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緑色のピザ #花束郵便

妙な緑色していたのに、
クリスマスらしい華やかさなど微塵も無かったのに、
バイクの警告灯は点滅していたのに、
なぜ食べてしまったんだろう。



クリスマスイブに訪れたのは、真っ赤なサンタ衣装を脱ぎ捨てた、緑色のピザみたいな男だった。
エンジンがかからないという。色々といじる俺の斜め後ろから覗く男。糸口は全然見えない。
そこへクーコが降りてきて、二台並んだ駄目なバイクに薄らと笑みを浮かべ言う。
「もう別の方法考えたら?」

あの夜を境に、ピザ屋は俺のアパートに来るようになった。もう、二度来た。
外で何度会っているのかは知らない。

あの夜から俺たちは変わり始めた。奇妙なピザを食べてから。
味はまぁ悪くなかった。悪くない。
ピザにハズレはあまりないというのは正しいようだ。

雪も降らない今年の冬は、ただただ冷たく切れそうなほどに乾燥している。
もう、以前の俺とクーコを思い出せない。
もう、ここまで来てしまった。

もう、あいつが居ないと駄目だと思う。クーコも俺も。
二人だけではもう無理で、俺たちはここまで来てしまったんだ。


ーーー

たなかともこさんの、こちらの呼びかけに寄せさせていただきます。

noteを始めてすぐの頃から、ともこさんの深い温かさに触れた者として、このような花束企画はともこさんらしさを感じました。私もそっと一輪、添えさせて頂きたいと思いました。

読ませて頂いたのは、ふみぐら社さんのこちらの作品です。

変だよそれ、と世間から片付けられてしまいそうな三人の世界の続きを書いてみたくなり、筆をとりました。

よく泣ける電車や、銭湯につかるライオン、雨予報を聞くと買いたくなるピスタチオなど、不可思議だけど普遍的な感覚を次々と書かれるふみぐらさんですが、その中にたまに交じる恋愛ものが心臓に絡みつく感じでとても印象的です。

こちらの記事、#呑みながら書きました なのに濃密な空気が流れていて心臓掴まれたことを覚えています。

ふみぐらさんの、濃密な世界観をもっと読んでみたい、掴まれたい、というただのファンです。

一日も早いご回復を心からお祈りしております。

ぇえ…! 最後まで読んでくれたんですか! あれまぁ! ありがとうございます!