ガールズ・オン・ザ・サード・フロア

ガールズ・オン・ザ・サード・フロア(2019年:アメリカ)
監督:トラヴィス・スティーブンス
出演:CMパンク
  :トリエスト・デュン
  :サラ・ブルックス
  :エリッサ・ダウリング
  :カレン・ウォディッチ
 
ひなびた郊外の古い館を購入した男に恐ろしい怪異が迫る、家系ホラー。家も怖いが、そこかしこから沁み出してくる汚水や粘液が気持ち悪い、精神的にえぐってくれる小品。
ひなびた田舎町で心機一転再出発を目指した男が、バリキャリの妻のために古い邸宅をリフォームし始める。その家は調度品や壁紙がクラシカルで長い歴史を感じるが、同時に老朽化や損耗が激しく、男は悪戦苦闘しながらきれいに直していく。向かいの教会の女性牧師や町のダイナー店主から邸宅の因縁を示唆されるが、聞き流してしまう。そんな夜に庭に現れた若い女と親しくなる。そして次の夜も女は誘うように男の前に現れ、男は浮気性が故に女と遊んでしまう。その日を境に怪異が男の身の回りに出現するようになる。
主演のすね傷クズ男はCMパンク。アメリカの総合格闘技やプロレスでは有名選手で、なかなか芸達者。しかしちょっと演技が固いかな。機嫌悪そうに悪態つく演技は堂に入っているけど。全身入れ墨だらけで少々視覚にやかましいが、いかにもクズっぽくて雰囲気は出ている。浮気癖があり、懲罰を免れるために仕事を解雇された男。そんな彼がニヤニヤしながら若い女を家の中に入れるのはあきれてしまったし、手伝いに来た友だちの前で脅すように口止めする姿は割といい演技だったと思う。本人はこういう人ではないんだろうが。
ボロボロだった邸宅がきれいに修繕されていく過程は、DIY好きには面白いだろう。アメリカは古い邸宅を自分で手直ししてリフォームするのは割と一般的だと聞くし、最近日本でも自分でリフォームする人が増えていると聞く。しかしこの邸宅は事情が違う。壁にはシミがついた穴が開き、キッチンの排水には汚水が詰まっている。そして所々に訳が分からない粘液が沁み出す。いや業者呼べよとツッコんだ。水回り配管は専門家に診てもらわんと後々もっと困ることになるぞ。
そしてその邸宅に潜む怪異はもっと奇妙。女性牧師の言葉を借りるなら、邸宅に住む人に試練を与えているというが、不動産屋が管理している物件でここまでいわくつきなのがあれば大問題になる。住人をとり殺そうとしているのに、試練とはなんのこっちゃである。もともとは売春宿だったということで怪異は男を誘惑する女だが、女は派手で男好きする衣装を着ている割には妖艶さが薄く、ただの思わせぶりなストーカーみたいになってしまっている。もっとすね傷クズ男を手玉に取るほど妖しさを爆発させてほしかった。またその女と後に現れるクリーチャーとの因果関係がよく分からない。
序盤はリフォーム状況とすね傷クズ男の身辺がゆっくりと語られるが、あまりにも時間をかけすぎて最初のうちからダレる。その反面後半は展開が進み、一度ストーリーが終局を迎えてからエピローグのような展開が進む。それが駆け足過ぎて視聴ペースの配分が悪くなる。最後の最後にこの邸宅の因縁が語られるが、それに巻き込まれた者たちはたまったもんではないだろう。リフォームの手伝いに来た黒人の友だちがかわいそう。更に無残に片づけられてしまった愛犬はもっとかわいそう。動物をぞんざいに扱うといろんな団体からクレームが来るぞ。
観終わってみると、意外とひねりや奇をてらった展開もなく、正統派の家系ホラーだったというのが感想。ジャケットでは割と斬新さをアピールしていたのだが、エロとグロを中途半端に演出したという残念な結果になってしまっている。洋の東西、家系ホラーはあるが、今まで観た家系の中で一番コンパクトな怪異だった。もっと粘液をあふれさせたら精神的にこたえたと思うんだが。

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