ゲット スマート

ゲット スマート(2008年:アメリカ)
監督:ピーター・シーガル
制作:ワーナー・ブラザース
出演:スティーブ・カレル
  :アン・ハサウェイ
  :ドウェイン・ジョンソン
  :アラン・アーキン
  :テレンス・スタンプ
 
元はアメリカ60年代に放送されていたTVドラマで邦題は「それいけスマート」。
アメリカの秘密諜報組織で分析官を務めていた主人公が昇格試験を何度も受けて、ついに悲願の諜報エージェントに合格を果たした。が、上司のチーフは「優秀な分析官を失うのは損失だ」と念願の配置転換を拒否される。その矢先、組織本部が何者かに急襲され、世界に散らばる諜報エージェントたちの情報を奪われ、各地でエージェントが暗殺されていく。同時にロシアではウランが強奪され、世界の反米組織へ流出。優秀な分析官であった主人公は、唯一顔がバレていないエージェントとして、女エージェントを相棒に敵対組織への諜報を開始していく。
分析官からエージェントへ転身した主人公にはスティーブ・カレル。いたって真面目で情報収集から精査と的確な判断をする優秀な人物だが、あくまでも事務方出身なので荒事は今一つ。素手でも強いとうそぶくが、女エージェントにいいように殴られ、巨人のような刺客にはボコボコにされる。飛行機内で靴に張り付いたガムをマッチでそぎ取ろうとして靴爆弾と間違われて拘束される。敵が開いたパーティに乗じて潜入した際は、タキシードに入り込んだネズミが暴れて、警備レーザーに服をボロボロに切り刻まれる。本当に優秀なのかと疑問を感じるが、分析力や行動力が飛びぬけており、言葉で敵をやり込めたり、機転を利かしてピンチを切り抜けるのが痛快。ダンスシーンでのドヤ顔が強烈に印象に残る。
その相棒の女エージェントがアン・ハサウェイ。長身に長い手足がアクションシーンに映えてカッコいい。繰り出された蹴りはスラっとしてきれいで、ハイキックの見本のよう。着ている衣装も目を楽しませてくれて、黒の革ジャンやチェックのトレンチコート、白のスーツに白の大きなサングラスと、衣装映えするのがこの人の大きな魅力だと思う。劇中ではなんと整形して今の顔になった設定で、なるほど際立った顔のパーツに説得力がある。でもオレはちょっと苦手。食べられそうな気がしてしまう。
もう一人、今ではスターダムにのし上がっているドウェイン・ジョンソンもエージェントの一人として出演。まだ映画に出始めの頃なので出番は多くないが、重要な役で最後まで出演する。惜しいのは全編スーツに身を固めており、身体の屈強さは感じるが、どこか窮屈そう。この人は丸太のようなぶっとい二の腕をTシャツの袖を破らんばかりに見せるのがカッコいいと思うのだが。あと今と違い、頭を剃り上げていないので違和感が。
その他脇を固める諜報機関のスタッフも面白い。先輩風を吹かせてパワハラまがいのイジリをするが間が抜けているマッチョな二人。その二人に隅に追いやれながらも主人公に協力するギークな開発スタッフの二人。マシ・オカが頑張ってくれているのでなんかうれしい。そしてちょっとぶっ飛んだ組織のトップのチーフ。会議中、副大統領と口論になりテーブル乗り越えて乱闘するシーンが笑えた。副大統領も「新しいペースメーカでお迎えしてやる!」と好戦的で取っ組み合いになるので、ブラックながらもそこ抜けに明るいアメリカンな笑いを提供してくれる。
しかし、かつてのTVシリーズは観たことがないのだが、例の女王陛下のダンディなスパイや、成功率0%のミッションに挑むスタイリッシュなスパイへのオマージュというかパロディが散見される割にはギャグにはつながっていないのがもったいない。BGMも両者の雰囲気を漂わせるのだが、肝心の画面からインパクトも爽快感も伝わらず、途中から観るのにダレた。
アン・ハサウェイとドウェイン・ジョンソンは今の活躍を見ているからかもしれないが、両者ともキャラが立ってしまい、作品から悪目立ちしてしまっている。特に暴走する車の中でのアクションはドウェイン・ジョンソンのキャラクターを活かしていないのが残念。やっぱり屈強なヤローはただの殴り合いが一番魅力的に映えると思う。
可もなく不可もない、教科書通りに作ったスパイコメディと言った手ごたえで、盛り上がりが弱い。主要三人のキャラクターがいいので、その中から一人で作品を撮った方がすっきりして、キャラの悪目立ちもなく、ストーリーが盛り上がったんではと思わされる。

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