パンドラム

パンドラム(2009年:ドイツ・アメリカ)
監督:クリスチャン・アルバート
製作:ポール・W・S・アンダーソン
配給:オーバーチュアー・フィルムズ
出演:ベン・フォスター
  :デニス・クエイド
  :アンチュ・トラウェ
  :カン・リー

タイトルを見た時思いついたのがWWⅡの英国の迷試作兵器、パンジャンドラム。特に関係はない。サバイバルに秀でた役を演じることが多い女優の配偶者、ポール・W・S・アンダーソン(多分文系インドアゲーム好き)制作のサイコサバイバルSF。
滅亡に瀕する地球から旅立ち、新たなる惑星を目指す超巨大宇宙船。何万人の人間を輸送するため、クルーたちは交代にコールドスリープで眠りながら航行任務に当たるが、ある時主人公の伍長が目覚めた時、周囲は異様な雰囲気だった。交代人員も見当たらず、電源も喪失した空間で、もう一人目覚めた中尉と協力して室外に脱出したが、そこは無毛の白い身体に牙をもつクリーチャーたちが人間を喰い漁る艦内だった。
調べると割と酷評されている作品。なるほど物語・設定等を詰め込んだ感はある。地球崩壊に伴う別惑星への移住。長期間の宇宙航行による精神崩壊にサスペンス的展開。ゾンビ要素ふんだんにある異質クリーチャーたち。二つぐらいに分けてじっくり撮るとそれなりの作品に仕上がったのではないかと思うが、自分はこれぐらいふんだんに一つの作品へ盛り込んでくれたことが嬉しい。なんせ数多のゲーム作品を力技で映画化してきた実績のあるポール・W・S・アンダーソンだ。これぐらい詰め込むのは当たり前。B級感あれど豪華な作品に作り上げている。
ポール・W・S・アンダーソンが手掛ける作品に強い女性キャラが出てくるのも当たり前。アンチュ・トラウェが演じるクリーチャーたち相手に半年サバイバルで生き残った女性生物学者がカッコいい。本当に学者か?と思うほどの身のこなしと格闘術でクリーチャーの攻撃から逃れ、食料のバッタをモリモリ食す。ワイルドでセクシーなカッコよさがあった。多分、ポール・W・S・アンダーソンはこういう女性が好み。嫁さんもそんな感じだし。オレも好きですけど、何か?。
そんな女性生物学者に比べて存在感が見劣りするのが主人公である伍長。主人公なので活躍はするが、実際のサバイバルや戦闘では女性生物学者と、途中から合流するやたら強い農業班員に負けてしまっている。原子炉を再起動させるシーンが一番の見せ場。線の細い弱っちいキャラだが、機転と勇気で困難を乗り越える姿はよかった。
その上役の中尉はほぼ一人芝居状態。通信でやり取りはあるが、密室から出られないので展開に変化は少ない。が、生き残りのクルーを救出したことで宇宙船に起きた事件が紐解かれていく。そして伍長と中尉の関係もその謎の一端なのだが…。
この物語の基軸となるのがパンドラムという精神障害。長期間の宇宙航行によるストレスが原因で発症する一種の偏執狂ということだそうだが、記憶の混乱やすり替え、事実とは違う幻覚などが現れて彼らを苦しめるている。そのため何が本当で何がウソなのか、自分が記憶していることが正しいのか、眼前に見えている事象は真実なのかといった、作品のミスリードになる。途中まで見ていて、思い込んでいた内容が裏切られたときは、映画の王道と言えどもスカッとする裏切られ感があり面白い。
もう一つの主役、クリーチャーたちも気持ち悪い。巣を作り繁殖する集団性があり、罠を仕掛けて獲物をおびき寄せたり、弱いものから餌食にするといった知性もある。反面、ボスがやたら強い農業班員と戦うときには、敵に武器を譲るなど公平性もあり、実は彼らの正体は○○だったという設定もある。
粗を探せば結構ある。伏線を忘れていたり、とっ散らかったストーリーをまとめ切れていない点もある。二点あげれば、カプセルの表記を見ただけで黒幕が分かったとか、クリーチャーたち相手に生き残ってきたのに子供は見逃せとか。つじつまが合わない。
この作品も大作として観ると期待外れになるが、B級として観ると予想以上に楽しめる作品。映画館のスクリーンで見るより自宅のモニターで気楽に観ると楽しめる。ちょいグロがあるので食事しながらは止めといたほうがいい。

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