ブレイク・タウン

ブレイク・タウン(2020年:アメリカ)
監督:ヨーク・アレック・シャクルトン
出演:ガイ・ピアース
  :デヴォン・サワ
  :ケリー・グレイソン
  :マイケル・シロウ
  :ルーク・マーティン・コリンズ
 
かつて相棒を誤射してしまった保安官が町を占拠したならず者たちへ反撃するクライムアクション。ガイ・ピアースの精悍な保安官はカッコいいが、所々ツッコミどころが散見する。
主人公の保安官はかつてアメリカ最古の法執行機関テキサスレンジャーの一員だったが、人質に取られた相棒を誤射してしまい、それ以来拳銃をとることはなかった。保安官として小さな町の治安を担っていたが、ある日バイク乗り二人がダイナーでトラブルを起こす。一人を逮捕し、留置所へ連行しようとしたが、バイク乗りの仲間が町を襲撃。住民を教会に押し込んでしまう。ならず者たちのボスはこの町に所縁があるようで、ある犯罪計画を企てていた。保安官と保安官補佐は町を開放するべく奮闘する。
主演のガイ・ピアースは文芸からアクションにサスペンス、コメディと何でもござれの万能俳優。寡黙で詮索を嫌う主人公を演じるが、嫌味はなく魅力的に見える。誤射の一件から銃を持ってはいないが、ならず者たちに反撃するときはトラップを仕掛けて撃退したり、部下に冷静に指示を出して頼れる上司を演じている。終盤には銃をとるが、その拳銃が西部劇ではお馴染みのコルト・シングル・アクション・アーミーっていうのが泣かせる。あんまりクローズアップはされんが。逃走するならず者のボスを馬で追いかける姿は荒唐無稽だが妙にカッコいい。この人のおかげでこの作品は見ることができた。
悪役のならず者たちはみな個性的ではあるが、割とおとなしめ。銃を構えて町の住民をおどすが、直接撃ち殺したのは三人程度。残酷さを強調させるための演出もあるが、キチンとボスの命令を聞くいい人たちばかり。一人反抗したのもいるが、殺されず殴られて伸びてた。銀行を占拠するために仲間のお姉ちゃんを先に銀行員として潜入させているのはいいアイデアだが、序盤早々に正体を現すので別に必要なかったんではと思わされた。ボスはこの町に縁があるらしいが、深い因縁めいたことは語られず、ならず者たちはイラク戦争の帰還兵らしいが、その割には雑なアクションで今一つ説得力はない。アサルトライフル撃ちまくっても保安官にかすりもしないので、お前らやる気あるんかとツッコんだ。
最初に通信を遮断するために町の送電装置を破壊したのはリアリティあるが、後は行き当たりばったりのような作戦で、現金を強奪するのは説得力がない。現金輸送車だって襲撃された時の対策はしているだろうし、セキュリティ大国のアメリカだったら通信が途絶えた時点で応援が駆けつけるぐらいの対応はとるだろう。しかも大量の現金を持ち逃げすると必ず足がつく。国外逃亡するつもりでいたらしいが、広いアメリカを陸路で逃げるのは限界がある。どうも犯罪計画がずさんに思える。
展開も今一つ。保安官が反撃していてもどこかゆっくりしていて緊迫感が乏しい。小さな町を徒歩で移動しているためかスピード感が薄く、緊迫感もない。派手な爆発はあるが、銃撃戦も少なく、あっても散発的。すぐに保安官が隠れてしまうのでゲリラ戦的になり、映画ならではの爽快感はない。せっかくシングル・アクション・アーミー持ち出しているんだから、西部劇的な決闘シーンがあれば盛り上がって良かったんではないかと残念になる。そして教会に押し込められた住民が10人程度で高齢者が多く、こんな小さな町ではないだろうとさらに突っ込む。
ダイナーの店主兼教会の説教師の女性がカッコいいのは良かった。保安官補佐の姉で保安官に好意を寄せており、ならず者に絡まれたときは一撃をくらわすなど、いかにも西部劇の強い女って感じで好感が持てた。その他あまり活躍はなかったが、銀行に潜入していたお姉ちゃんもキャラクター的には立っていた。もう一人の敵のお姉ちゃんはあっけない最期でこちらは残念。
出演する俳優が個性的でそれぞれキャラクターが立っていたので、尺をもうちょっと短めにして、展開にスピード感を持たせて、一対一の決闘とかあれば西部劇的な爽快感が味わえたかもしれない。悔やまれる作品だった

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