8月1日(雨について)

この間もお天気雨があった。
陽ざしと羽虫と湿気がグラデーションをなす夏の中途から、明るく雨がはじまっていた。
降っていると言うよりははじまっていた。
あまりに晴れていたので、ああこの辺りがいつも雨が結ぶ箇所なんだなと分かって見つめていると、ちょうどその稜線のふうのはじまりを烏が一羽縫った。烏があんなに美しいのは初めてで、濡鴉という色は古代の人がお天気雨に際して見つけたのだろうと一人納得した。雨がはじまって、終わるのは植え込みにかけられた蜘蛛の巣だった。普段はちょっとした光のニュアンスに紛れている蜘蛛の巣が、雫をまとって雨の終わりを引き受けていた。

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