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日本のド・ゴール? 石破茂内閣発足 論功鮮明 「国防族内閣」?  前途多難 少ない女性登用 

 石破茂新内閣が10月1日に正式に発足した。
 
 自民党総裁選で当選した石破茂氏が第102代首相に就任し、自民党と公明党の連立内閣が発足した。新内閣では、全19名の閣僚のうち13名が初入閣を果たした。
 
 外務大臣には岩屋毅氏、財務大臣には加藤勝信氏、そして防衛大臣には中谷元氏がそれぞれ任命された。林芳正官房長官と斉藤鉄夫国土交通大臣は、前の岸田政権から引き続き留任している。女性閣僚は2名で、前政権の5名から減少している(1)。
 
 石破首相は就任会見で、今後の政策の柱として次の4つを掲げた(2)。


 
1. 政治改革の断行: 「令和の政治改革」として、政治とカネの問題に取り組む。
2. 日本を守る: 安全保障環境の変化を踏まえ、防衛力の強化に努める。
3. 国民を守る: 防災庁の設置や国民保護体制の実効性強化を図る。
4. 地方を守る: 地方創生や人口減少問題に取り組む。
 

 経済政策については、デフレ脱却を最優先課題とし、岸田政権の成長戦略を継承する意向を示した。物価上昇に対する経済対策を早期に検討し、さらに「資産運用立国」の推進にも力を入れると述べた(3)。
 
 今後の予定としては、10月9日に衆議院が解散され、10月15日に公示、10月27日に総選挙が実施される見込みである。

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論功鮮明 「国防族内閣」か


  石破内閣では、全20人の閣僚のうち無派閥議員が11人を占めており、過半数を超えている。これは「脱派閥」を強調した布陣と言えるだろう(4)。無派閥議員の多くは、旧石破グループや、菅義偉前首相の支持基盤であった小泉進次郎氏を支持するグループからの出身者である(5)。
 
 今回の内閣には「論功行賞」の色合いが強く、石破首相は党総裁選で自身を支えた議員たちに重点的な配慮を見せている。総裁選で石破氏の推薦人となった6人が閣僚に起用されており、彼らは全員、衆議院で5回以上、または参議院で3回以上の当選経験を持っている(6)。結果として、若手の起用は見送られた。
 
 そして特に「国防族」の重用が目立つ(7)。石破首相自身に加え、岩屋毅外相、中谷元防衛相、林芳正官房長官の3人が防衛大臣の経験者である。さらに、安全保障担当の首相補佐官には長島昭久元副防衛相が起用され、党の要職にも、小野寺五典政調会長や浜田靖一衆院議院運営委員長予定者といった防衛相経験者が配置されている。
 
 また、総裁選で石破氏を支持した議員が多く登用されている点も特徴的である(8)。村上誠一郎総務相、岩屋毅外相、赤沢亮正経済再生担当相、伊東良孝地方創生担当相など六人が石破氏の推薦人として名を連ね、坂井学国家公安委員長も決選投票で石破氏支持に回った。

少ない女性登用


 
 一方、石破内閣では女性閣僚の数が大幅に減少し、19人の閣僚のうち女性はわずか2人にとどまる。これは、岸田文雄前政権の5人から半数以下に減ったことによる。さらに今回の内閣で任命された女性閣僚は、子ども政策担当相の三原じゅん子氏と文部科学相の阿部俊子氏の2名で、いずれも比較的注目度の低いポストに就任している(9)。
 
 岸田前政権では、外相や経済安全保障相など5つの重要ポストに女性を起用しており、これは国際基準から見れば依然として低い水準であり、日本の歴代内閣としては最多の女性閣僚数に達していた(10)。
 
 そもそも、自民党の衆議院議員のうち女性は約8%に過ぎず、閣僚候補となる女性議員の母数自体が非常に少ない状況が続いている。また、毎日新聞の取材に対し、山崎摩耶氏は「自民党内で従来の勢力が引き続き影響を及ぼしたのは残念」と述べており、党内の力関係が影響した可能性が示唆される(11)。
 
 石破氏は就任前に、女性の社会進出を推進する姿勢を強調し、クオータ制にも理解を示していた。しかし、実際の内閣人事では女性の登用が大幅に減少した(12)。また、自民党総裁選の際に掲げた政策集では、女性活躍の指標改善を目標としていたものの、それが今回の内閣人事に反映されていない点も指摘されている(13)。
 

日本のド・ゴール?


 
 外国メディアはしばしば、石破茂首相を「日本のシャルル・ド・ゴール」と評している。石破氏の安全保障における米国依存からの脱却を目指す姿勢は、ド・ゴール大統領がフランスの独立路線を追求したことと類似している。また、石破氏に詳しい関係者によれば、石破氏自身もド・ゴール氏に言及することがあるという(14)。
 
 つまり、外国メディアは、ド・ゴールがフランスの国際的地位を高めようとしたのと同様に、石破氏も日本の国際的役割を拡大しようとしていると見ている。
 
 石破首相は、日米地位協定の改定に強い意欲を示しており、就任会見では「日米同盟の強化につながる」として、地位協定改定の方針を表明した。「一朝一夕で変わるとは思っていないが、だからといって諦めていいとは全く思っていない」と述べ、着実に取り組む姿勢を示した(15)。
 
 しかしながら、所信表明演説では、注目されていた日米地位協定の改定には触れなかった。これについては、準備不足や党内の政治的配慮が背景にあると考えられている(16)。
 
 石破氏の党内基盤が脆弱(ぜいじゃく)であることから、「衆院選に向けた党内結束」を優先せざるを得なかったとの見方もある(17)。
 

 
(1)   杉山健太郎「石破内閣が始動、前政権の経済政策を継承 日米地位協定の改定に意欲」Reuters、2024年10月1日、https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/EARRNYQKYZLCBG23EGGJEIHB6M-2024-10-01/

(2)   自民党「石破内閣発足等についての石破内閣総理大臣記者会見」2024年10月2日、https://www.jimin.jp/news/press/209117.html

(3)   自民党、2024年10月1日


 (4)   JIJI.COM「無派閥過半数、「論功」鮮明 若手ゼロ、女性2人 石破内閣」Yahoo!ニュース、2024年10月2日、https://news.yahoo.co.jp/articles/a0edd4de2ad5f4f75110fa6f328c21e171d9d2ed

(5)   遠藤修平「意趣返し? 岸田首相も憂う「鬱憤晴らす」石破政権の“無派閥”人事」毎日新聞、2024年9月30日、https://mainichi.jp/articles/20240930/k00/00m/010/291000c

(6)   遠藤修平、2024年9月30日

(7)   鈴木悟「まるで「国防族内閣」? 留任組軸も独自色にじます石破首相人事」毎日新聞、2024年10月3日、https://mainichi.jp/articles/20241003/k00/00m/010/117000c

(8)   JIJI.COM、2024年10月2日

(9)   横山恵利香「閣僚ポストへの女性登用が進まない日本、石破新内閣ではわずか2人に」Bloomberg、2024年10月1日、https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-10-01/SKO3PIT0G1KW00

(10)   横山恵利香、2024年10月1日

(11)   御園生枝里「女性活躍はどこへ? 石破内閣、閣僚わずか2人に「残念」の声」毎日新聞、2024年10月5日、https://mainichi.jp/articles/20241005/k00/00m/010/113000c

(12)   御園生枝里、2024年10月5日

(13)   御園生枝里、2024年10月5日

(14)久保信博「アングル:石破新総裁、安保のエキスパート自任 日米同盟を「米英並みに」」Reuters、2024年9月27日、https://jp.reuters.com/world/japan/QZ2BN2DVVFLNLCBDOZY26YMTVQ-2024-09-27/
 
(15)久保信博「石破首相、日米地位協定の改定に意欲 「同盟強化につながる」」Reuters、2024年10月2日、https://jp.reuters.com/world/japan/WEDTLRBZL5DRJHWV7RV3OY7MWA-2024-10-01/
 
(16)沖縄タイムズ「【石破首相の所信表明】日米地位協定を封印、沖縄県民軽視 基地負担軽減の実効性かすむ」2024年10月5日、https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1447345
 
(17)川田篤志「「石破カラー」は薄めに、「旧安倍派への配慮」は濃いめに 所信表明で言った?言わなかった?独自政策一覧表」東京新聞、2024年10月5日、https://www.tokyo-np.co.jp/article/358516

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