ヒットマンズ・ワイフズ・ボディガード

ヒットマンズ・ワイフズ・ボディガード(アメリカ:2021年)
監督:パトリック・ヒューズ
出演:ライアン・レイノルズ
  :サミュエル・L・ジャクソン
  :サルマ・ハエック
  :アントニオ・バンデラス
  :フランク・グリロ
  :モーガン・フリーマン
 
諸事情で休職中のボディガードが、かつて身を挺して護った殺し屋とその妻に巻き込まれて繰り広げるドタバタアクションコメディ。キャストが豪華で眼を引く楽しさはあるが、ふたを開くと総合的にバランスの悪さを感じさせらる。
ギリシャは経済破綻によりEUより厳しい経済制約を受けていた。それに怒り心頭のギリシャの富豪は報復のためにEU全域にテロを起こそうと画策する。その一方超一流のボディガードは要人の護衛に失敗し、資格停止中。メンタル面でも不安定さを抱えてしまい、カウンセリングから気晴らしを勧められてイタリアでバカンス中。そこに地元ギャングとトラブルを抱えた殺し屋の妻が乱入。彼女は新婚旅行中に失踪した夫である殺し屋の捜索を、強引にボディガードに協力させる。ドンパチの末殺し屋を救出したが、三人はインターポールに拉致されてしまう。ギャングはインターポールにテロ情報を提供する予定だったのだが、そのツテが失われてしまったのだった。殺し屋夫婦はこれまでの罪状の不問、ボディガードは資格の回復を材料に取引され、おとり捜査に協力させられるのだった。
ボディガードと殺し屋が最初は反目しつつも次第に協力し戦うという構図はありがちだが、ライアン・レイノルズもサミュエル・L・ジャクソンも動ける役者なのでアクションだけを見ればカッコよく立ち廻っている。一つ一つのアクションに重みがあり、血糊も噴き出して、銃撃戦もふんだんにある。そんなバカなと驚かされるカーチェイスもいい。でもコメディ寄りにするのならもっと軽快に立ち廻らないと、ダメージの陰惨さが残ってしまうので笑えない。
主演のライアン・レイノルズは巻き込まれの主人公がよく似合う。こだわりが強くて神経質だけど人のよさそうな見かけが、今作の主人公によく合っている。オープニングにカウンセラーが面倒臭そうにカウンセリングしているシーンは主人公の性格を理解しやすかった。銃弾を受けても致命傷を避け、車に跳ね飛ばされても立ち上がったり、薬物耐性ないクセに麻酔は効きづらかったりとキャラクターが濃すぎるが、子供の頃に受けたトラウマからシートベルトにうるさかったり、ジェラートが食べられなかったりと内面にもクローズアップしている。
殺し屋夫婦のイカレっぷりは物足りない。殺し屋役のサミュエル・L・ジャクソンはこれで殺し屋が務まるのかなと思うドジっ子ぶり。それでもこの人のアクションは殴られると痛いという説得力があり、銃を構える姿には何者にもなびかない無頼の風格がある。そこに詐欺師の妻役、サルマ・ハエックと暴走ラブラブシーンを入れるが、二人ともいい年齢なのでイカレを感じるより、痛々しさを感じてしまう。サルマ・ハエックはせっかくの美女なので年齢に落ち着いた演技をする方がよりセクシーさを感じるんだがなぁ。
イタリアののどかな風景に明るいライティングで観ている分には気分は晴れる。青い海に急斜面に並ぶ白壁の家々。緑の野原に連なる高架橋高速道路。なかなかロケーションはいい。衣装もよく考えられていて、サルマ・ハエックの鮮やかなドレスやライダースジャケットにエナメルのセットアップ等々。サミュエル・L・ジャクソンが後半の方でかぶっていたハット姿はオシャレ。それに比べライアン・レイノルズは毎回血まみれのスーツ・シャツ姿でちょっとかわいそうだった。
80年代から映画を観てきた者からしたら、アントニオ・バンデラスやモーガン・フリーマンが悪役とか端役とかで出ているのに驚く。アントニオ・バンデラスとサルマ・ハエックなんか例のアゴがプロデュースした作品以来の競演でないだろうか。モーガン・フリーマンは年とったな感じさせられる。使いどころはもったいないが。
キャラクター・アクションは眼を引くものがあるが、展開が何かの作品と似たように感じて、期待も驚きも薄くなってしまっているのが残念。ボディガードのキャラクター性を活かしつつ、殺し屋が振り回され、更にその妻が混乱を持ち込むという展開にしてくれたら、頭に余計なことが浮かばず笑いながら視聴できたんだろうな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?