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あたまの悪い王様

ある国にサムという男がいました。

サムは毎朝、仕事場の工場へ向かう途中のパン屋で
パンを1つコイン1枚で買い仕事に向かうのが日課です。

体の大きいサムは、できればパンを2つ買いたいのですが
工場仕事の賃金は少なく1つだけしか買えません。

サムが暮らす国では、あたまの悪い王様が国を統治していて
年中戦争ばかりしていたので国にはお金がありません。

サムだけではなくまじめに働く人みんなの賃金が低かったので
戦争ばかりする王様にみな不満を持っていました。


そんなあたまの悪い王様が暮らすお城では、なにやら家来たちが
王様を説得しています。

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「このままでは国民たちの不満が爆発し、城へ攻めてくるかもしれません
そんなことになったら国民も兵士も大勢けがをして大変なことになります」

「それにこのままでは国民たちが収める税金や食べ物も少なくなって
我々の生活も苦しくなってしまいます、戦争をやめて国を繁栄させる方法を考えましょう」

あたまの悪い王様は立ち上がり言いました。
「あーーー、うるさい、うるさい、うるさーい!
他の国の資源や食べ物を奪うために戦争が必要なんだよ
お前たちのあたまが悪いから国が裕福にならないんだよ!」

家来たちは「また始まった」とあたまを抱えました。

王様はひと通り怒鳴った後、椅子にドスンと座りなにやら考え込み始めました。
家来たちはひそひそ言います。
「王様がああやって考え込むときは、いつもろくなことが起こらない」

すると王様は立ち上がり
「よし、いいことを考えたぞ!国民たちを裕福にする方法だ!
あたまの悪いお前たちに言ってもどうせ反対するだろうから
私の信頼する家来たちだけで実行する、いいか邪魔だけはするなよ」

そう言って王様は、力だけが自慢のあまり賢くない家来を数名呼び
自分の部屋へと行ってしまいました。

それからしばらくたったある日のことです。
お城へものを売りに来る商人やお城で働く者へ
王様はいつもの代金、賃金の2倍のお金を払い始めました。

商人やお城で働く人たちは
「王様の気前が急に良くなったぞ」と友だちへ伝え
その友だちもまた別の友だちへ伝えていきました。

いつしかお城には
お城で働きたい者や、ものを売りたい商人たちで行列が
できるようになっていました。
それでも王様は働きたい者はみんな雇い賃金は今までの2倍
売りに来るものはなんでも買い代金は今までの2倍払い続けました。

すると、サムの働く工場でも賃金が2倍になりました。
「これで毎朝パンを2つ買ってお昼まで力いっぱい仕事ができる」
とサムは大喜び

次の日からサムは毎朝パンを2つ買いお昼まで元気に働きました。

ある朝サムがいつものようにパン屋へ入ると驚きます。
それまでコイン1枚で1つ買えていたパンがなんと1つコイン2枚に
値上がりしているではないですか。

サムはパン屋の店主に聞きます
「なぜ昨日までコイン1枚だったパンがコイン2枚に値上がりしてるんだい?」

店主は答えます
「実は隣の国からパンを作るための小麦を買っているのだけど
その小麦の値段が2倍になってしまったんだ」

「何が起こったんだい?」とサムが聞くと店主は続けます

「隣の国に小麦や作物、木材などを買いに来るうちの国の商人が
みんないつもの2倍買っていくみたいなんだ、うちの国の賃金が上がったからだと思うんだけど、でも小麦や木材など作れる量は変わらないし他の国は今まで通りの量しか買わないから、うちの国だけ値上げしていつも通りの量に戻したんだって。
あと、どういうわけか隣の国の政府がうちの国のコインは2枚でしかとなりの国のコイン1枚に交換してくれなくなったらしい、以前は1枚で1枚に交換してくれていたのに」

「難しくててよくわからないけど、前はコイン1枚で買えてたパンが
2枚でしか買えないなら賃金が倍に増えても前と同じじゃないか」とサムは言いました。

いっぽうそのころお城では大騒ぎが起きてました。

家来たちがなにやら白い紙をもって王様のもとへ走っていきます。
「王様、王様、いろいろな国から銀の板を売ったので
その支払いをしろという手紙が来てます、これは何事ですか?」

王様は言いました。
「なんだそんなことか、そうだよ他の国から銀の板を買ってそれで沢山のコインを作ったんだよ、ほら国民も賃金が上がっただろ
銀の板から作ったコインでほかの国には支払いをすればいいだけの話だ
我ながら頭がいい、はっはっはー」

あたまの悪い王様は自分の国のお金を増やそうと
銀の板からコインをたくさん作ったのでした。

家来たちの顔はみるみる青くなっていきました。
「王様、それは我が国のコインの価値を下げただけですよ
それを証拠に銀の板の値段は以前の倍の金額で請求がきてます
我が国のコイン2枚の価値が他の国ではコイン1枚の価値になってしまったということです」

あたまの悪い王様は理解できませんでしたが
作ったコインで払えばいいと思ってたものがそれでは足りないということは理解できました。

残りのコインはお城で働く者やものを売りに来る商人へ
いつもの倍払ってしまったのでありません。

王様は椅子にドスンと座りなにやら考え込み始めました。

「よし、いいことを考えたぞ!
国民の賃金を上げてやったのだから国民が持っている土地を国に税金として納めさせよう、その土地を他の国に売れば支払いができるぞ」

家来たちは皆あきれ返り
「王様、もう我々は王様に付いていくことはできません」と言い
次々とお城から出て行ってしまいました。
残ったのは力自慢のあまり賢くない家来たち数名だけです。

王様はあまり賢くない家来たちに言います
「よし国民から土地を奪って他の国に売ってくるんだ!」

力自慢の家来たちは国民から力ずくで土地をどんどん奪っていきました。

サムの家も住むところ以外ほとんどの土地を奪われてしまいました。
サムは思いました。
「生活は変わらないし自分の土地まで奪われるなんて
賃金が上がったのに以前よりも貧しくなってるじゃないか」

それから家来たちは奪った土地を
とにかくすぐに買ってくれる国へ全部売りました。


それから暫くたったある日
国民たちがお城に集められました。

お城の広場が国民たちで一杯になってからしばらくして
お城の上に誰かが現れました。
それはなんと、今戦争をしている相手国の王様でした。

集められた国民たちは「なぜ戦争をしている相手国の王様がいるんだ?」
と不安そうな顔をしています。

そいて、相手国の王様は演説を始めます。
「皆さんもう安心してください、この国は私が治めることになりました
前の王に取られた土地も全て返します、今やっている戦争も全てやめます」

「前の王は戦争ばかりしてお金がないのでお金を作りました。
ですが皆さんの生活は変わりませんでした、しかもお金を作る材料代の支払いができなくなったので皆さんから土地を奪い
なんと戦争している先の我々の国に土地を買ってくれと言ってきたのです!
その土地を購入し兵士を住まわしたので国民の皆さんを巻き添えにすることなく簡単にお城を奪えました」

王様は続けます。
「住まわした兵士たちが、この国の国民は皆まじめに働き
よく勉強をしていると言っていました。
しっかりとした政治をすればすぐに裕福な国になるはずです。
これからは私とともに平和で裕福な国にしていきましょう!」

国民たちは、大歓声を上げました。
サムは感動し、いつか王様の下で働きたいと思いました。

今回のことでお金をたくさん作っても、生活が楽になるわけではないということがなんとなくわかったサムはもっとお金の勉強をしたいと思い
工場で働く時間以外をお金の勉強のために使いしました。

それから数年後
王様が言った通りサムの暮らす国はどんどん裕福になっていきました。

あれからお金について勉強したサムはというと
あたまのいい王様からお声がかかり
国の経済を担当する大臣になったそうです。

おしまし

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あとがき

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