京都アニメーションの皆様へ

まず、一年前のこの日に起こされたあまりにも悲しくやるせない出来事で、
被害に遭われ亡くなられた方へ改めて哀悼の意を、
そして今も尚、心身の治療に努めておられる方へお見舞い申し上げます。

僕は大学時代を京都で過ごし、ちょうど放送されていた『けいおん!』の
愛すべき登場人物たちと同じ街で生活していました。
彼女たちが通う道は僕も毎日歩いていて、
偶然ながら彼女たちの集う店でアルバイトもしていました。

大学には『涼宮ハルヒの憂鬱』をこよなく愛する友人がいて、
それぞれでモデルとなった校舎の話で盛り上がり、
しょっちゅうカラオケに行っては作中の曲を夢中で歌いました。

去年の秋の始まりに、久しぶりに大学の友人たちと集まり、
久しぶりに皆であの街を歩きました。

あの悲しい事件があって、京都アニメーションの皆様が筆舌に尽くしがたい思いの中公開に踏み切ってくださった『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の映画を観に行きました。
とても美しい景色と心が描かれていて、上映中は全員が微動だにせず魅入っていたのですが、エンドロールでスタッフの皆様の名前を見た途端、横並びで同時に目頭を押さえました。
映画館を出て、雨の中、三条大橋の近くで言葉も交わさず佇んでいました。

雨の河原町は、紺色の空の下にオレンジの光が並び、
相変わらず混雑している歩道と市バスの音が重なって、
色彩も喧噪もとにかく騒がしい街でした。
『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の鮮やかな風景を見たあとだから、
尚更、光は強く、音は大きく感じられました。

僕たちは揃いも揃って人付き合いが下手くそで、
アニメで描かれるような青春は送ってこなかった奴らです。
テレビで『ハルヒ』に救われたと話す人がいました。
『Free!』や『響け!ユーフォニアム』に背中を押された人もいました。
そんな人たちすら僕らには羨ましく、まぶしく見えました。
そして、そんな優しい世界と人があることに安心していました。

彼らのような、作品の世界観に親近感を覚えるファンがいるように、
僕たちのように、作品の街並みに親近感を覚えるだけのファンがいます。
京都アニメーションの作品は、景色も心も鮮やかに描かれています。
とても居心地が良く、時折そわそわし、いつか懐かしむ世界です。

これまで、そんな世界を作ってくださった皆様に心から感謝しています。
身勝手なお願いですが、これからもそんな世界を期待させてください。

最後に、追悼の機会を設けていただき、ありがとうございました。

これからも優しい世界の側で。

2020年7月18日 まさいと

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