ワイルド・フォー・リベンジ

ワイルド・フォー・リベンジ(2015年:アメリカ)
監督:ナディーム・スマー
出演:ヴィニー・ジョーンズ
  :マイケル・レネ・ウォルトン
  :ヴィヴィカ・A・フォックス
  :トム・サイズモア
  :バイ・リン
 
名無しと名乗る男が黒人の殺し屋に北米一の麻薬ディーラーの殺人を依頼する。男は麻薬ディーラーから古い拳銃を奪ってその銃で暗殺し、高らかにアピールしてほしいと注文。殺し屋は流儀に反するが破格な報酬から引き受ける。その一週間前に遡り、名無し男が様々な犯罪のプロに依頼し、麻薬ディーラーを追い詰めていく過程が描かれる、が、その背後や目的には何か疑念が生じるクライムサスペンス。
麻薬ディーラーの殺害を依頼する男の存在が謎。廃倉庫に犯罪のプロたちに指示を出し、追い詰めるかのように麻薬ディーラーを破滅へと向かわせる。金や名誉、愛情そして命と人間が生きる上で必要なモノを一つ一つ奪っていくかのように犯罪のプロたちに仕事を依頼する。しかもその報酬はプロたちが唸るほどの高額で、メリットしかないような内容。プロたちはいぶかしがるが、名無し男は復讐だと告げる。回想で麻薬ディーラーと名無し男は昔馴染みだったが、ある事件を機に名無し男は裏切られ、その復讐だという。確かに回想も描かれるので説得力はあるが、何か納得がいかない。その疑念がラストに向かって根底に流れている。
物語は黒人の殺し屋が衆人環視の中、依頼通り麻薬ディーラーを奪った古い拳銃で射殺する所から遡り、その一週間前にはムショ帰りの白人は彼の妻を誘拐するように依頼される。女怪盗は色仕掛けや茶番を駆使して麻薬組織幹部の証である首飾りを盗み出す。盗聴専門の探偵は妻がFBIに通じているネタを麻薬組織にリークして、アジア系女詐欺師はマネーロンダリングを持ち掛け、大口になったところで金を奪って逃走。トラブルと失敗はあるが、次第に麻薬ディーラーを追い詰めていく。褒められないが、犯罪のプロが着実にそしてスリリングに凌いでいくところが見物。命や名誉や金を奪っていくところに追い詰められていく焦りも感じられる。
黒人の殺し屋は冒頭に殺しの哲学を語り、冷徹な仕事ぶりを見せつけた。女怪盗は色気を振りまいて、黒のライダースーツをまとってバイクを疾走させる姿がカッコいい。例の怪盗モノのワガママ女を思い出した。それ以上に魅力的だったのが、アジア系女詐欺師。ちょっと欧米的に飾られているが、いろんな衣装をまとってうさん臭さを醸し出し、信用したらイカン、けしからんオーラが出ていてオレにはストライクなキャラクター。こういう女性キャラ大好きなんだよなぁ。実際はそんな女性は迷惑なんだけど。それぞれの犯罪のプロたちの個性が際立つ。
そして最後に悪徳刑事たちがアジトへ踏み込んで、金を奪うところから物語の終末に向けてストーリーが急展開する。それまでの奪われたもの意味や名無し男の復讐の真相などが語られる。映画らしい終わらせ方であり、なるほどとは思わせてくれるが…。
残念なことに名無し男がプロたちに依頼する一週間前と復讐の契機となった数十年前の事件、そして麻薬ディーラーが狙われる現在と行ったり来たりするので話が混乱してしまう。遡って話を作るより、順番に大切なものを奪われていく過程を描く方が理解しやすいのではないかと思った。過去の復讐が今に影響するという演出を狙ったのかもしれないが、一瞬の登場人物が増えすぎてややこしい。
そしてラストは賛否が出そう。どんでん返しと言えばそうなんだが、今までの内容からしては少しインパクトが弱いような気がする。名無し男の正体も明らかになるが、何の伏線もなく急に真実を突き付けるんでもったいない。ややこしい演出で理解が困難になってしまい後半の展開は残念。一つ一つの依頼で麻薬ディーラーを追い詰めていく展開はよかったが、ちょっと奇をてらいすぎた感がある。
ただ、犯罪のプロたちの半数が女性っていうのは時勢かな。

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