スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい

スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい(2006年:アメリカ)
監督:ジョー・カーナハン
配給:ユニバーサル映画(米)・UIP(日本)
出演:ジェレミー・ピヴェン
  :ライアン・レイノルズ
  :レイ・リオッタ
  :ベン・アフレック
  :アリシア・キーズ
 
豪華キャストが繰り広げる、一人の標的を狙う暗殺者たちとFBIの攻防を描いたバイオレンス群像劇。主な出演に名俳優が多い中、ミュ-ジシャン二人の存在がやや軽い。
マフィアとつながりのあるマジシャンがマフィアのボスから「心臓」を狙われる。謎のスウェーデン人が呼ばれたことを皮切りに、女二人組の暗殺者、ネオナチかぶれの狂犬三兄弟、拷問を得意とする伝説の傭兵、変装の達人ヒットマン、そして保釈保証人と元刑事の三人組たちがマジシャンの隠れている湖畔にあるカジノホテルに続々と集まってくる。FBIはマフィアの壊滅を狙ってマジシャンの保護を目指すが、それぞれがホテルを舞台に激闘を繰り広げる。
主要な出演者が豪華。FBI捜査官にはライアン・レイノルズとレイ・リオッタ。二人ともカッコいい。若く勢いのあるライアン・レイノルズに、ベテランの雰囲気を漂わせるレイ・リオッタ。群像劇の体があるので役にあまりクローズアップされないが、追いかける焦りが観ている側に伝わる。その上司の職務に忠実な副長にはアンディ・ガルシア。最後まで秘密を隠しているので裏切られる期待感が盛り上がってくる。
暗殺者はそれぞれ個性的。彼らが手を変え品を変えマジシャンが潜伏しているホテルのスイートへ侵入するのがカッコいい。途中交錯する場面もあり、それぞれがマジシャンを狙っている緊迫感が高まる。
しかしマジシャン側もトラブっている。マフィアのボスの座を狙っているのだが、犯罪に手を出したところで足がつき、FBIに目をつけられる。いわゆる司法取引で自身の身の安全を図ろうとするが、そのためには部下を切らなければならず、部下からはそれを脅される。ジェレミー・ピヴェンが気ぜわしくトランプカードを操りながら、どんどん追いつめられる迫真の演技が見物。
映像やカメラも考えられていて、迫力あるアクションを更に盛り上げる。狂犬三兄弟がFBIと激しい銃撃戦を繰り広げ、そこに錯乱した女スナイパーが対物ライフルでバンバン狙撃するシーンはものすごい迫力。それぞれがホテルに侵入していくシーンのつながりは緊迫感とプロの技術の盛り上がりを感じる。元刑事が三兄弟長兄と対峙したシーンは個人的に気分がスカッとした。
内容はバイオレンスだが、登場人物の役柄の個性が光り、一つの目的にそれぞれが血を流し合う群像劇の様相が面白い。FBI側のキャストもいいが、狂犬三兄弟の長兄、クリス・パインのサイコぶりは笑ってしまうし、保釈保証人役のベン・アフレックが言うことを聞かない元刑事二人に挟まれるのは同情してしまった。そしてその扱いのひどさ。ちょっと驚いた。
それぞれの暗殺者、FBIに存在感と説得力があるのだが、女暗殺者の実行役のアリシア・キーズとマジシャンの手下役のコモンの二人は扱いが軽くて残念。アリシア・キーズは娼婦に変装して侵入するが、華があってもアクションはなく物足りない。美しい女暗殺者が屈強な男ども相手に鮮やかに立ち回るのが映画の華なのに。コモンも頭も切れて腕もたつ、できる手下感があるのだが、退場がわざとらしく、今ひとつ見せ場が弱い。バンバン暗殺者とFBI相手に立ち回ってほしかった。そしてアリシア・キーズをお姫様抱だっこしていい雰囲気に。彼女の相方、女スナイパーがかわいそう。
FBIは潜入捜査官を失った過去がある上で、マフィアのボスは何者で、なぜマジシャンはボスの後釜を狙ったのか、そしてマジシャンが命を狙われるのか。そこに大きな秘密があり、FBI副長も隠している新事実がある。結末に向かって少しづつ伏線がちりばめられている。なんとなく分かりそうだが、分かりにくくぼかしている。それに振り回された現場の捜査官の犠牲は大きい。
ラストシ-ンは良いのか悪いのかどちらとも取れる。その選択は理解できるが、自分がその立場なら公益の保護や職務への忠実以前に人の命を前にして、その行動はできない。
この物語の前日譚として2が制作されているが、この作品はこれで完結していると思う。監督も違うし。血しぶきや残酷な表現や年齢的に見せたくないモノもあるが、文字通り血沸き肉躍る群像劇だった。そして今回も邦題が気に入らない。

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