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ブレワイとティアキンは大きく違うゲームだった。

 『ゼルダの伝説ティアーズオブザキングダム』5/26 23時頃に無事クリアいたしました。
 発売初日の0時からプレイして、メインストーリーを中心に進めたつもりでしたが、およそ75時間かかったようです。早いか遅いかは人に寄りますが、自分としては時間が掛かったなと感じています。
 その上で、ブレワイとティアキンが違うゲームだと思った所を振り返り、言葉にしてみたいと思いました。

宙に浮いている大地、足元に広がる大地、全てが冒険の舞台……だが。

1.ゲーム体験として、ブレワイは探検。ティアキンは冒険。

 2016.3/3。新時代のゲーム機Nintendo Switchと共に発売したゼルダの伝説ブレスオブザワイルドは、人気シリーズの最新作ながら「新しいゲーム体験」を多くの人にもたらした名作でした。いままでのシリーズとは少し雰囲気が違い「オープンワールド」「広大な大地」この二つが多くの人に印象づく作品になったと思います。あの”見渡す景色全ての場所に行ける”と言う感覚は、いまなお色褪せません。リンクが裸一貫で大地に降り立ち、木の枝を振り回しながら世界に挑んで行く心もとなさと不安感、それでいて触れられる多様な物を活かして道なき道を進む楽しさは皆様も忘れ得ないことでしょう。

 しかし、それ自体シリーズ作品とは大きく違う体験でした。いままではパズル的なアクションが売りで、2Dおよび3Dダンジョンの「アハ体験」を基調に、独特の世界観で人々に親しまれる知育絵本のような感じではなかったかと私は思います。(個人の感想です)

 そういった大きな違いがありながらも、シリーズ正統作品として、またシリーズ最高傑作として多くの人に賞賛され、もはやいまなお遊ぶ人もいる作品となっているのがブレスオブザワイルドです。


 そんなゼルダの伝説ブレスオブザワイルドの正統続編(ゲームシステム・物語含み)として、「ゼルダの伝説ティアーズオブザキングダム」は発売されました。
 前情報として、前作の地上の他に、上空へと現れた同じ空間に浮かぶ「空島」が公表されていました。『あの広大なフィールドが、さらに倍に!?』と、ブレワイをプレイしていた人々を戦々恐々としたものです。実際の所、発売後に蓋を開けてみれば、地上にぽっかりと開いた深穴に飛び込めば、そこにはさらに『地底』と言う三つ目のフィールドがあり三倍だった訳ですが……。プレイを開始した多くの人が驚嘆に喘いだのは想像に難くありません。(私自身、その一人でした)

 さてしかし、実際にプレイしてみて、「ブレワイ」と「ティアキン」では大きく感じ方が違いました。むしろ、ティアキンは「フィールドが狭く感じる」のです。
 その内実を言語化していくと、「探検」と「冒険」と言う単語に集約されました。

いくつかの辞書を照らし合わせての意訳になりますが、
「探検」とは、未知の領域に踏み込み調査すること。
「冒険」とは、危険を承知しながらも踏み込み挑戦すること。
そのように言い分けられるようです。そして、これがブレワイとティアキンを大きく分けるゲーム体験の違いだと、私は感じます。

 これは、「ブレワイ」が先に発売されたからかもしれません。「ティアキン」はそれを下地にしているのだから、”前作をプレイした人は未知が少ない”とお思いになる方も多いかもしれません。
 しかし、それについては物語によって”元の土地ではあるが地形が変わっている”ことを先に提示されており、むしろ「いま、あそこはどうなっているのだろうか」と既知は未知に変化して知りたくなる。そういう仕掛けで解決されています。
 それでも、「ティアキン」は「ブレワイ」ほど”未知の領域に踏み込むワクワク感。心もとなさと不安感。道なき道を進む楽しさ”は確実に減ったと私は感じました。そして、それこそが二作の違いであると感じています。
 それは、「ブレワイ」では、提示された膨大な世界を把握すること自体が楽しさでしたが、「ティアキン」では、提示された膨大な世界に対しどうアクションするかが提供されているからです。

危険と分かっていても挑む姿勢。

2.パズルの質の変化。

 前作では「リモコンバクダン(丸・角)」「マグネキャッチ」「ビタロック」「アイスメーカー」と言う基本のアクション(※シーカーアイテム)が遊びの核として用意されていました。
 バクダンはリモコン式で、強烈な爆風を起こすことで敵を倒したり障害物を壊したり、あるいはビタロックと組み合わせることで、移動する推進力になったりしました。
 マグネキャッチは一部の物体を任意に移動させることができました。これによって、武器だけではなく立地で敵と戦ったり、移動の困難な空間に橋をかけたりしました。
 ビタロックでは一部の物体の時間を止め、その間に受けた衝撃を保存し、時間が解除された瞬間に全て解き放たれるとても特殊なアクションでした。これによって、リンクの斬撃やバクダンの爆風により思わぬ移動を可能としたりしました。
 アイスメーカーは水上に氷柱を生成し、不安定な水場に足場を生成しました。これによってシリーズのゼルダらしい「パズル的な解決」のできる場所が要所要所に用意されていたように思います。

 以上、挙げるまでもないかもしれませんが前作のアクションをざっと振り返りました。さて、それはもちろん今作のアクションと比べる為です。
 まずティアキンには「ウルトラハンド」「スクラビルド」「モドレコ」「トーレルーフ」「ブループリント」の5つの基本アクション。そして焦点となる「ゾナウギア」があります。

 ウルトラハンドはマグネキャッチに似た性質をもちますが、今作ではさらに扱える物質が増え、さらに同士を結合させる力を持っています。これによって、木の板同士を組み合わせて箱を作ったり、木の板とゾナウギアを組み合わせて車のようなものを組み合わせたりして、大きくできることが変わりました。
 スクラビルドは「武器」「盾」「矢」に対して様々な物質を掛け合わせることができます。木の板と鉄の盾を組み合わせれば電気を防ぐ頑丈な盾になったり、ただの木の枝にゾナウギアを組み合わせることで火炎放射器になったりする夢の力です。
 モドレコは動きのあった物体の過去20秒間の動きを、物理法則に遡るように逆再生する力です。これは自然発生的に動いた物体だけでなく、敵が動かしてきた物体、およびリンク自身が動かした物体をも逆再生する脅威の力です。
 トーレルーフ頭上に広がる天井を突き抜けて、その先の天井上の床へと移動する特殊な移動アクションです。天井がある程度飛び上がれる高さであり、突き抜けた先がある程度平らであることが条件ですが、普段のジャンプとは十倍近い高さまで可能ですし、少し傾いたくらいの平地であれば利用可能です。
 ブループリントは、ウルトラハンドで作成した工作物を即座に再現する能力です。設計図通りの物体が近くにあればそれを利用しつつ、なければ代用のアイテムを消費するだけでいつでも作成できる恐ろしい機能です。とても希少な物体やアイテム、ゾナウギアを使った工作物も、ブループリントで保存しておけば無限に再現が可能です。
 最後にアクションとは少し違いますがアイテムや世界に転がっている「ゾナウギア」です。これはタイヤであったり、水を出す給水栓だったり、あるいは空を飛ぶ飛行機の翼や、熱気球、あるいは炎を吐く竜の口だったりと、全種類なんと26種類と非常にアクションの幅が広がっており、これら全てがウルトラハンド・スクラビルド・モドレコに反応します。

 このように「ブレワイ」から「ティアキン」の基本的なアクションは大きく変化しています。これを私は、「ブレワイ」は一次的アクションであり、「ティアキン」は二次的アクションになったと皆様と確認したいです。
 すなわち、”アクションを使用することで直接結果が得られる”のが一次的アクション。それに対して、”アクションを使用した結果を元に、さらに求める結果を得る"のが二次的アクションです。あえてツッコミを入れるなら「トーレルーフ」。これは一次的アクションと言えますが、あくまでも移動アクションのため、”その先で何かを行う為に”とっているアクションなので、やはり二次的アクションと言えるでしょう。

 これがどのような意味を持つかと言うと、「ブレワイ」では直感的にアクションが動いていました。「リモコンで敵を爆破」や「ビタロックで物体を遠くまで飛ばす」ことが結果でした。しかし「ティアキン」では思考実験の先でアクションが機能します。「ウルトラハンドで板とタイヤをくっ付けて車が完成する。つまり車があるってことは、移動ができる」などです。車ができただけでは、求める結果が得られませんからね。ここが大きく違います。
 これは「ブレワイ」の正統続編としてはあるべき姿だと私は思います。前作でできたことができた上で、次回作はより多様なことができる。そして、よりすごいことができる。大事ですよね。
 また、それができたことに値する、強敵やギミックも用意する。実際、敵の強さは「ティアキン」はブレワイよりも非常に高いと感じました。前作ではDLC以降に登場した白銀のゴブリンなど、今作では物語が後半に入ると自然に登場しています。

 しかし、そこで一つの疑問が生じます。
 全てのプレイヤーが、同等に発想をし得るでしょうか。

今作のアクションをふんだんに活用する、最高の体験をくれるボス。

3.正統続編ゆえの難易度上昇と、手札の多さ。

 ティアキンは二次的アクションを有効に使うと、早く動き、遠くに行き、強い敵を倒すことができます。そして、そういった体験を求められているように思います。
 それを決定づけるものはいくつもあります。移動の観点で言えば、初めの島ではトロッコに推進力を付けてレールを疾走し、翼に扇風機を付けパラセールが無くとも空を飛びます。そして地上に降り立った後も、パラセールを得て「鳥望台の大ジャンプ」があります。空島の祠にワープすれば、非常に高い高度から地上へ向かってパラセールで一気に移動ができます。物語が進めばさらに「風の賢者」から追い風を吹かせてもらうこともできます。そもそもブループリントでどこでも「強力な飛行機」を呼び出すことができるのです。これらはブレワイ時代から「高所から一気に移動」する名残でもありますが、それが強く強化されているのです。仮にワープのしづらい探索中の狭い谷に落ちても、うまくいけばトーレルーフで一気に高所まで戻ることができます。これによって、前作で広大に感じていたフィールドはあっという間に移動できる広さに感じるようになりました。
 また、スクラビルドによって攻撃力が上がりました。それは物語の進むのに合わせて指数関数的に上がっていきます。倒した敵から落とされた武器、そして魔物の素材の攻撃力がどんどん上がっていくからです。また携帯できるゾナウギアも増えますし、任意で出し入れのできる仲間も最大五人まで増えていきます。前述のように、前作の最大勢力と言える強大な敵が出て来ますが、それはこちらが強くなるチャンス、”素材”とも見えるのです。こうして、強大な敵も避けるべき相手から、挑み力を試す相手に感じるようになりました。

 このように、ゲーム内で遊び方を提示しながら、そのゲーム体験は「ブレワイ」から非常に加速したと言えます。そして、これが今回のタイトルの回収になっています。すなわち、「ブレワイ」はまだ未体験だった敵・土地に踏み込んで行く中で、木の棒一本持って踏み込む恐ろしさを切り開いていく「探検」が楽しいゲームでした。しかし「ティアキン」は向こう岸に見える脅威にどのように挑んで行くかを思考し、実証していく「冒険」のゲームだったのです。

※組み合わせや挑戦の妙として、思いもよらないことも頻繁に起こりました。

4.面白さの本質。

 ただし、これによって評価が人によって分かれることは理解します。
 特に「前作の方が良かった」「過去作の方が好き」と言う意見が出るのはよくあることです。しかしそれに対してこそ、今回「違い」を言語化した理由です。一重に「ティアキンが前作より面白いか・面白くないか」と言わないために、今回違いをまとめたとさえ思います。

 まず改めて「ブレワイ」と「ティアキン」は違うゲームです。そして、正統続編として最高に面白く仕上がったゲームだと私は思います。そこをまず主張させて頂きます。

 これは「ブレワイ」の時にそれまでのシリーズとは違う楽しさを提示し、そして多くの人に支持されたのと同じことと思っています。そしてもしもティアキンが「ブレワイ」の二番煎じだったならば、こういった評価が出たことでしょう「前作で良かったんじゃないか」と。ただ前作を模倣せず、「ティアキン」として新しい楽しみを産み出したこと。それこそが今作の意義あることだと私は思います。これが任天堂らしい「看板タイトルの続編」であると思うのです。(※本質は同じながら、旧タイトルにはない新しい遊び方を感じさせてくれること。マリオやカービィなど)

 何よりこの記事は「ゲーム体験」の話だけでまとめたnote記事です。
 物語
に触れるとするならばもっと話が変わってきます。今作では長い「ゼルダの伝説」叙事詩に対する一つのアンサーを示しており、またこの「ティアキン」単体の物語でも、OPからEDの演出の回収は描かれた途中の物語を含めて非常に繊細に組まれた至上の物だったと感じます。EDの最後のあの瞬間、私は思わず涙ぐんだことを覚えています。それに、膨大な登場キャラクターたちに用意された「無数の台詞パターン」は、筆舌に表しがたい凄さがあります。これによって、「ティアキン」世界の人物一人一人に焦点をあてると、それだけでそこに生きる人々の息遣いを感じてしまうことでしょう。
 また音楽的な演出も語りつくせない仕掛けが多用され、ゲーム体験は他の追随を許さぬ繊細な仕掛けが施されています。

 以上長文となりましたが、まだ発売されて一か月も経っておりません。世の評価はむしろこれから作られていくことでしょう。私のこの記事も、あくまでも私が感じたこと、いちゲーマー、いちゼルダの伝説ファンが感じた、前作との違いです。是非、あなた自身もハイラルの大地を感じて、楽しんで頂きたいと思います。

難易度は高いですが、是非ゼルダと再会を果たして欲しい。その感動は一入です。

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