(r)adius ラディウス

(r)adius ラディウス(2017年:カナダ)
監督:キャロライン・ラブレシュ、スティーヴ・レナード
配給:アットエンタテイメント
出演:ディエゴ・クラテンホフ
  :シャーロット・サリヴァン
  :ブレット・ドナヒュー
 
自分から半径15mに近づく動物が即死する怪異が身についてしまった男と、男の近くにいることでその死の力を無効化にできる女がその原因を探し求める。目に見えない、なんとも形容できない不気味な力に恐怖を感じるカナダ発の怪奇SFスリラー
物語は男がひっくり返った車の中で目覚めたところから始まるが、男には記憶がない。IDを見て自分が何者であるかを確認するがおぼろげ。ヒッチハイクを試みると、ドライバーは運転中に眼を白濁させて即死した。空を飛ぶ鳥も落ち、ダイナーでは客が皆即死している。自宅で自分に近づく動物は即死することに気づく。そこへ昨夜自分の車に同乗していたという、同じように記憶をなくした女が訪ねてくるが、なぜか彼女は生きている。そして二人は真相を探すため行動を始める。
設定が怖い。半径15mに近づくと即死するって何!?って戦慄した。しかもその死に方が眼が白濁しそのままぶっ倒れる。想像するだけで恐怖を感じる。しかし同じく記憶をなくした女がそばにいることでその力は無力化される。磁力の+と-のようにお互いの力が存在するアイデアが斬新。
記憶をなくした二人の男女がお互い離れることができない状況で細かな心理描写があり、妨害により離れてしまうことで周囲に死をまき散らす緊迫感がある。閑静な田舎町や美しい自然を暗い陰鬱な映像と相まって、二人の解決が難しい苦悩と障害がありありと表現され絶望が伝わってくる。二人ともカナダの俳優で日本での知名度はないが、記憶がなく戸惑う姿、自分の身に起こっている怪異に恐怖する表情、そして自分たちが何もであるのかが分からない苦悩と非常に演技力が高い。ほぼ二人芝居の設定だが、知名度がないので先入観なしで演技を楽しむことができる。特にシャーロット・サリヴァンの悲しみに打ちひしがれた表情は心に突き刺すようだった。
恐ろしい怪異の中で二人が記憶を断片的に思い出し、それをつなぎ合わせることで事態の発端までさかのぼるだが、ここからが非常に残念な展開。車が横転した事故現場近くの草原には、黒く変色したミステリーサークルが残っていたが、それがなぜ二人に影響を及ぼしたのかが不明。そこが知りたいのに。
そして物語後半から大きなカーブを曲がるようにストーリーが変貌してしまう。あまりの鋭角ぶりにえぇっ!と驚いてしまった。今までの盛り上がりはよ、二人の関係はよと視聴後グダグダしてしまい、スッキリしない。ラストで男がとった行動も仕方がないのだが、その怪異がそこで終わるという保証はないと思う。
非常に斬新なアイデアと演技力の高い俳優を揃えて、映像も雰囲気があってなかなかの良作かと思ったのだが、終盤の展開には非常に残念。またそうなった原因や怪異の本質を説明していないのは致命的。宇宙人やクリーチャーなど出さなくてもSFスリラーとして成立しかけていただけにもったいない。

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