ゴースト・エージェント / R.I.P.D
ゴースト・エージェント / R.I.P.D(アメリカ:2013年)
監督:ロベルト・シュヴェンケ
出演:ライアン・レイノルズ
:ジェフ・ブリッジス
:ケヴィン・ベーコン
:ステファニー・ショスタク
:メアリー=ルイーズ・パーカー
誰もが気になる死後のこと。できればこの世にとどまりたいが、居続ける霊は悪霊となり、人間社会に害をなす。そんな悪霊どもを取り締まるのがあの世警察R.I.P.D。相棒に裏切られて死んだ刑事はその腕を買われて悪霊を取り締まる刑事となり、イカれた相棒とともに自身の死に隠された陰謀を追っていく。副題の「R.I.P.D」が「Rest In Peace(安らかに眠れ)」と「Police Department(警察組織)」をかけているのに思わずニヤッとしてしまう。
ボストンの腕利き刑事の主人公は豊かな生活を求めて、相棒から預かった証拠品の金塊を自宅の庭に埋める。翌朝良心が咎めた彼は相棒に証拠として届けると告白。が、直後に出動した現場で相棒に射殺されてしまう。時間が止まるような不思議な体験をした彼は、あの世で管理官と名乗る女性から、悪霊どもをあの世へ送る組織「R.I.P.D」にスカウトされる。19世紀から所属しているカウボーイ風の男とコンビを組まされて、有無を言わさず任務にあたる。その最中自分が殺された背後に何かしらの陰謀があったことを知っていく。
アメリカの古都、ボストンの街並みとゴーストハントの雰囲気とマッチしている。レンガ造りの街並みの背後に人であることを辞めたモノたちがうごめき、人間の生活に紛れ込んで暮らしている。そんな設定が割と自然。悪霊の情報屋がレッドソックスの大ファンなのでバックスタンドで試合を観戦していたり、R.I.P.D本部からこの世への出入り口が、客が来ないから怪しまれないということでビデオデッキ修理店のトイレに繋がっていたりと、この世とあの世の近さを感じる演出は個人的に大好き。見慣れた世界の裏側には不思議な世界が広がっているという設定は昔からワクワクを感じる。
独自設定もユニークで、霊となった主人公と相棒はこの世の者たちには違う姿形に見え、主人公は中国系のお爺さんで、カウボーイ風の相棒はブロンドでセクシーな美女。時折その姿で活躍する描写があり、中国系お爺さんがバナナ(実は悪霊を成仏させることのできる銃)を振り回したり、ブロンド美女が悪霊にロープごと引きずりまわされるなどコメディ的にも演出される。悪霊はスパイスが苦手ということで、目の前でスパイスをふんだんに使ったインド料理を食べるなどもちょっと斬新。日本なら多分塩をかけるだろう。
しかし、いい設定があるのにストーリー的に盛り上がりに欠けて、アクションもコメディも中途半端なものに仕上がっている。特に主要二人のキャラクター性が活かせておらず、主人公ライアン・レイノルズは持ち味のチャラさやはっちゃけ感、自分が殺されたという悲壮感やイカれた相棒に振りまわされて混乱しているような描き方が乏しい。実はこの人の演技はアメコミ映画の予告編でしか見たことがないが、それより演技が下手に観えてしまった。
そして一番残念なのがそのイカれた相棒役ジェフ・ブリッジス。19世紀からR.I.P.Dに所属しており、カウボーイハットをかぶって早撃ちの名手とうそぶき、上司からの命令など無視して暴走する問題エージェント。主人公を引き連れて悪霊どもを捜査するが、もっと破天荒に引っ掻き回してほしかった。ジェフ・ブリッジスのいかにも頑固でふてぶてしい、ゴーイングマイウェイな西部の男っていう風貌がカッコいいのに。
悪役のケヴィン・ベーコンのたたずまいは役者魂を感じる。この人とウィレム・デフォーとデニス・ホッパーはオレの中では悪役が輝く役者の三人。特にケヴィン・ベーコンには反体制の臭いがして反逆者という雰囲気がカッコいい。管理官役のメアリー=ルイーズ・パーカーもきっちりした制服に白いエナメルのブーツという衣装が映えてなかなか魅力的。
雰囲気、設定はよかったが、俳優のキャラクターを活かしきれなかった残念な作品。もっと荒唐無稽に俳優を動かして、群がる悪霊どもバッタバッタと撃ち倒し、巨大な陰謀に死に物狂いで噛みついていくようなダイナミックさがあればよかったと思う。とりあえずオレが死んだら悪霊になって、R.I.P.Dの追及をかわしながら、世界中旅行しまくったろうと思う。
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