グリンゴ/最強の悪運男

グリンゴ/最強の悪運男(アメリカ:2018年)
監督:ナッシュ・エドガートン
配給:STXフィルムズ/アマゾン・スタジオズ
出演:デヴィッド・オイェロウォ
  :ジョエル・エドガートン
  :シャーリーズ・セロン
  :アマンダ・サイフリッド
  :シャールト・コプリー
 
自分をだましている製薬会社社長たちに一泡吹かせるべく、真面目な黒人業務管理部長が、出張先のメキシコで狂言誘拐を画策。身代金を奪ってやろうと企むがうまくいかず、あまつさえ現地マフィアや元傭兵の荒事師に追いかけられたりとドンドンドツボにハマっていく。狂騒と悲哀が入り混じる派手なコメディを期待したが割とシリアスで笑えない。
米シカゴに本社を構える製薬会社は身売りを考えていたが、目下メキシコ工場で生産されている米国では違法なマリファナ成分が含まれている錠剤をメキシコマフィアに横流しをしていた。身売りの交渉に悪影響が出ないようにクズ社長とその愛人でもある女性共同経営者は秘匿しようとするが、彼らの旧友でもある黒人管理部長を軽くぞんざいに扱い、身売り後のはポイ捨てする気でいた。そのことを察知した管理部長は三人で出かけたメキシコで一人失踪。クズ社長たちに狂言誘拐の電話をかけ身代金を要求し、その金を奪おうとする。同時に横流しを受けていたメキシコマフィアは取引が停止されることに激怒。管理部長を拉致してその製造方法を奪おうとする。クズ社長は身代金を払うのがイヤなので元傭兵の自身の兄に管理部長の奪還を依頼する。人間の欲が絡み合い事態は大事になってしまう。
前述したが、展開は割とシリアス。人は軽く殺され、会社の公益や従業員の尊厳など限りなく薄く表現される。主人公の管理部長はマジメでお人好しなどこにでもいる普遍的な人物として描かれるが、その周囲ではその人の良さに付けこんで、ないがしろにする経営者がしっかりと描かれる。アメリカならありそうやなぁ…と思ってたが、あんまり日本も変わらん気もする。コツコツ真面目にその日を努力する人間とその上前をかっさらう狡い人間の対比はいつの時代も場所も変わらない。その表現が悲惨で少々嫌気がさしてしまう。
主人公のキャラクターはマジメで堅実を地で行く黒人で、割と高級なスーツに身を包んで身だしなみもきちんとしている。本社や現地の従業員には丁寧に対応し、自分の職務にも忠実。どこにでもいるキャラクターなのだが、何か感情移入がしづらい。信じていた奥さんは不倫中で、出張先TV電話で離婚を突き付けられる。悲惨なのだがリアリティあるのかないのかはっきりしない。真面目一徹を貫いていた善人だから狂言誘拐を決行してもうまくいかないのは当たり前。クズ社長と、とくにヤリ手の女性共同経営者にうまく逸らされて、金も手に入らなければバーでくだ巻く程度しか悪態をつけない。見れば見るほど悲惨なのだが、映画の主役を張るにはもう少しヒネリが欲しい所。
反対言えば周りをはる脇役・悪役たちの個性がはっきりしており、クズ社長はどこまでもクズで自分勝手。身代金は払いたくない、会社の悪事を隠したい、うまく身売りして私腹を肥やしたいと小悪人としては申し分なし。元傭兵の自身の兄に管理部長の奪還を依頼するも、米国外での死亡の場合保険金が下りると知るや、殺害へ依頼を変更するという見事なクズムーブを決めた時は、悪役はこうでないと思わずうなずいた。
そして突飛なキャラクターだったのがシャーリーズ・セロン演じる女性共同経営者。クズ社長の愛人であり、最初は製薬会社をうまく売り抜けようと企むが、あるでき事でクズ社長に裏切られたと分ると、一人助かろうとライバル製薬会社に近づくなどなかなか身替わりの早さに清々しいほどのゲスさを感じる。メチャクチャきれいだから存在感がハンパない。悪役はこの人だけでも良かったんだけどなぁ。俳優の無駄遣い。
その他麻薬の運び屋の彼氏に連れてこられた、何も知らない彼女に、未だに姓名が一定しないアマンダ・サイフリッド。サイフリッドなのか、セイフライドなのか、それともサイフリードなのか。大きく青い瞳が印象的で花も実もある俳優なのにちょっとした程度の役割なので非常に残念。管理部長と二人して逃亡劇を繰り広げてくれるかと思ったのに。
リアルに振ったために笑えなくなり、シリアスに中途半端なので見応えは感じない。逃げて捕まってまた逃げてを何度か繰り返してようよう最後までこぎつける展開。欲かいた人間たちが入り混じっても渋滞していないまとめ方は良かったが、映画らしいワクワク感が感じられんのが残念だったなぁ。

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