Mr.ノーバディ

Mr.ノーバディ(2021年:アメリカ)
監督:イリヤ・ナイシュラー
配給:ユニバーサル・ピクチャーズ
出演:ボブ・オデンカーク
  :コニー・ニールセン
  :アレクサンドル・パル
  :クリストファー・ロイド
  :J・P・マヌー
 
その昔、有名な報道番組で有名なキャスターが「知らない人とケンカしちゃいけない。」とのたまったが、それを地で行く作品。日々の暮らしに鬱屈した、ごく普通の中年おじさんが実はケンカするとバカみたいに強いという、中年暴走激闘映画。そのおじさんの過去が重要になってくる。
主人公のおじさんは家族経営の工場の会計士の職に就いており、倦怠期の妻とスマホに夢中な息子とちょっとパパっ子な幼い娘の四人暮らし。毎日決められたような日課をこなし、火曜日にゴミ出しに遅れる以外は特に問題のない生活。勤めている工場は妻の父が創業した家族経営だが、オーナーの義父から経営権を購入しようと交渉している最中。そんな中年おじさんの家にある深夜二人連れの強盗が侵入。応戦はしたが、彼は二人を逃がしてやってしまい、家族からは呆れらてしまう。その中で娘が大事にしていた猫のブレスレットがないことに気づいた彼は奪還のためFBIと偽り聞き込みを開始。強盗二人を見つけるが彼らにも事情があったことを知ると、怒りを抑え退散する。が、その帰りのバスの中にならず者たちが乗り込んできたことで怒りが爆発。ボロボロになりながらも五人を撃退し去って行く。しかしその五人の中にロシアンマフィアのボスの弟がいたため彼は復讐に狙われることなになる。その最中で彼の正体が探られていく。
ごくありがちな一般ピープルが実は…という物語。取り立て目新しいものではないが、中年おじさんの一週間の様子を淡々と映す序盤は共感する。日々の鬱屈を貯め込みながらも家族のため、生活の維持のため頑張っているサラリーマンは全世界共通だ。このおじさんは自分の鍛錬にも余念がなくランニングや筋トレにも励み、家族のために朝食も作る。火曜のゴミ出しはいつも遅れて出せていないが、義父の工場の会計もそつなくこなし、貯めたお金で工場を義父から購入しようと交渉している。そんな普通のおじさんが怒りを爆発させたときの戦闘技術がものすごく高い。さすがにスタ〇ーンやシュ〇ルツェ〇ッガーみたいに圧倒的なパワーはないが、チンピラ5人を相手に出されたナイフを奪って切り返すなど、並外れた能力を見せる。そしてそれ以上に驚いたのが、喉の気道が潰れたロシアンマフィアの弟の気管切開してストローを差し呼吸を確保したこと。中年おじさんが救急救命にも精通していることを示している。
相手のマフィアのボスは傍若無人さ全開。同じロシアンマフィアの組合基金を預かっている。自身が経営するナイトクラブのステージで歌って踊れるなかなか芸達者なボス。性格的に破綻しており、弟が中年おじさんに瀕死の重体にされたことに怒れるが、実は弟が嫌い。組合の基金を預かっていることも嫌気がさしており、中年おじさんに全部投げ出してカリブにでも高跳びしたらどうだ、と取引を持ち掛けられると心が揺れる始末。結局中年おじさんを追いかけて、激しい銃撃戦を繰り広げるのだが。
中年おじさんの正体ははっきりと語られないが、「会計士」という役職がカギになってくる。三文字の機関に所属していたことがあり、そこでは「会計士」は恐れられる存在の隠語だったらしい。ロシアンマフィアと戦うために色々な装備やトラップを用意するのが映画のお決まりだが、盛り上がってきてカッコいい。ちなみにマフィアのボスがステージで歌ってた曲も「愛しの会計士」だった。
老人ホームに入所している中年おじさんの父親が何とクリストファー・ロイド。久しぶりに観た。あのタイムマシン映画以外出演しているのを観たことはないが、これまた大分高齢になっても元気に出演しているのが嬉しい。老人ホームで食事や惰眠や運動を楽しんだが、戦うことが懐かしくなり、息子のピンチにもう一人の義理の息子と参戦。ドンパチをやらかしてくれる。
最初は期待していなかったが、同じ中年の鬱屈した思いと、決して完璧超人ではない戦闘や、マフィア相手の立ち回りと、いい意味で期待を裏切ってくれた作品。BGMのオールディーズがおじさんの趣味っぽく、観ていてノリが良かった。知らない人にケンカを売ってはいけない。

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