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Article "The use of yttrium (III) isopropoxide to improve thermal conductivity of polycrystalline aluminum nitride (AlN) ceramics"について

文献を読んで、覚えておきたいことをメモしておくためのnote。

The use of yttrium (III) isopropoxide to improve thermal conductivity of polycrystalline aluminum nitride (AlN) ceramics
J Mater Sci: Mater Electron 16, 139–144 (2005)
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メモ

Introductionより

  • AlNの常温熱伝導率の理論値は319 W/m・Kであるが、多結晶AlNセラミックスの実測値は17 W/m・Kから285 W/m・Kまで幅がある。

  • 格子欠陥は多結晶セラミックスの熱伝導率に支配的な役割をはたす。

  • 多結晶セラミックスは二つのキーファクターにより熱伝導率を下げる:(1)個々の粒子の不規則な配向、(2)分離された第二相の不規則な分布

  • AlNはほぼ共有結合性(約75%)で、ウルツ構造結晶(a=3.111 Å、c=4.978 Å、c/a=1.600 Å)、アニオンと四面体サイトの半分を満たすカチオンの六方最密充填。

  • 結晶構造は不純物元素により多型を持つ。

  • 気圧1atmではAlNは溶融せず、2230℃を超えると顕著に解離する。

  • AlNは自然には存在せず、高温で合成する必要がある。

  • ALNの結晶格子内の不純物は熱伝導率に有害な影響を与える。重要な不純物は格子酸素(lattice oxygen)。

  • Slackによれば、酸素原子はAlN格子のNサイトに入る。この置換により、全ての3個の酸素に対し1個のアルミニウム空孔(aluminum vacancy)ができ格子に組み込まれる。その結果、占有されたAlサイトとアルミニウム空孔サイトの質量差によりALNの格子に非調和性が生成する。

  • 固溶酸素に関連した空孔はフォノン散乱を起こす最も決定的な要因であり、このようにしてALNの熱伝導率を制限する主要な欠陥であることが広く知られている。

  • 酸化アルミニウムの炭素熱還元法により調製した粉末にはAl2O3の不完全な転化により酸素が残る。この残留酸素は格子酸素と同一である。

  • 炭素熱還元法では通常、余剰の炭素を除去するため、追加の酸化ステップを伴う。このステップによりALN粉末の表面に酸素リッチ層が生成される。

  • 熱力学的観点から、焼結助剤の酸素との親和性が高いほど、ALN結晶の高純度化の度合いが高くなる。

  • 生原料粉末の酸素含有量が減るほど熱伝導率が高くなるが、この効果は3.0 wt%Y2O3で緻密化した試料で最も劇的である。

  • カーボンもまた多結晶AlNの熱伝導率に影響を与える重要な不純物であると信じられている。少量のカーボン(約0.5 wt%)では、熱伝導率を高めながら、炭素の脱酸素により酸素不純物が低減したが、多量のカーボン(約1.0 wt%)の添加はAlN焼結体の密度が著しく下がるため、熱伝導率にきわめて有害である。

  • Yanらによると、粉末表面のC/O比が1.0に等しいと、粒界からの酸素不純物の除去が起き、熱伝導率が高くなった。

  • 本論文では、異なる焼結助剤を用いて高熱伝導率の多結晶AlNを焼結した。焼結助剤として、Y2O3粉末のかわりにイットリウムイソプロポキシド(YIP)を使用した。

  • 焼結助剤をゾルゲル形態で使用する理由:まず、粒子サイズがナノスケールで揃っている。次に、焼結においてより効果的な、より良いAlN粒子のコーティングができる。

Experimental procedureより

  • 出発原料はグローブボックス内で、窒素雰囲気中で秤量、混合した。

  • 脱脂は2種類の異なる雰囲気、窒素雰囲気(2 ℃/min to 650 ℃、3 h保持)と同様に大気雰囲気、で行なった。

  • 焼成は試料をグラファイトるつぼでシールされたAlNの台に置き、窒素気流下で2 h焼成した。昇温速度は30 ℃/min、1200 ℃で15 min保持し、1850 ℃まで5 ℃/minで昇温し、2 h保持した。冷却は1200 ℃まで5 ℃/min、室温まで30 ℃/minで行なった。

Experimental results and discussionsより

  • ほとんどのケースで、実測した密度は理論値に近く、Barada [4]が報告した値より高かった。

  • 脱脂の雰囲気は比熱容量に影響しなかった。

  • 熱伝導率はY2O3が増えるとともに急激に高くなり、最大値(5 wt%Y2O3)を過ぎるとより高いY2O3添加で低減した。

  • N2脱脂の試料は、大気脱脂に比べ、より高い熱伝導率を示した。

  • 熱伝導率に関する研究によれば、熱伝導率の最大値は4.0と15.0 wt%Y2O3の間と見出されている。

  • 最大値の左側(図4)では、助剤が酸素を ”得る” ことで、熱伝導率が高くなった。Y2O3は冷却に際し、AlN粒内の酸素をイットリウムアルミネートを形成する液相に ”取り出した” 。より高い助剤添加量では、AlN粒内で低い酸素濃度となり高熱伝導率となった。

  • 最大値の右側(図4)では、低熱伝導率のイットリウムアルミネートの体積率の増加により熱伝導率はゆるやかに低下した。

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