バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ

バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ(2021年:アメリカ)
監督:ヨハネス・ロバーツ
制作総指揮:ポール・W・S・アンダーソン
出演:カヤ・スコデラリオ
  :ロビー・アメル
  :アヴァン・ジョーギア
  :ハナ・ジョン=カーメン
  :トム・ホッパー
 
世界的ヒットしている人気シリーズゲームの第1作・第2作をまとめて映画化した野心作…だったが、どこでどう間違えたか原作ゲームファンとしては納得できない作り。日本のコンテンツのハリウッド映画化は軒並み失敗しているが、ポール・W・S・アンダーソン、ついにお前もか。
かつて巨大製薬会社アンブレラの企業城下町であったラクーンシティ。アンブレラの移転により街は衰退し、住人は荒みつつある。アンブレラの孤児院で育ったクレア・レッドフィールドはそのアンブレラの陰謀を兄のクリスに伝えるべく街へ帰ってくる。新米警察官のレオン・S・ケネディはボンクラをかこって勤務中にノリノリでロックを聴く始末。しかし街にはあるウィルスが水面下で広がっており、住人は次第にゾンビのようなクリーチャーへと変貌していく。混乱に陥ったラクーンシティはどうなってしまうのか。
感想は詰め込み過ぎ。そもそも第1作も第2作も物語としてはかなりのボリュームがあるのに、一つにまとめるのは無理がありまくる。ファンを大事にしてるんだろうなと思わせてくれる演出も散見するが、第1作の洋館と第2作のラクーンシティ市内を並列で描くとあっちこっちにシーンを飛ばすこととなり、訳が分からなくなる。さっきまでクリスがゾンビに追い掛け回されていたのに、いきなりクレアとレオンが警察署内をウロウロしているのシーンを差し込んでくるので混乱した。
最初に上がった不満はキャスティングがおかしい。ゲームのキャラクターに合っていない。特に重要キャラのジル・バレンタイン役とレオン・S・ケネディ役の二人はカッコいい俳優さんなのに原作キャラクターと違うので違和感だらけ。ポリコレなんか、これ。クレアとクリスの兄妹もアンブレラの孤児院出身で二人の間に確執があるという設定を付け加えているが、不自然な上に強い信頼関係で結ばれたこの兄妹にはそぐわない。物語を盛り上げるはずのダークヒーロー、ウェスカーは役回りと存在が情けない。ただの使いッ走りやん。そして最大の不満、オレが大好きなキャラクターの扱いが一瞬。第2作ではこのキャラクターが魅力的で、その後の作品で暗躍するのがカッコいいのだがチョイ役扱い。認めんぞオレは。
さらにクリーチャーの存在も埋没している。ゾンビ化しつつある市民が「入れてくれ」と懇願しながら警察署の鉄扉にすがりついているのは、街の混乱と市民の悲痛さ、ウイルスのおぞましさをよく表現されていた。が、あまりゾンビそのものは活躍せず、大量に溢れ出てくるような描写ないので、どこにも逃げ場がないという絶望感が伝わってこない。原作ゲームにも登場したクリーチャーも出てくるが、一体のみで、それも一瞬で退場。ビッグボスも現れるが、ゲーム中あんだけ苦労して倒したヤツをものの数分で退治するのは腹が立つ。オレの苦労はなんだったんだろう。
作品に愛情があるのは分かる。洋館やラクーンシティのセットは原作ゲームを彷彿させてくれ、所々のギミックなんかは実際にプレイしたことがある人ならにやけてしまうだろう。オイルライターの明り一つで暗闇を探索するのもゲームにあった演出。有名なフレーズ「かゆ うま」が出てきたときは思わず笑ってしまった。しかしそれらを台無しにしてくれるほど唐突な効果が多く、いきなり驚かせる演出が目立って違う意味でびっくりする。原作第1作の冒頭での死体を喰らうゾンビがゆっくりと振り返るシーンもあったが、ゲームでは肝が冷えるようだったのに作品中では全然怖くない。もったいない。
キャスティングのミス、演出のいまいちさ、そしてボリューム過多などが合わさってかなり見づらい作品となってしまっている。ヲタク根性と嫁の力でバイオハザード映画シリーズを大ヒットにしたポール・W・S・アンダーソンだが、今作はかなり期待外れだったと言わざるを得ない。CGアニメーションの方がまだ違和感なく躍動的なので非常に残念だ。

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