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⑤N.Yとヒートシーズン

ニューヨークの暑さ寒さはとても酷い。考えてみれば日本の青森県とマンハッタンはほぼ同じ緯度。寒いのは当然。しかし、ニューヨークの寒さはそれ以上。青森の比ではない。何しろマイナス20度なんて珍しくないのだから。
 そんな極寒のニューヨークだから寒さ対策のための法律がある。「ヒートシーズン法」とでも訳すか。極寒のニューヨークでは死人さえ出ることが多い。だから法律でアパートメントの管理者には厳しいルールが課せられている。例えば、午前6時から午後10時までの場合、外気温が55°Fを下回る場合、室内温度はアパートと建物のどこでも最低68°Fにしなければならない。また、午後10時から午前6時まででは、外気温に関係なく、室内温度はアパートと建物のどこでも最低62°Fにしなければならない、という法律だ。華氏55°Fは摂氏13°。外気温が日本でいう13°以下なら室内温度を20°にしなければならないというルールである。また同法によれば、夜には外気温に関係なく室内温度を16.7°に保たなければならない。違反すると店子は大家を訴えることができる。当局に証拠を添えて申し出ればいいのである。この法律によると3月末までが適用範囲であり、4月になると適用外となる。室内温度が17℃というと、とても寒く、ストーブなしでは済まされない寒さ、と思うのは私だけではないだろう。だから日本からニューヨークに来た人は、最初、寒さに戸惑う。そして多くの日本人は個別に暖房設備を整えることになるのだ(これを書いている私自身、寒さに震えながら書いている)。
 アメリカは自己責任の国という。しかし、ここまで法律で決められているというのは意外でもある。室内の暖房調節など、居住者が自己責任でやればいいことだと思うから。つまり、それだけ寒さが過酷でもあるのだろう。だがしかし、もう一点付け加えなければならないことがある。おそらくアメリカという国ではルールで縛らなければならないのだろう。いろんな人種がいるアメリカでは仕方ないことなのだ。様々な人種が、様々に考え、さまざまなやり方を好き勝手に進めていく。その結果、寒さで亡くなっていく人がたくさん生まれるからだ。それを防ぐには唯一、法律の力を借りて問答無用で実行するしかないのだろう。

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