スレンダーマン 奴を見たら、終わり

スレンダーマン 奴を見たら、終わり(2018年:アメリカ)
監督:シルヴァン・ホワイト
配給:スクリーン ジェムズ
出演:ジョーイ・キング
  :ジュリア・ゴルダニ・テレス
  :ジャズ・シンクレア
  :アナリース・バッソ
  :タリタ・ベイトマン
 
アメリカのどこにでもある田舎。平和な町だがティーンエイジャーたちには退屈で、いつか町を出て広い世界に飛び出すことを夢見る。そんな四人組の少女たちが夜集まって騒いでいる最中、オカルト好きの一人が都市伝説の怪人、スレンダーマンを呼び出してみようと提案。あるインターネットサイトの動画を視聴し始める…。
スレンダーマンとはアメリカ都市伝説では有名な存在。黒いスーツに恐ろしいほど長身で痩躯。白い風船のような頭に顔はなく、写真や動画の隅に映り、子供を狙っているかのようにたたずんでいる。そんな奴の呼び出し方はインターネットサイトの動画を観つつ、奴の存在を念じる、感じるというもの。呼び出し方が現代的。幻覚や催眠を使い、身体から生える無数の触手が対象者を捕らえてさらっていくらしい。しかし何のために?と思わされる。呼び出す者は何かの目的、例えば金が欲しい、誰かを呪い殺したいとかの願いがあり、その代償にさらわれるのであれば合点がいくが、無意味に呼び出して無意味にさらっていくのは道理に合わない。興味本位で呼び出しましたではドラマがなく薄っぺらい。
主演を張るのはジョーイ・キング。今売り出し中の若手女優。いかにもアメリカのティーンエイジャーといった姿で、登場シーンで替えてくる衣装が年頃の女子っていう雰囲気で瑞々しい。彼女が都市伝説の怪人を必死で捜索し、何とか解決を図ろうと奮闘するが、調べ当てたのが中途半端。生体電気が身体に寄生することがなんでスレンダーマンにつけ狙われるのかがはっきりしない。SNSで知り合った謎の人物の情報を鵜吞みにして、友だちに押し付けるのはごく一般的にもありがちだが、それすらもあっているのかが分からないので、予定調和でストーリーが進んでいくのには無理がありすぎる。もっと丁寧な調査の描き方をしてくれると説得力が増すと思う。
後半はほとんど陸上選手の少女の葛藤を描く。彼女はもう怪異を忘れて好きな彼氏とイチャイチャしたいのだが、スレンダーマンは逃がさない。いい雰囲気のところを幻覚でお邪魔して、じわじわと彼女に近づいていく。ほとんどストーカー。なんかスレンダーマンのキャラクターがただの少女趣味の変態に見えてくるのが残念。陸上選手の少女といい雰囲気だった彼氏は動画観たのか分からないけど、さらわれた演出はないので、多分奴はいい年した男には興味がなさそう。
一人目にさらわれた少女はアル中の父親との関係に嫌気がさしていたし、陸上選手の少女は保守的な母に反抗的。ジョーイ・キングの役は母がすでに亡くなっていると、それぞれに抱えている背景があるので、すぐにさらわず、じわじわと精神的に少女たちを追い詰めるように迫っていれば、恐怖や悲しさが増してよかったのではと思わされる。
そして第5の犠牲者も示唆されるが、ラストはその犠牲者の独白が語られるので、結局スレンダーマンはその人物に手を出さなかったのかなと勘ぐってしまう。キャラ設定がブレブレで非常に残念。
更に、映像が暗すぎて分かりにくい。深夜の森のシーンが多用されるが、迫ってくるような樹々は分かりやすく影を強調されるが、当事者の少女たちの顔が見えず、恐怖におののいている表情が分かりにくい。そのくせ明るい場所でスレンダーマンははっきりくっきり登場してくれるので、恐怖が半減する。
さて、肝心のスレンダーマンだが、実はインターネット上で創作された架空の都市伝説クリーチャー。なので作中に出てくる画像や設定等は創作によるものばかりで、必ずしも巷間に流布する怪異ではない。それを知っていると恐怖が目減りしてしまうのが考えもの。やっぱり映画化するには無理があったかなと感じた。オカルトの素材としては面白いのだが、自分の感想としては触手はいらんと思うな。

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