ナンバー23

ナンバー23(2007年:アメリカ)
監督:ジョエル・シュマッカー
配給:ニュー・ライン・シネマ
出演:ジム・キャリー
  :ヴァージニア・マドセン
  :ローガン・ラーマン
  :ダニー・ヒューストン
  :リン・コリンズ
 
誰にも気になる数字が存在するだろう。何でも1番がいい、縁起が悪いから4は避ける、ラッキー7等々。そんな数字の中で奇妙な「23」に囚われた男のサスペンススリラー。ちなみに自分は人生の節目に13という数字に縁がある。例の金曜日映画は1と2の途中までしか観てないけど。
動物管理センターの野良犬捕獲係の主人公は誕生日に妻から古書をプレゼントされる。「妄想小説 ザ・ナンバー23」と題されたその小説の主人公である探偵と自分自身に多くの共通点を見出した彼は作中で示唆される「23」の数字に取り憑かれていく。「23」という数字に隠された秘密とは。そして主人公に隠された「23」の数字との因縁は。彼は妻と息子の力を借りながら謎をひも解いていく。
作中で「23」の数字がもつ因縁が知らされる。主人公の名前をアルファベット順番を足していくと「23」。運転免許証や社会保障の番号を足すと「23」。街で見かける路線番号、時計の針、妻の靴の数等々、ありとあるゆるものが「23」を示しており、主人公の人生に「23」が付きまとっている。それに加えて、歴史的事象や地軸の傾き、ラテン語の文字数、大統領の名前等々、根源的な魔力や大きな陰謀を感じさせるため、主人公が囚われてしまうのも無理はない話。が、盛り上げが過ぎて、肝心の主人公につきまとう「23」の存在が薄い。中にはこじつけ気味な「23」もあるし、さらには結局それ関係あったの?、と期待が大きく外れてしまうので、モヤモヤが大きく残る。
主役のジム・キャリーは文句のない演技力。次第に妄執に取り憑かれ、精神破綻ギリギリを迫るような表情を見せる。普段は妻と息子を大事にするいいお父さんで、息子が彼女を連れ込んで仲良くしているのを見逃してあげるような大らかさもある。劇中劇の小説の探偵も演じているが、やさぐれた男も演じることができ、幅広い役が演じることもできる素晴らしい役者。この作品でラジー賞ノミネートっていうんだから、いかに作品の良し悪しが俳優に影響するのかがよく分かる。半分シャレだろうけど。もう映画には出ないって聞いた気がするが、どうなんだろう。老境に入った枯れて渋みのある演技も見てみたい。
「23」の謎を家族が力を合わせて解明しようとするのが、今までのサスペンス映画では少ない斬新さを感じた。息子が本を詳細に調べて私書箱の存在を発見するシーンとか、追い詰められていく主人公を心配しながら協力する妻の表情もいい。その妻が秘密を知った時に起こした行動は理解ができるが、反面その短い時間で事件すべてを理解するのは無理がある。そこに葛藤もあってよかったのでは。
ストーリーの進み具合も、現実と小説の中を行ったり来たりするので、話が散らかって分かりにくい。小説の登場人物が、実際のストーリーの人物と被って出演しているので、現実とも妄想ともはっきりしない演出だろうが、中には判別しにくい役者もいるので混乱した。妄想の世界の色彩は黒・白で演出され、自然色の現実との対比を表しているのはいい。映像自体もざらついたフィルム感を出しているのでサスペンスの緊張感を損なっていないのが好印象。
映像表現は良かったのだが、ストーリーを盛り上げる演出に説得力がないので非常に残念。序盤の犬が何度も現れてある墓の前に導くが、必要がある演出に感じない。墓碑銘は伏線になっているが、驚くほどのものでもない。キーパーソンの元心理学者と対面しても、元心理学者は重要なことはぼやかして、核心を突かない。ちゃんと事件のあらましを言えばはっきりするのにとツッコんだ。そして一番重大な「23」が最後には意味がなくなってしまうのが最も残念。もっと数秘術に根差した神秘的でミステリアスなストーリーを期待していたのだが。ジム・キャリーや脇を固めた俳優が良質な演技を見せてくれただけに非常に残念だ。

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