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ガンダムSEED備忘録

映画版の反響にあおられて今まで軽く見ていたSEED本編48話を視聴したので自分用備忘録
今まで頭が悪かったのか、サイコだったのか、気づけなかったことや感情が多くあった。

物語の設定から描きたいテーマへのつながり

遺伝子操作で優秀な人間になったコーディネーターと本来の人間ナチュラルの争いという人種の争いの構図は各地で大規模に戦争が起こり始めている24年現在より身をもってつらさが浮き彫りになる。

この人種の争いを切り口に、遺伝子操作の頂点として作られた人間であるキラが争いを止めるために続ける葛藤を通じて一人ひとり生きているということ自体が尊いことを描いている。(ように感じた)


フレイ
テーマに加えて、序盤は男女のもつれも絡み、本当にめんどくさい感じがガンダムっぽくてよかった。この20年、SEED Destiniyを経た圧倒的マスター立ち位置のキラしか見てなかったので、序盤のフレイを巡るキラのくずっぷりは面白かった。
水星の魔女はとにかく明るくしてほしくその通りになったが、次の作品はこれくらいのどろどろ加減が欲しいかも。フレイのうざさ成分が必要だ。「(パパの船への攻撃をやめないと)この子を殺すわ!」「コーディネーターだからってあんた本気出してないんでしょう」など、頭が悪いにもほどがあるセリフに真実味を持たせる桑島法子さんの迫真の演技。キラと関係を持ったあたりの描写、特に戦闘中にフラッシュバックするところはキラにとってもフレイにとっても精神的に追い込まれて相互に依存している様が生々しく伝わってきてよかった。互いに良くない近づき方をしたのでキラは絶対に救いたかったし、フレイは最後に絶対謝りたかったはずだがそれが叶わないのがとても残酷。

ラクス
ふわり理想論でおなじみだけど、結局強い言葉っていうのは文脈にのめりこめていると刺さる。「(あなたはどうしたいのですか)ザフトのアスラン・ザラ」と迫るシーンが良かったです。軍の秘蔵最新軍事技術であるフリーダムもエターナルも自由に使える広報担当ってどういうことやねん。イージス自爆から五体満足で生還したキラといい、突っ込み所を抱えているのがSEEDのかわいい特徴だよね。「僕はなんだったのかな。生まれてきちゃいけなかったのかな。」と絶望するキラの厳しいセリフだけでも考えさせられてしまうのに、それに寄り添った強いラクスが印象的。

サイ
「やめてよね」でおなじみ。遺伝子的に勝てないことを直接的に言われる胸糞シーンがあったにも関わらずキラを見捨てず、キラが生還したときの言葉が良かった。「キラが生きてて本当によかった。けど、そんなに違うのかよってどうしても思ってしまう」ここで現代人抱えがちな劣等感もテーマになってるなと。
31話恋人の死に苦しむ女同僚ミリアリアを医務室にて介抱してる所で『浮気相手のキラが死んだからサイの方に戻る素振りを見せる畜生元婚約者フレイ』を怒りもせず正論で諭すと目を離した隙にミリアリアが医務室にいた敵捕虜ディアッカをナイフで襲っておりこれを止めに入るも今度はフレイが銃を見つけ捕虜を撃ち殺そうとするというサイ過重労働回。

ナタル
とにかく厳しくまじめな一番全うな社会人だった彼女が初めてルールを破るのが自分もろともアークエンジェルにアズラエルを打たせるために彼を取り押さえることであり、この排斥論者である物語の悪意たるアズラエルに銃で撃たれまくった状態で戦艦の砲撃に溶かされて死ぬのは不憫で涙を禁じえなかった。正直者は馬鹿を見る、勝ち馬に乗れなかった、の典型。アズラエルの声優さんがガオガイガーの主人公と同じと知った。同じ声でセリフの性質が違いすぎて笑う。フレイもナタルも桑島法子さんということで声優さんの演じ分け力すごすぎる(n回目)

カガリ
ロジック逸脱してて一番よくわからなかった。国家元首の娘なら立場をわきまえた範囲で活動してほしい、とも思ったけど「思いだけで何が守れるんだ」などたびたびキラに諫められており留飲を下げた。一方で「生きるほうが戦いだ」とアスランの自爆を止める最後のセリフはとても良い。

キラ
最後のクルーゼとの問答がすべてかなと思う。つまるところこの争いの根源である遺伝子操作の技術の恩恵を一番受けたキラは戦いの象徴であるとことさら強めるクルーゼであるが「強さだけが僕のすべてじゃない」と社会から割り振られた役割=仕事だけじゃない、という自己肯定はいつの世も大事な心のとどめておきたい概念。「それをだれがわかってくれるのか」とさらに語気を強めるクルーゼもよかった。世界は残酷である。「人の望みが作ったこの戦い」「人が積み重ねてきた業の結果だ」と悲観するクルーゼに「それでも守りたい世界がある」と決着をつけたキラ。アスランとの決闘を経て、達観マスターモードに至ることは理解できる。が、そこに最強の武力があってよかったね。


終わった後の世界の描写がないことが急に終わった感があるが続編で、ということなのか。ゲームで知った気になったけど細かい部分にいろいろな表現があってよかった。ガノタおじさんがめちゃくちゃ叩いた印象があるけどそんなに言うほどかと。女子受けビジュアルばっかという意見もあるらしいけど、むしろ必要あるのか??という過剰な女体描写のほうが気になる。

「僕たちの世界はどうしてこんなところまで来てしまったんだろう」という締めがキラがこの先病むことを示唆していたのか。
21世紀のファーストガンダムを作る、と銘打っていたと大人になってから聞いたが、それに相応しいと感じる、映像、アクション、音楽、ストーリー。現に20年たっても擦られてるわけである。

宇宙世紀のほうが本筋だ!という話もわかる。確かにシャアがガルマを裏切るシーンほどの戦慄を感じたことはないし、カミーユほどの狂気もないけど。
これはこれでいよいじゃん。
ってなるのに20年かかったのかな。みんな。

また加筆するかも。

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