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若い農夫の成功者

むかしむかしのお話

ある村に若い農夫がいました。
その若い農夫はアイデアマンで、お年寄りでも
しゃがまず草を切れるようカマの柄を長くしたものを作ったり

1人でもたくさん土を耕せるように
リヤカーを改造しクワが上下に動く農具を作ったりし
村の農夫たちから感謝されていました。

若い農夫の頭には農業道具以外のアイディアもいろいろと浮かんでいて

その中でも自信があったのが
椅子の脚をゆりかごのようにして
ゆらゆらと揺れる椅子を作ったらすごく売れるのではないかというアイデアです。
(今でいうロッキングチェアですが当時はまだありませんでした)

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しかしお金も時間もないので諦めていました。

そんなある日食料の買い出しに都会へ行くと
街の家具屋さんに貼り紙がしてありました。

「ゆりかご椅子の作成と販売をしたいのでコイン10枚を出資してくれる人を10名募集しています、興味のある方は店主まで」

若い農夫は「私と同じ椅子のアイデアだ!」と思いましたが感心したのはそこではなく
人からお金を集めて作るという発想の方でした。

「これはいけるぞ」

若い農夫は急いで自分の村へ帰り農夫たちを集めました。

30人が集まったところで若い農夫は言いました

「ゆりかご椅子の作成と販売をしたいのでコイン10枚を出資してくれないか、その椅子を高く売ってみんなにはお金を返すから」

村の農夫たちはゆりかご椅子に座ってみたい
この人なら作れるかもという気持ちはありましたが
コイン10枚は農夫の1ヶ月分の稼ぎのため誰も手を挙げません。

その時、1人の農夫が声を上げました。
「コイン1枚なら出資してもいいぞ」

これを機に「俺も」「私も」「1枚ならなんとか」と30人全員が賛同しました。

コイン30枚あれば10枚で1ヶ月間仕事を休み
20枚で材料を買う、そうすればゆりかご椅子を5脚は作れる

1脚コイン10枚で売れればコイン50枚になってみんなに返しても20枚の儲けになる!

若い農夫はその日からゆりかご椅子作りに没頭します。

1ヶ月後

若い農夫はゆりかご椅子5脚を持って都会に売りに出掛けました。
しかし、いくら手先が器用といっても
椅子を作った経験はなく
完成したゆりかご椅子は見た目もつぎはぎだらけで、ゆらゆらではなくガタガタギシギシ揺れる想像とは程遠い椅子でした。

椅子も作ったことがなければ街ゆく人に商品を売る経験もなかったので
若い農夫はただできの悪い椅子を並べ黙って座っているだけした。

それでも珍しい椅子だったので何人かは興味を示してくれました。しかし
「こんな汚いし椅子がコイン10枚!冗談じゃない」
「ゆりかごとは程遠いじゃないか、こんな椅子買う奴いないよ」
と、お客さんの意見は散々でした。

そんな中1人の紳士が立ち止まり
「面白い発想だね、よし1脚買うよ」と言います。

若い農夫はこんなできの悪い椅子を売ることが恥ずかしく
「すいません、すいません、ありがとうございます」
と紳士に感謝しました。

結局その1脚しか売れず
コイン30枚の出資で10枚にしかなりませんでした。

若い農夫は村に戻り出資してくれた農夫1人1人に謝ってまわりました。

村の農夫たちはみないい人たちで
「出資したコインは返さなくていいよ、いい勉強になったじゃないか
これからは農業一本で頑張ればいいじゃないか」
と言ってくれました。

若い農夫は
自分にはアイデアを1人で実現できる経験も技術もないことがはっきりとわかり、これからは農業にだけ精を出そうと誓いました。

椅子が売れたコイン10枚は返さなくていいと言ってくれたので
そのコインで農夫のみんなと豪勢なパーティーをしようと思い
休みの日にパーティー用の食料と酒を都会に買い出しに出かけました。

その時、ふと家具屋さんの貼り紙を思い出します。
「そうだ家具を作っているプロなら素晴らしいゆりかご椅子を作れるかもしれない!」

若い農夫は家具屋さんに入り店主に言いました
「ゆりかご椅子のアイデアにコイン10枚出資したいんです」

家具屋の店主はにっこり笑って言いました
「おぉありがとうございます、あなたが最後の1人ですよ
お名前と住んでいるところをこちらに書いてください」

若い農夫は椅子が売れたコイン10枚を
ゆりかご椅子の出資で使ってしまったので
安い食料と安い酒を買い、村のみんなと豪勢ではないけど楽しいパーティーをしました。

それからしばらく経ったある日

若い農夫の家に訪問者が来ました。
それはなんとあの時にできの悪いゆりかご椅子を買ってくれた紳士と
出資した家具屋の店主でした。

紳士は言いました
「おぉ、君だったのか!実はね君が出資してくれた家具屋のオーナーは私なんだよ」

若い農夫は、だからあのできの悪いゆりかご椅子を買ってくれたのかと思いました。
ですがなぜ訪ねてきたのかはわかりません。

紳士は続けます
「君が出資してくれたゆりかご椅子だが、街で大流行していて出資者全員に利益を分配しているんだよ、はいこれは君の分だ」

若い農夫はこれでコイン10枚返ってきたら
あの時できなかった豪勢なパーティーでもするかと考えていましたが
なんと渡されたコインは100枚でした。

「え、こんなにもらえないですよ」と若い農夫が言うと紳士は
「何を言ってるんだ、そうだ君から買った椅子も作るのに参考になったからもう30枚支払うよ」

といって130枚のコインを手渡し
「では、私も忙しいのでこれで失礼するよ」と去っていきました。

若い農夫は何が起きたのか理解できずにいましたが
ふと頭の中である思いがよぎりました。

最近村の農夫たちが高齢になってきていたため農作業を楽にできる
自動車のような農作機が作れたらとういうアイデアがあったのです。

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ですがその当時、自動車は一部の大金持ちしかもっていない大変貴重なものでした。

でもコイン130枚もあれば自動車が買えるかもしれない、、、
しかし私は自動車を作ったこともましてや見たこともない。
ゆりかご椅子と同じ失敗はできない。

何日か考えに考え
若い農夫はゆりかご椅子の時に出資してくれた30人に1枚ずつコインを返しました。

みんなは「いらないよ」と言ってくれましたがゆりかご椅子が都会で大流行していることを話し受け取ってもらいました。

そして残りのコイン100枚を持って
この国で1番大きな自動車会社に行き
自動で動く農機具の作成と販売をするため出資を募ってほしいと説得しにいきました。

自動車会社のオーナーは言いました
「面白い話だけど1台作るのにコイン100枚は必要だし、失敗の可能性も高い
それに出来たとしても農夫が購入できる値段の商品ではないと思うよ」

若い農夫はそれもそうだなと思いましたが勢いが止まらず
自分でも考えもしないようなことを言ってしまいました。

「私がコイン100枚出資します、失敗しても返却はいりません。
もし断るなら2番目に大きい自動車会社にお願いしに行きます」

それを聞いたオーナーは苦い顔をして
「わかりましたよ、失敗してもしりませんからね」
と渋々承諾してくれました。


それからしばらくして
若い農夫の家へ自動車会社のオーナーが訪ねてきました。

オーナーは
「実はあの自動車型の農機ですが、作物を今よりたくさん作れるというので
貴族の方たちがこぞって購入し自分の領地の農夫に買い与えてるんです。
ですので利益をお返ししようと思いまして、コイン1,000枚でどうでしょう」

若い農夫は言います
「コインはいらないので 自動車型の農機を私に何台かください」

オーナーは
「わかりました、貴族には1台コイン200枚で売っているのですが
あなたには特別に10台差し上げます」

若い農夫は村の農夫30人に10台の自動車型の農機を与えました。

村の農夫たちは交代で使用し作物が前よりたくさん取れるようになり収入が増えていきました。

ある日 村の農夫たちが集まって若い農夫にこう言いました。
「あんたのおかげでみんな収入が増えたので
自動車型農機の使用料として毎月コイン10枚を払わせてくれ、そうすればあんたは働らかなくても暮らしていける」

若い農夫は断りましたが
村の農夫たちがどうしてもいうので
毎月コイン10枚をもらうことにしました。

ですが若い農夫はそれからも働き続け
毎月のコイン10枚には手を付けず、おじいさんになるまで農業を続けたそうです。

おじいさんになって働けなるころには
村一番の大金持ちになっていましたとさ。

おしまい。

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