から歩いてきた汗だくのわたしを、彼は笑顔で出迎えてくれた。


「おかえり、たすく。」
遠目から見る彼の笑顔が確かにそう言っていた。


心落ち着かず、この街に戻ってきたわたしにとって、彼の優しい笑顔は癒し以外の何でもなかった。

飲み物もごちそうしてくれて、3時間の悪路での疲れなんて何でもなくなっていた。


そんな、私の中での大きな存在がいなくなっちゃうのはちょっと悲しい。

今世で出会う人たち、身の周りにいる人たち(友達・家族など)は前世でも何かしらの近い人間関係にあったらしい。

なら、彼は前世ではわたしの恋人、もしくは家族だったのかも。そう思った。


そんな彼が帰っちゃった。


「元々ひとりで勝手に始めた旅なんだし。」 「最初はひとりぼっちだったんだし。」

そう自分に言い聞かせながら、心のどこかで寂しさを感じるわたし。


新しいお友達を作るのはすごく好き。
でも、今は友達を作るのに億劫になっちゃう。だって、みんなそれぞれの道があるからどーせすぐにバイバイしちゃうんだもん。

まぁ、それも旅の一部、か。


みんなが世界のどこかにいるのは知ってる。
みんな同じ空の下で暮らしてることなんて分かってる。

でもね、私のすぐ隣にはいないの。

人はいつか去っていく。
そんなのとっくの昔から知ってる。
だけど、やっぱりその現実が嫌みたい。

わたしはまだそんな儚い現実を受け入れられるぐらい、大きな人間にはなれてないみたい。


でも、それでもいいじゃんねっ。それが今の自分なんだもん。


ひとりになると、ただただ心から拭うことのできないこの寂しさを感じる。


でも、
寂しさを感じるのは、愛する人たちがいるからこそ。


贅沢で、尊く、深く青いこの感情に浸ろう。


時間をかけて。


ゆっくりと、


静かに。




た す く。

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