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糸と魚と川vol.15・開催レポート②/初の3日連続開催!防災を体験し学び考える

糸と魚と川 vol.15は、初めて3日間の連続開催を実施しました。
24年1月元旦に発災した能登沖地震、震源地から近い糸魚川市も津波被害などがあり住民が避難しました。改めて震災の恐ろしさを感じた、いまこそ考える必要がある「いざ、そのときになったらどうするのか?」を参加者のみなさんと一緒に体験し、考えていきました。

こちらのレポートは、前回の続きです。
前回その①はこちらをご参照ください。


初日・第二部/関係者が語る被災のリアル

会場をクラブハウス美山から、駅北広場キターレに移し、関係者が語る被災のリアル、というテーマで、3名のゲストの方にご登壇いただきました。なお、うちお二人は、事前に収録させていただいたものを配信させていただきました。

登壇・出演ゲスト

公益社団法人中越防災安全推進機構 野村 祐太 氏
地域防災力センター センター長 株式会社 野村防災 代表取締役
大学進学をきっかけに上京。29歳の時に新潟へUターンし、防災専門の会社(株式会社野村防災)を起業。防災教育や「災害支援コーディネーター養成講座」などの企画・運営。2016年に発災した「糸魚川駅北大火」の復興まちづくりコーディネーターとして糸魚川市へ移住。2019年に糸魚川市で「民間まちづくり会社 株式会社BASE968」を設立し、大火後のまちなかに設置した「駅北広場キターレ」の第1期の運営を担う。現在は地元の新潟県長岡市へUターンし、公益社団法人中越防災安全推進機構 地域防災力センターの一員として「防災×まちづくり」を軸に、防災減災の普及活動や、官民連携防災まちづくりの活動をしている。
24年1月1日に発災した能登にも、現地に足を運び支援活動を行っている。
サイボウズ株式会社 ソーシャルデザインラボ フェロー 野水 克也 氏
2000年サイボウズ入社。広告宣伝・販売促進をはじめ、営業部マネージャー、製品責任者などを歴任し、2012年8月より社長室(現ソーシャルデザインラボ)フェロー。現在は、働き方や中小企業DXに関するエバンジェリストとして、元テレビカメラマンとして鍛えられた取材やインタビュー力を生かした事例をふんだんに盛り込んだ講演やコンサルティングを行っている。また、製品の枠を超えたクラウド活用の先端事例の支援を行っているほか、公益財団法人ほくりく未来基金理事として社会課題解決を目指す団体を支援している。 2年前に輪島に移住し、被災。
自宅が全壊して現在は生活再建と復興支援の両面で能登で活動中。
齊藤 喜代志 氏
1961年、糸魚川市根知地区生まれ。 1984年に糸魚川市入庁、都市整備課勤務。以後19年間、都市計画に携わる。03年に市民窓口課へ異動し、その後、教育総務課、都市整備課などを経験し、18年に、復興推進課長、復興まちづくりを歴任。22年3月に定年退職し、2024年現在は、教育委員会事務局のこども課嘱託技師として、引き続き糸魚川市に勤務。

支援者、被災者、復興担当、それぞれの語る被災のリアル

野村さん・能登半島地震における被災体験と防災の重要性

野村祐太氏は、中越防災安全推進機構の活動を通じて、2004年の中越大震災後の復興支援に携わり、地域防災力向上や避難所運営研修といったソフト事業を展開してきました。能登半島地震後は、石川県和倉市を中心に支援活動を実施し、被災地の状況を目の当たりにしました。

地震発生後、被災地では新潟県内で液状化現象が多発し、道路の損傷が深刻で通行困難な状況が続いていました。特に和倉市では建物の倒壊や道路の寸断が顕著で、生活基盤の崩壊が明らかだったといいます。

支援活動として、避難所にはトイレカーが設置され、これは避難者から非常に好評を得ました。また、避難所運営のサポートや知見の共有が行われ、キャンピングカーを活用した現地での寝泊まりも実施されたそうです。

そういった経験を通して、野村さんは、以下のようなことを日頃から心がけをしてほしいと呼びかけられました。

まず個人の意識改革。災害はいつでも起こりうるという認識を持ち、自分と家族の安全を最優先に考える姿勢が求められます。早期の判断と行動の重要性が強調されました。

次に実践的な防災訓練。家族での避難計画の策定や、3日分の食事メニューの考案、地域での避難訓練の実施は必ずやったほうがよい。

そして、防災教育の充実。学校や職場での定期的な防災講習や、過去の災害経験を活かした教育プログラムの導入が重要だと呼びかけられました。

野水さん・能登半島地震に被災して

地震発生時、野水さんは和倉市の民家で被災し、家屋が全壊するという深刻な被害を受けました。激しい揺れで家具や天井が崩落し、直後に近隣の状況確認と避難所設営の手伝いを開始。

避難所では水や電気、ガスといったライフラインが途絶し、食料や生活物資の不足が深刻化しました。また、プライバシーの欠如と過密な避難環境が避難者の精神的・肉体的負担が増大したといいます。

通信手段の確保が困難であり、水の確保が最大の課題として浮上しました。さらに、長期的な生活再建への不安も多くの被災者が抱える問題でした。

野水さんは、今回の被災を通して防災の心得として以下のようなポイントが重要だと話されました。

  • 個人での備えておく必要があるもの

    • 水と食料の備蓄(最低3日分)の重要性。

    • 携帯トイレと凝固剤の準備。

    • カセットコンロや発電機の用意。

  • 地域コミュニティの重要性

    • 徒歩圏内での助け合いの重要性。

    • 自主避難所の設置と運営。

    • 地域の資源(井戸など)の把握と活用。

  • 行政の対応

    • 避難所の設備改善(トイレ、入浴施設など)。

    • 迅速な情報提供と支援物資の配布。

    • 長期的な復興計画の策定。

お二人の話の中では、防災意識をどれだけ日常化できるか、という点が強調されました。日々の生活の中で防災意識を持ち続けることが、将来の災害に対する備えとなるということです。

齊藤さん・糸井川市の復興とまちづくり

齊藤さんは、市の職員として2016年12月に発生した大火の復興に関わった経験を持ち、その取り組みを共有してくださいました。40年ぶりの大規模市街地火災となったこの災害に対し、糸井川市ではどのように復興を進めてきたのかが紹介されました。

2016年の糸魚川大火による火災の被害は145世帯、260人に及びました。市は瓦礫の撤去を進め、ボランティアの協力を得て初期対応にあたったそうです。大火後の復興まちづくりにおいては、「災害に強いまち」「にぎわいのあるまち」「住み続けられるまち」の3つの方針を掲げ、プロジェクトを立ち上げられました。

復興の取り組みの成果として、被災者の6割、事業所の4割が元の地域に戻りました。道路拡充や建物の不燃化、防火設備の強化、にぎわい創出のための広場整備、復興支援住宅の整備など、多方面で進展が見られました。国や県からの人的支援も活用され、復興が進められましたが、その一方、今後の課題として、災害対応の役割分担と情報共有の仕組み改善、被災者名簿の迅速な作成、応援体制の連携強化と質の向上、避難所運営体制の整備が挙げられました。災害が起こっても、住み続けられるまちの実現、という考えのもと、元気な街並みの再建に取り組み、復興支援住宅を整備することで、住環境の再建を目指しました。特に、再建を断念した方々への支援を進め、地域の人々のニーズに応える取り組みが実施されたそうです。

齊藤さんは講演の中で、災害は地域の課題を浮き彫りにするとお話されました。糸魚川大火は、人口減少や高齢化が加速させ、農地の荒廃などが進行したとのこと。市は地域の現状を把握し、市民と行政とで将来像を共有することの重要性を強調。また、課題解決に向けた具体的な活動の提案も必要だとお話されました。

講演のまとめ

ゲストそれぞれのお話を通じて、被災経験から学ぶべき教訓が多く示されました。ライフラインの重要性や、地域コミュニティの絆の大切さ、そして個人の判断力と行動力の必要性が特に強調されています。今後の防災への展望として、技術革新を活かした防災システムの構築、持続可能な防災文化の醸成、そして国際的な防災協力の推進が求められています。

参加者からは、災害の影響を受けた地域の課題に対する認識や、地域コミュニティの重要性についての意見が寄せられました。今後の取り組みとして、防災プランの考案やワークショップの実施、地域の知見を活かした災害対策の強化が提案されました。

災害の教訓を共有し、災害を風化させない取り組みも重要です。人のつながりの尊さを再確認し、首都圏からの知見を地域課題解決に活用することもこれからは必要だ、というところで第二部は終了しました。


プロジェクトに参加希望の方は、下記のメールアドレスまで。

糸魚川市産業部商工観光課企業支援室(担当:山崎)
kigyo@city.itoigawa.lg.jp

株式会社MOVED(担当:渋谷)
info@moved.co.jp