8月3日(ロートレックの絵について)

ロートレックという初めて知る人の絵を観に行った。
ハンセン病の女性が手を組んで祈っているのがあって、朱で描かれたその指先は切り傷を最後にひと拭いした綿布のぐあいにかすれていた。遠くから見た血痕が祈りのあとにとどまっていた。本当の、ひと呼吸ずつの底からの祈りは、つまる言葉とこわばる喉、消えかかる血のにじみを越えて、僕らの前にかたく手を組む。

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