エージェント:ライアン

エージェント:ライアン(2014年:アメリカ)
監督:ケネス・ブラナー
原作:トム・クランシー
配給:パラマウント・ピクチャーズ
出演:クリス・パイン
  :ケヴィン・コスナー
  :ケネス・ブラナー
  :キーラ・ナイトレイ
 
トム・クランシーが生み出した人気キャラクターがCIAエージェントへ転身したきっかけを描くポリティカルサスペンス。アレックス・ボールドウィン、ハリソン・フォード、ベン・アフレックと名優が演じてきた役を若手、クリス・パインが受け継いだ意欲作。
このシリーズは熱い世界情勢を背景に、CIAに所属するジャック・ライアンが的確な判断力で大胆に行動し、時に熱く、時にクレバーに、そして人間臭く事件を解決する人気作品。作者のトム・クランシーは逝去したが、受け継がれながら新作が出続けている。今作は原作を元にしておらず、ジャック・ライアンがCIAエージェントへ転身する若き日を描いている。
イギリスでの留学生時代にアメリカ同時多発テロを目撃したジャック・ライアンは海兵隊に入隊。作戦中ヘリが墜落し脊椎を負傷する。リハビリ中その後の恋人と知り合うが、経済学の知識を見込まれてアメリカ中央情報局CIAにスカウトされる。その後大銀行の監査員でありながら陰ではCIA所属の彼はロシアで不自然なドル相場の動きを察知。取引先である実業家の不穏な動きを確かめるため、モスクワへ乗り込んでいく。が、浮気を疑った恋人も彼の後を追い、二人は国際経済的テロの陰謀に巻き込まれていくこととなる。
主人公にはクリス・パイン。若き日のジャック・ライアンを演じるということで、かつて演じた名優たちよりフレッシュ感があり、アクションも活き活きしている。ちょっと向こう見ずな性格も加味されて大胆な行動もハラハラドキドキさせてくれる。彼の大きな武器である的確な判断と機転を利かせる頭脳も小気味がいい。が、まだまだクリス・パインでは力不足に感じた。ジャック・ライアンが持つ魅力を存分に発揮できず中途半端。本人はがんばっているようだが、無理しているように見えてしまう。もっと人間臭い愛嬌が欲しかった。
キーラ・ナイトレイが演じる恋人が性格的にぶっ飛んでいて、浮気を疑ってはるばるモスクワまでやってきて、事実を打ち明けられた彼の諜報活動に協力。ジャックとケンカしたふりをして色仕掛けで敵の実業家に思わせぶりな態度で接したりと活躍する。こっちの方が腹座ってんじゃないかと思わされるが、彼女も無理しているようで観ていると痛々しい。
CIAの上司はケヴィン・コスナー。やはりこの人はかっちりネクタイを締めた姿が凛々しい。彼がジャック・ライアンをスカウトしたのだが、ジャックの能力と度胸を信じ今回の任務をサポートする。眼にあきらめない男の光が宿っていて、壮年期のジャック・ライアンを演じるならこの人がいいのではないかと思う。小説原作では大統領になるらしいし、見ごたえはあると思うのだが。
その敵対するロシアの実業家は兼任監督のケネス・ブラナー。病魔に侵された余命いくばくもない悪役なのだが、好きな女性のタイプが人妻というゲスい設定。名優で監督がよくこんな役をやったなと感心させられる。色仕掛けに引っかかるのはいいとして、経済テロを起こそうとしてんのに脇が甘すぎやせんか。何が何でもアメリカ絶対ぶっ潰すマンになり切って、もっと非情な攻撃をしてほしかった。
展開の配分ももっと考えてほしかった。腹を探り合う情報戦、色仕掛けの騙し合い、敵本拠地へ侵入して情報を盗み出すと、擦り切れるような駆け引きがあった後に一息ついて、追いかけてきてのアクションがあるのは間が伸びてしまう。続けざまに展開されるともっとヒリつく内容になって、クリス・パインの若さ溢れるアクションが活かされたのではないか。
世界の今を反映する作品なので、今後の続編が期待されたが、その後発表はなく今回の一作で終了の様子。主演を変えながら受け継いでいってくれたら、長年楽しめるキャラクター作品になったのと思うが。配信ドラマではジョン・クラシンスキーが演じているが、観たら何となく女性の扱いのうまさと要領のよさで功績をあげてのし上がっていく電器会社課長漫画を連想させたので別物と思うことにしている。

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