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スパロボは「戦士、再び…」を何だと思っているのか

「機動戦士ガンダムZZ」という作品をご存じだろうか。そう、ロボットアニメの金字塔であるガンダムシリーズの一作でありながら、原作者にハブ同然の扱いをされたり、スーパーロボット大戦をはじめとするゲームシリーズで原作の展開を碌に再現されなかったり、近年では存在をハブられたり、主人公の中の人の声が酒やけでどんどんひどくなっていったりしている曰く付きの作品である。

そんな作品の最終回のタイトルが「戦士、再び…」である。このタイトルの「戦士」が意味するのは主人公「ジュドー・アーシタ」たちが所属する組織エゥーゴと敵対するネオ・ジオンの首魁であり、アステロイドベルトからはるばる地球圏へと帰ってきた女傑、「ハマーン・カーン」のことを指すとされている。22歳でその生涯を終えた彼女の辞世の句「帰って来てよかった……強い子に会えて…」は有名であろう。

が、辞世の句だけが有名なのだ。何故か?

先ほども述べたがゲーム作品、特に「スパロボ」シリーズではこのガンダムZZという作品に対して「辞世の句だけ言わせておけばそこに至る過程が全く違ってもええやろ」という雑な認識がまかり通っているとしか思えない。というのも「機動戦士Zガンダム」や「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」という大人気作品をつなぐ作品である都合上、最終回の決戦らしきものはよく行われるのだが、その決戦らしきもので原作を再現しているのが辞世の句くらいしかないのである。

原作ではネオ・ジオン自体の内乱もあり互いにほとんど戦力が残っていない状態で周りの人間の助けもありながら(キャラ・スーンの男気よ…)ハマーンとジュドーが一騎打ちを行い、さらにハマーンは搭乗するキュベレイのファンネルをほとんど使わなかったりするなどの感動する展開があるのだが、少なくともそんな展開は1度も見た覚えがない。いつも大量のモビルスーツを引き連れてカミーユ相手にファンネルをぶっ放すハマーンの姿しか見たことがない。主人公のジュドーがやることといえば周りの取り巻きを幸運+ハイメガキャノンで掃除することだけで、運動性も低く近距離武器の少ないZZでわざわざタイマンを張ることは少ない。

…しかし、「スパロボ」各作品で具体的にどのくらいトンチキなネオ・ジオン最終決戦が行われているのかについて、作品ごとに単独で語られることは多くてもまとめて語られていることは少ない。そこで今回はまず、罰当たりにも原作最終話のサブタイトルである「戦士、再び…」を使いながらも全然その回の内容を再現していない連中から紹介することにする。

スーパーロボット大戦α

60話。後の作品に比べるとまだ暴走度合いは少ない。カミーユの方がジュドーよりハマーンとの台詞長いがな!しかしこのシナリオではともかく普通にザビ家と内輪もめしたりティターンズと睨み合いをしないでくれネオ・ジオン。あくまでこのシナリオとしては特筆することは少ない。使っている機体も登場するキャラもわりかし原作に準拠しているし、ちゃんとアクシズで決戦している。内乱の再現もグレミーはザビ家に付いたし一応できてはいる。しれっと混ざるα・アジール(量産機)や戦闘終了後に調停役になってるバーニィに眼をつむれば、他に気になるのはキュベレイになぜかHP・EN回復がついてることぐらいであろうか。ただシリーズ一作目でハマーンは第二次αにも登場することを考えると、このタイミングでこのサブタイトルを使ったのは早計だったのでは?という感じは否めない。まずシリーズ一作目で初代~ZZまでをシナリオ再現含めてやろうという試みが無茶な気もするが。そんなに逆シャアとっととやりたかったのか…

スーパーロボット大戦A

32話。タイトルのAの意味は「あべこべ:Abekobe」のAではないかと言われるほど宇宙世紀ガンダムの歴史だけおかしいことになっているこの作品だが、ZZは特に割を食らっていることで有名である。何しろハマーンどころか勢力としてネオ・ジオン生きてるのにジュドーは決戦を終えたかのようにザクレロに乗ったルーと一緒に木星に行っているのだから。このせいでZZの悲劇のヒロインであるプルを説得する役が前作Zの主人公であるカミーユ(精神崩壊した状態でジオン残党に軟禁されていた)に押し付けられたことも語り草である。さてAといえば「もともと逆襲のシャアのシナリオをやるつもりだったが仮面→グラサン→オールバックと余りにも赤い彗星が忙しくなるので途中でぽしゃった」ことでも有名であり、その結果ZZ版ネオ・ジオンが逆シャアに出てくるモビルスーツをことごとく雑魚敵として量産してくる(同じシナリオにジオングもいる)トンデモ展開をお見せしてくる(ジュドーたちがいかにも決戦後みたいな扱いなのもこの辺の事情が影響しているとされる、つまりハマーンは情けない奴のせいでネオ・ジオンのラスボスをやる羽目になった)…など話題も尽きないが、なんとこのシナリオはネオ・ジオン一切関係ない、タイトルだけ引用した別のお話である。なにしろ戦うのはグレンダイザーの敵であるベガ星連合軍とオリジナルのシャドウミラーだけだからな。じゃあなんでこのタイトルかというと、ジュドーとルーが木星から帰ってくる回だから。「戦士」とは彼らのこと。…納得できるか。余談だが、ルーとベガ星連合軍には妙な縁があり、IMPACTではなぜかDVEも発生してたりする。

スーパーロボット大戦R

30話。前作Aの趣向返しと言わんばかりに序盤で「逆襲のシャア」を3話かけてやり、そこで丁寧にクェスをチェーンで撃墜してやると、5年前のフォウが乗ってくるジェガンがガンダムMk-Ⅲに変わるという斬新な構成で話題になった作品。こんな構成である以上、5年前のシャアの動向が注目されるはずでシャアの自称元カノであるハマーンもそこに関わってくる…と普通なら考えると思うが、今作におけるシャアのターニングポイントは「真のオペレーション・メテオが完遂されリリーナが処刑される」時なのでハマーン様は特に関係がないというか完全に蚊帳の外。というかもともと原作でもZZ時点でシャアはすでに失踪していたはずなのだが、物語がZZから始まって「この時点でのシャアはまだ隕石落とす気はなかった」とする妙な構成なのは気にしてはいけない。さて同話だが、ネオ・ジオンとの決戦という展開自体は間違っていない。Aだとこの時点でジュドーの影も形もないのにな。が、Rにおけるネオ・ジオンは序盤から終盤まで「機動新世紀ガンダムX」に出てくる「フロスト兄弟」の踏み台でしかない。しかもガンダムXの連邦軍と宇宙革命軍という2大お騒がせ組織両方がネオ・ジオンに組み込まれており、そちらの再現の方が豊富なため「ZZの敵としてのネオ・ジオン」の主張が明らかに弱い。実際戦闘前のシナリオも「ブライト艦長がサテライトランチャー(ガンダムXの兵器)をニュータイプの指示に従って避けまくる」というハマーン様ガン無視の話だし、戦闘も前半はフロスト兄弟とGビット相手。そして決戦のはずなのにシナリオ的にもプレイヤー的にも「どうせこの後また逃げたフロスト兄弟と戦うんだろうしな…」と消化試合気味に行われ、Aから悲しい位にキュベレイが弱くなったのも相まってハマーン様は一組織の長というより「月のD.O.M.E.に行くのを執拗に邪魔してる人」ぐらいにしか見えない。で、ハマーンよりよっぽどうるさく宇宙世紀のニュータイプに突っかかるザイデルはなんでガンダムXのキャラなのにサダラーンに乗ってるの?

スーパーロボット大戦GC/XO

41話。「一年戦争地獄」と揶揄されたり、OGに出演したときに雑改変の洗礼をもろに受け、声付きだったはずなのに主役の声が変更されたり敵機体が完全に別物になったり、そんなに悪役でもないのに敵組織が種族ごと宇宙から消滅したり碌な印象がない作品。物語の大半を一年戦争に費やしている構成にもかかわらずなぜZZの最終回をサブタイにしている話が存在するのか。その答えは前話のタイトルが「宇宙要塞ア・バオア・クー」であることから察してほしい。前話でザビ家が滅び、残った赤ん坊のミネバをハマーンが祭り上げるという衝撃的展開から話がスタートする。そしてホワイトベースの中ではサザビーが出撃不可なのでビーチャの整備した百式でララァとともにハマーンとの決戦に臨むクワトロ大尉の姿が。(BGM:めぐりあい)で、何をするかと言えばア・バオア・クー直近にハマーンが鳴り物入りで出してきた大量の新機体ガザCを、エルメルの補給を受けつつ新兵器メガ・バズーカ・ランチャーで殲滅。なぜこんなシャアに対する解像度だけやたら高い話になってるんだ。ZZのシャアは0話とオープニングにしかおらんかったはずだが。また、ドラグナーの決戦も雑に統合され大量のギルガサムネも増援として登場する。シナリオの流れ的に見ても、ハマーン様はわざわざジオンを引き継ごうとせずに最初からギガノスを引き連れていた方が成功したのでは…と感じずにはいられない。なお、ジュドーとハマーンはマジで面識がないのでこの回で初めて共感してこの回で拒絶してこの回で死別します。…それより連邦はこんな勢力に対してよくジム(ⅡでもⅢでもない)で勝てたな。ドラグーンもいたとはいえ…

スーパーロボット大戦T

45話。Zシリーズでお呼びがかからなかったことを反省しているのか、ガンダムUCを差し置いてVXT3作連続で参戦しているZZくん。3作目となるTでは、どうにかして新規機体を用意せずにZZの再現ができないかという男子大学生の自炊並みにケチな試みが行われた。同作では「そういえばZZの初期タイトル案って「機動戦士ガンダムZZ 逆襲のシャア」だったんだっけ」というノリでZZメインでありながらシャアも雑に武装蜂起するのだが、このシナリオでは愛想をつかしたクェスだけハマーン様の元に来る。シャアに尺と枠を取られているせいでグレミーの反乱がシナリオだけで済まされるので、プルツーもいる。重い女三人衆の完成。同シナリオでハマーン様が決戦を行う契機は「シャアが宇宙人と結託して地球人類に降伏を勧める」という明らかにシャアらしくない(でもスパロボオタクから見ると見覚えのある)言動をしたからなので、やっぱり内乱の果ての決闘という気配はどこにもなく、むしろ「彼氏との倦怠期でぐれてる重い女を説得しに行く」雰囲気が漂い、Rほどではないが脱力感のある戦いである。こんな私闘にも付き合うネオ・ジオンや木星帝国の兵士たちは、内心何を考えているのだろうか… なお、せっかく久々のZZ版で登場したハマーン様であるが、辞典の内容が天獄編の使いまわしのため、スパロボスタッフによる最新の原作ハマーン様解釈は得ることができない。なんで。


こんな感じでまずは5作品ほど紹介したが、「戦士、再び…」という最終回のサブタイトルを堂々と使用しているシナリオであっても、再現と言える再現をしてるのはαとRだけという体たらくである。では、それ以外のタイトルを使用しているZZ決戦ステージではどうなのか。もうちょっとましなのか。それともタイトルすら寄せる気がないほどに何もかも違うのか。…まあ優勝はZZ参戦してないのにネオ・ジオンのハマーンと決着をつける第3次Z一択だけども…

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