ジェントルメン

ジェントルメン(2019年:アメリカ・イギリス)
監督:ガイ・リッチー
配給:STXフィルムズ(米)、エンターテインメント・フィルム・ディストリビューターズ(英)
出演:マシュー・マコノヒー
  :チャーリー・ハナム
  :ミシェル・ドッカリー
  :ジェレミー・ストロング
  :ヒュー・グラント
 
英国の大麻王が殺伐とした稼業に嫌気がさし、事業を売却しようとしていた。その売却先はある富豪。交渉しつつ適正価格で売り払おうとしたが、中国人マフィアの横やりが入る。その直後大麻農場は若者の格闘技集団に襲撃され大麻は強奪。同じ頃には大麻王が懇意にしている貴族の娘の奪還にトラブルが発生。その彼の動向を嗅ぎまわる記者が大麻王のデキる部下に調べ上げた事実を語っていく。
大麻王役にはマシュー・マコノヒー。エキセントリックなたたずまいで存在感を出し、若くしてキレ者の大麻王を演じる。どんな鉄火場でも落ち着き払って対処し、常に最善を選ぶことができる人物。しかし貴族の所領を大麻の栽培農場に借りていることから仁義をわきまえており、貴族のゴシップを報道するタブロイド紙の編集長を無視するなど絶対な悪とも言えない人物。妻を愛し、部下からも信頼されている。マシュー・マコノヒーの青い瞳が交渉や脅しをかける姿に迫力を加えていた。ただこの人物が物語の中心にいるはずなのに、あまりストーリーのメインになっていない。
じゃあ物語の中心はっていうと、大麻王の身辺を探っている記者と大麻王のデキる部下の二人。記者が調べた事実や憶測をデキる部下に物語るのがこの作品のメインストリーム。記者役のヒュー・グラントがいかにも金に汚くてクズっぽい。昔はラブコメの主役を張った二枚目半俳優が腹の出たヒゲの軽薄そうな役をやっているのが意外。デキる部下に大金をせびるために調子に乗るが、デキる部下の迫力に負けたり、いい酒と和牛に釣られたりと何とも情けない姿を見せる。デキる部下はコカイン・ヘロインは憎むが大麻は好むというちょっとしたクセ者。行動力も判断力もあり大麻王に信頼されているが、物語では割と失敗が目立つ。でも、ごつい胸板をきちんとした身形を固めているのがいかにもデキるナンバー2って感じでカッコいい。この男が各勢力・人物にわたりをつけて後半物語が転がり出していく。
いかにもガイ・リッチーらしいカッコいい音楽を随所に入れて、物語を走らせていく展開。大麻王を中心に彼のデキる部下やクズな記者、中国人マフィアや大麻事業を購入しようとする富豪など様々な人物・勢力が現れるが、今一つとっ散らかって争いに緊迫感がない。ヒリつくような頭脳戦や駆け引き、血が沸き立つような銃撃戦や格闘戦もなく、物語に今一つ盛り上がりが少ない。大麻農園を襲撃した若者たちのジムのコーチが、謝罪とけじめの意味でデキる部下に使いッ走りのように襲撃の片棒を担がされるが、けじめのつけ方としては弱いし、その程度で済むんかなと感じてしまう。コリン・ファレルが演じてただけにもっと事態を引っ掻き回してくれてもいいと思った。
終盤になるとどんでん返しを狙いすぎている気がしてしまい、少し蛇足も感じた。唐突に転換も感じてしまい、くどいと思ってしまった。それまでの伏線を積み上げて、最後の最後にドーンとひっくり返してくれるのがいい意味で期待を裏切ってくれるのがいいのだが…。物足りなさを感じる。
人物のキャラクター性を描くことが上手な監督なので、その要求に答える俳優が多数出演しているのがいい。デキる部下役のチャーリー・ハナムはカッコいいが、大麻王の妻役のミシェル・ドッカリーの魅力もなかなか。ツンと澄ました背の高そうなスタイルのいかにも強い女性で、敵に襲われても二連発の拳銃を発砲して二人撃退したシーンは小気味いい。もっと彼女にもクローズアップしてあげて欲しかった。
割と淡々と進んだような印象を受け、襲撃の緊迫感のなさや、ゆるい隠喩だらけの駆け引きなど消化不良が残る。扱うものが非合法な(でも英国は大麻に関して規制はゆるい)だけにもっとギラギラした抗争を描いても良かった。印象に残ったのが俳優の衣装がどれもカッコいいというのは残念な感想になってしまう。

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