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第21回 いたばし協働・市民フォーラム:外伝【side story】

【第21回(2022年度) いたばし協働・市民フォーラム】

■ ご案内
 コロナ禍も3年目ですが、この秋、恒例により第 21回目となる「いたばし協働・市民フォーラム」を実施いたします。
 内容につきましてはイベント欄に掲載させていただきましたが是非、皆さまご参加(事前申込制)いただければ幸甚です。
 どうぞよろしくお願いいたします!
※これから当日まで、数回にわたり不定期にて事業のアナウンスを兼ね今回の背景や出演者のご紹介等を徒然に記させていただきます。
第21回 いたばし協働・市民フォーラム - 板橋フォーラム (itabashi-forum.com)

■ 背景と経緯と ① ~テーマの設定:その1~
 21年目となります本年の『いたばし協働・市民フォーラム』は、「生きづらさ」「ひきこもり」と 自治体の対応をテーマに、「困窮者」「多様性」といった面も包含しながら、あらためて、学び・議論等してみたいと思います。
 上記ワードに象徴される事象は、コロナ禍や物価上昇もあって、日日進んでいるように感じられます。
 実際、板橋区が実施した「令和3年度 板橋区区民意識意向調査・区民満足度調査」
https://www.city.itabashi.tokyo.jp/.../959/houkokusyo.pdf
では、

〇「今後、区が重点的に⼒を⼊れるべきだと思う分野について、重要だと思う順に5つ」の設問について、上位ふたつは
・「子育て」46.4%
・「学校教育」33.1%
で、「未来」の「ひと」に力を入れることを区民は志向していることがうかがえました。
〇また「税⾦に⾒合った⾏政サービスの提供」という設問については
・感じる 4.6%
・まあ感じる 21.7%
・あまり感じない 38.8%
・感じない 16.7%
・わからない 15.9%
と云うもので、感じる方は計26.3%で、概ね4人に一人でした。
その意味で今回のテーマ設定は、コロナ禍3年目に入った2022年の今日の課題への取組みとして必然性がある、そう考えております。
※イベント欄に掲載の今回の内容等については、当会に断りなく転送・周知等いただいて構いません。是非、どうぞよろしくお願いいたします。

■ 背景と経緯と ② ~テーマの設定:その2~
 今から12年前の2010年、NHKスぺシャルにて『無縁社会 ~“無縁死”3万2千人の衝撃~』が放送されました。極めてショッキングな内容で、これに触発され、板橋区での事象を知るため、翌年2月、当会のミニ勉強会にて「無縁社会と板橋区の現状 ~行旅死亡人の実例と独居老人施策~」とのテーマで、区のおとしより保健福祉センター所長と、行旅死亡人を所管する福祉部管理課援護係長に話をうかがいました。板橋区でも無縁死は(日常的に)発生しており、独居老人数は増加の一途、そうした方は「一日、誰とも会話しない」、そんな現実をお聞きしつつ、同時に行政(職員)がそういった生々しい業務に対峙している一面も学びました。
 2016年、区監査委員事務局発行の行政監査結果報告書を手にし「板橋区立小中学校の全児童・生徒の35.86%が、経済的理由により就学援助(学用品費、学校行事費、給食費等の支援)を受けている」との記述が目に入りました。数年前から云われていた「子どもの貧困」が極めて普通に在ることを実感し、第16、17回の「いたばし協働・市民フォーラム」にてテーマとして取り上げました。
 そして本年6月、江戸川区(人口70万人)は、23区ではじめて(18万を超える対象世帯にアンケート調査票を送るという)大規模な「ひきこもり実態調査」を実施し、結果を公表しました。その内容は衝撃的なもので、不登校もあわせた「ひきこもり」当事者の人数は9,000人超。
https://www.city.edogawa.tokyo.jp/.../r3_jittaichosa.html

この数字は、全区民76人に一人の割合、というもので、板橋区に当てはめれば57万人中7500人が「ひきこもり」(状態にある)、ということになります。
 同調査の「ひきこもるきっかけ」への回答は「いじめにあった」「長期療養の病気」「職場になじめなかった」など様々ですが、これらの背景をあえて一言に要約すれば、やはり「生きづらさ」ということになると思います。
 「無縁社会」「こどもの貧困」「ひきこもり」そして「生きづらさ」。それぞれの事情は千差万別であるものの、根底ではつながっている今日の社会の一側面であり、「経済的貧困」に加えて「関係性の貧困」がもたらした現実なのだと思います。
 「生きづらさ」については、一人ひとりの内面と感じ方に係る部分でもあり、政策や制度だけで払拭されるものはありませんが、であるがゆえに、なぜ「生きづらい」社会なのか、今回のフォーラムにて区民目線で平場で議論する中でこれを探り、区民一人ひとりの意識に呼びかけてゆくことで少しでもこれをカバーできれば、そんな思いもあります。

令和3年度「江戸川区ひきこもり実態調査の結果報告書」についてCITY.EDOGAWA.TOKYO.JP

令和3年度「江戸川区ひきこもり実態調査の結果報告書」について
令和3年度に実施しました「江戸川区からの調査のお願い」をもとに「令和3年度江戸川区ひきこもり実態調査の結果報告書」を作成しました。

■ 背景と経緯と ③ ~第1部講師~
 今回の開催趣意(「開催にあたり」)にも記してありますとおり、いまの日本社会(感じ方はそれぞれであるものの)「生きづらい」社会となりました。それは、政府が「孤独・孤立対策担当室」を起ち上げ、同政策に注力していることからも明らかな現実 かと思います。
https://www.cas.go.jp/.../kodoku_koritsu_taisaku/index.html

 政府においては特命事項や省庁横断的に取組む政策課題は、内閣官房もしくは内閣府が所管し組織が設けられますが、同府で子どもや犯罪被害者、障がい者施策等を担当する共生社会政策統括官を務めたのが、今回第一部講師の村木厚子さんとなります。
 皆さまご存じかと思いますが、2009年、冤罪事件で逮捕・拘留され、その後の裁判も含め文字通り生のどん底を経験された国家公務員で、無罪判決後は厚生労働省の事務方トップに就任。
 退官後は、天下らず若年女性支援の「若草プロジェクト」代表呼びかけ人や、女子大学で教鞭をとっていることからもうかがえるように、ヒューマンな生き方をしている方です。
 また「いたばし協働・市民フォーラム」第1部の講師は、今回21回目にして(大きな声では言えないのですが)初めての女性講師となります。
 そんなこともあり11/26(土)は、国の共生政策を担っていた村木さんが、自治体の一民間団体の事業にて板橋に来てお話いただけます。
 この機会、是非みなさまご来場いただけば嬉しく存じます。

孤独・孤立対策|内閣官房ホームページ
CAS.GO.JP

社会的不安に寄り添い、深刻化する社会的な孤独・孤立の問題について総合的な対策を推進するための企画及び立案並びに総合調整に関する事務を処理するため、内閣官房に、孤独・孤立対策担当室を設置いたしました。 .....

■ 背景と経緯と ④ ~シンポジスト:板橋区役所~
 第二部のシンポジウムは、恒例により先進自治体首長、板橋区職員(管理職)、区議会(のテーマを所管する)担当委員長、学識経験者をお招きします。
 まず、板橋区職員のシンポジストですが、子ども家庭部の田中光輝部長となります。田中部長には10年前、教育委員会新しい学校づくり担当課長在任時に当会のミニ勉強会におこしいただき「区立小中学校の適正規模・適正配置」についてお話をうかがったことがありますが、極めて前向きかつ誠実、そして勉強家でシャープな職員といった方です。
 子ども家庭部は、学校に係る部分以外の0歳児からの子ども政策を担っており、今年はこれまで都立であった児童相談所が権限・機能委譲により、区立「子ども家庭総合支援センター」としてスタートするなどエポックな部署です。
 国においても来年4月、これまで文科省、厚労省、内閣府などがそれぞれ所管してきた子どもに関する行政分野をとりまとめて担う新たな省庁「こども家庭庁」が発足しますが、自治体では既に同役割を担って横串を刺す部が在った訳であり、また子どもの貧困対策にも取り組むなど、(ある意味)子どもの将来=区の未来がかかる政策を担務する重要なセクションであるともいえます。
※区では同じく今年4月から、ひきこもり対策を担う「ひきこもり対策担当係」も発足しており、現在、区独自のひきこもりの実態調査も実施中です。
 子どもの貧困や若年層の困難、一方で少子化・超高齢社会という現実にあって、予算面も含めて出来ることには限りがある中、これから区としてどんな子ども政策を打ち出してゆくのか。日々、住民と向き合い、生の声を聴いている基礎自治体であるがゆえに、同意見を宝の山として知恵と工夫を絞り出せば、国や都をリードするような展開が図れるかもしれない、そう思います。
 当日はそんな未来志向の議論もしてみたいと考えております。

■ 背景と経緯と ⑤ ~シンポジスト:板橋区議会~
 第2部シンポジストの2人目は、毎回、住民代表である区議会議員からお一人ご出演をいただいております。
 同出演議員の基準については、区議会では各分野(部局)に応じて議する委員会が存在しますが、その年のテーマを所管する委員会の委員長さん(党派関係なく)としております。ちなみに、2020年と2021年については、コロナ禍という非常事態の政策に特化あるいは統合して議する委員会が存在しなかったことから、議会に緊急的に設置された「新型コロナウイルス対策会議」を統括する議長にご登壇いただきました。
 今年はシンポジウムのテーマとして「多様性」も取り上げることから、昨年、議会に設置された特別委員会=「インクルージョン推進調査特別委員会」委員長の岩井桐子さんにご出演いただきます。
 「ダイバーシティ」はそれぞれ聞いたことがあり、意味合い的にも解るかと思いますが、同委員会の冠に使われた「インクルージョン」は聞き慣れない言葉でもあります。同語を日本語にあてはめれば、社会的「包含」「包括」「包摂」という意味で、教育分野等で使われている新しいワードとなります。また最近は徐々に企業や各種団体における取組みの指針として「ダイバーシティ&インクルージョン」(D&I:ディーアンドアイ)というコピーで、並列に使われてきている傾向にあります。
 議会は区民の多様性にどう向き合っているのか・いくのか、同委員会ではどんな議論がなされてるのか、そんな部分も聞きながら、シンポジウムというオープンな平場で区民目線で議論してみたい、そう思っております。

■    背景と経緯と ⑥ ~シンポジスト:先進自治体首長~
 当フォーラムのシンポジウムでは毎回、テーマに係る先駆的・意欲的取り組みを展開している自治体の首長さんにご登壇いただいております。
21人目となる首長さんは、武蔵野市の松下玲子市長となります。女性首長は第5回の多摩市長(田中幸子さん:当時)以来、2人目となります。
 武蔵野市といえば、昭和の頃から自由大学やレモンキャブ等、各種の実践的な取り組みを行ってきた自治体です。中でも『ムーバス』は、今でこそ各自治体ともコミュニティバスを走らせておりますが、90年代においては文字通り全国に先駆けたエポックメイキングな事業であり、当時の自治体関係者から仰ぎ見られる存在であるように感じられました。同市を率いていたのは1983年から6期22年市長を務め、後に衆院議員となった土屋正忠さんであり、その理念と実践を著した『ムーバスの思想』には少なからず影響を受けました。
 松下現市長は、民間企業から都議を経て同市初の女性市長に就任。現在2期目であり、この間「むさしのにじいろ電話相談」「パートナーシップ制度」といった多様性を尊重したダイバーシティ支援事業、また「ひきこもりサポート事業それいゆ」や18歳までの医療費無償化といった市民一人ひとりに寄り添った事業を展開しており、今回のテーマに適った政策を推進しています。
 ちなみに同市の議会は26人中11人、42%が女性議員で、市区議会での女性議員比率は全国8位(平均値17.5%,板橋区は14/46人で30%)。クオータ制を導入するまでもなく女性参画も進んでいる自治体であり、同市の多様性尊重や市民に寄り添った各種取り組みに、学ぶところも多いかと思います。多様性を謳うシンポジウム、是非多様な方々にお聴きいただければ幸甚です。

■    背景と経緯と ⑦ ~シンポジスト:学識経験者~
 最後の4人目となりますシンポジストのご紹介は、東京大学大学院教授の本田由紀先生となります。
 第2部のシンポジウムは、これも毎年、学識の方にご登壇いただいております。今回のテーマである「生きづらさ」は、今日的な課題であり、分野としても専門的に研究してきた先生は少ないのが実相です。
 しかしながらお一人、少々切り口は異なるものの、20年前から日本社会の教育・仕事・家族の関係を研究、そして問い続けているという方が、今回ご出演いただく本田先生です。
 本田先生は1983年に東大入学、同大学院の博士課程修了。昭和の終わりから平成初期、様々なところで男女間の格差が厳然として在った頃です。その中で、ご本人の確たる意志により閉鎖的かつ男社会のアカデミックな世界において道を切り拓いてきたという実績に加え、メディアにおいても折々に発信されている先生でもあります。
 ちなみに今年は1972年の男女雇用機会均等法施行からちょうど50年、という年にあたります。
 本田先生が「生きづらさ」そして「多様性」についてどう捉え、また遠回りであっても「社会を結びなおす」その道のりについてどんな意見や具体案をお考えなのか。
 そんなところについても聞いてみたい、また、お話しいただける、そう考えております。

■    背景と経緯と ⑧ ~まとめ~
 これまで、ご出演いただく5人の方のご紹介を記させていただきましたが、本年はテーマ的にも様々留意し、登壇するかた5人のうち4人が女性となりました。
 多様性も謳う今回、性別に限らず、折り合いをつけながら世代,ハンデ,人種,地域等々あらゆる違いを超えて包含できる・できあえる姿が本当の「豊かな社会」である、そう思います。
【ともに生きる】 古くて新しい言葉ですが、上記の考えに照らしても、またいつの世にも色あせることのない いきいきとした理念です。
 20世紀から続く板橋のボランタリーな活動の源流には間違いなく同ワードがある、そう感じます。
 それぞれいつ何どき、つまずき,転び,一寸先どうなるのかわからない。であるがゆえにお互いは「生きづらい」よりは「少しでも生きやすい」社会になるよう「共助」と「多様性」を尊び、そして「寛容」を心がけたい、そう考えます。
 そして「本を読んで身になること」や「パソコンやTV画面を見聞きして実になるもの」とは別なアングルで、同じ空間を「ともに」し、生で見て聴く講演は、話し手の息づかいや熱量も含めてビビッドに伝わり、であるがゆえに胸中や脳裏に残り、であるがゆえに新たな気づきや発見があり、学ぶということの愉しい部分が凝縮された時間だとも思います。
 コロナ禍もまだまだ現在進行形であるいま、ともあれどうにか21回目となる本事業を開催できることは、出演のかたも含めて関係の皆様のお陰であり、あらためて感謝申し上げます。
 最後に。今回の投稿も8本目となる本稿をもって一旦 区切りとさせていただきます。
 あとは来週11/26の当日、会場にてお待ちしております。
 この機会、是非多くの皆さまにご来場ならびにオンライン視聴いただければ幸甚です。 どうぞよろしくお願いいたします。

■ 第21回いたばし協働・市民フォーラム【事後の御礼】
 先週土曜日(11/26)は標記事業へのご来場ならびにご視聴、誠にありがとうございました。
 第1部の講演は、逮捕・勾留そして有罪率99.9%といわれる刑事裁判のたたかいを経験された村木さんでなければ語ることのできない内容であり、また「若草プロジェクト」で若年女性支援に取り組んでいるがゆえに、そのお話には臨床的な重みがありました。当事者の「相談することのハードル」「ほしかった支援や取組み」、また若者は「電話でなど相談しない」、若者にとっては「ネット上にないものはこの世に存在しないと同じ」等々、公的福祉・各種相談業務が社会の変化のスピードに追い付いていない、そんな感じを認識させられました。
 第2部のシンポジウムでは困窮者への相談業務のあり方や、多様性尊重に自治体が取り組む意義等につき気付かされる部分が多く、松下市長の選挙時の子育て支援を巡る高齢者とのやりとりのエピソードなども膝を打つものでした。
 板橋区においては、本年9月、住民基本台帳から無作為に抽出した15歳から64歳までの区民5,000名に「ひきこもりに関する実態調査」を実施済であり、
https://www.city.itabashi.tokyo.jp/.../679/r41108_ke_2.pdf
同結果は来年1月以降に公表される予定です。
 またパートナーシップ制度(都ならびに23区中10区が導入済)についても具体的に導入検討が進んでおり、
https://www.city.itabashi.tokyo.jp/.../112/r40927_ki_3.pdf
こちらは年内目途に方向性が決定されることとなっております。
 いずれにしても誰ひとり不利益を被らないことを確認しつつ議論を通じて調整をはかり、ひとつひとつ具現化していくことが肝要であり、加えて社会の変化に対応するスピード感や柔軟さも求められているのかもしれない、そんなことを思いました。
 あらためまして第21回の事業にあたりご協力いただきました関係の皆さまに心からお礼を申し上げつつ、引続きご支援等をいただければ幸甚です。
 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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