見出し画像

天使のいない12月 プレイ後記 ※ネタバレあり

久しぶりにブログを書いていきます。
前回は某コンテンツの某キャラクターを批評家っぽく批評してしまい、身内にゲラゲラ笑われました。
実はあの後も同じコンテンツの某キャラクターの批評文章を書き連ねていたのですが、いくら自分のブログとはいえ連続してアンチテイストはいかがなものかと思い、結局破棄しちゃいました。気が向いたらまた何か書こうかなぁ。

そもそもなんでブログを書いているのかと言えば、情報の取捨選択を読み手に押し付けることができるからです。
ツイッターとかだとただのTL汚しになりますからね。
結局、興味ある人だけが読んでくれたらそれで嬉しいので。

さて、今回はエロゲの紹介というか感想を綴っていこうと思います。
タイトルはこちら!

Leafより2003年発売「天使のいない12月

だいぶ古いタイトルで、ToHeart2が生まれるまでのLeafを支え続けた作品です。

もう夏だし鬱ゲーがやりたい今日この頃。
適当なタイトルを探していくうちに、この作品のキャッチコピーが刺さりました。

『願ったのは、束の間の安らぎ――。――叶ったのは、永遠という贖罪』

めちゃくちゃカッコよくない?

DL販売が無かったので、秋葉原のトレーダーで購入。
税込1800円なり。やっすい。
動作するか不安でしたが、Windows10でも動いてくれました。

あらすじ

人間関係は軽く薄く小さくがモットーであり、
なにごとにもいい加減で投げ遣りな生活を送っている主人公。
特にやかましい妹がいるせいもあって、女は面倒なものだと思っていた。
そんな主人公と違い、友人は女の子との恋愛に時間を費やし、
肉体関係になることに至上の価値を求めているので、
主人公にも恋愛を勧めてくるのだが、まるで聞く耳を持っていない。
ところが、ある女の子とのささいな言い争いから、
なりゆきと興味本位だけで、その場限りの関係を持ってしまい・・・・・・。

プレイ所感

めちゃくちゃ面白かった…!
これが名作として語り継がれていないのおかしいだろ。
今までプレイしてきたエロゲの中でも5本の指に入ります。
中古ショップで埃を被らせておくにはあまりにも惜しい作品です。

鬱ゲーだと思ってプレイしましたが、そこまで陰鬱な雰囲気ではありませんでしたね。例えるなら、みなみけ~おかわり~くらいの暗さです。
まぁもちろんギャグは皆無ですが。

本作のテーマは「愛情と愛欲」、突き詰めれば「心と身体」で一貫しています。物語の中心に終始鎮座しているのがセックスであり、まさに18禁のエロゲでないと描き得ない作品です。

当然ですが、ハッピーエンドはありません。タイトルにもあるように、救済とか祝福の象徴である天使がいない訳ですから。
しかしどのルートも新しい物語へ続いていくような終わり方で、主人公とヒロインのその後を夢想せずにはいられません。

各ルートのラストシーンに必ず雪が降るんですが、これがまた見事な演出になってまして。作中で12月が終わろうとしているなか、空から白いふわふわしたものが舞い降りてくるんです。
Leafは雪を使うのが本当に上手いですよね。アルバムの空白を埋めてくれそう。

一つの特徴として、全体的にボリュームがだいぶ少な目になっています。各ルートが3時間くらい。テキストをゆっくり読む派の私でもあっという間でした。
間延びした展開が無いため一気に読み進めることができます。

もう一点特筆すべきはヒロインの髪色。カラフルでなはく、全員黒っぽいんですよね。
制服も奇抜なものではなく、男子は学ランで女子はよくあるセーラー服。
全体的に寒色系でまとまっていて、作品の雰囲気を一切邪魔していません。
これは個人的にかなり嬉しいポイントでした。
赤髪が闇を抱えてても、その髪色で鬱は嘘でしょ笑とか思ってしまうので。

ただ一つ残念な点は、キャラクター背景の説明不足。これに尽きます。
各ヒロインの過去方面への掘り下げがほぼ無いため、置いてけぼり感を食らう場面が幾つかあります。特に透子としのぶの関係は幼なじみにしても異質だったので、そこだけは詳しく知りたかったなぁ。
その意味でも、出来の良い短編集を読んでいるかのようでした。

以下、主要キャラの紹介と、ネタバレ全開で全ルートの内容を羅列していきます。あまりいないとは思いますが、自分の手でプレイしたい方はブラウザバックを。

木田時紀

主人公。姓名変更可。
無気力かつ厭世的。よく授業をサボり、屋上でタバコを吹かす不良生徒。
ルートによって外道だったり妙に優しかったり無気力だったり様々な面を見せるが、行動原理は全て利己的な衝動によるもので一貫している。何事もギブアンドテイクを好む。
一見クズ主人公だが、ヒロインたちに対して決して嘘をつかないという点で誠実。
「愛してる」なんて間の抜けたセリフは一度も吐かない。
雰囲気に呑まれて閉口することが少なく、言いたいことはキッパリ言うし、行動力もあるため好印象。

エロゲにしては珍しく兄妹仲が非常に悪い。妹の恵美梨は心の底では時紀のことを嫌っていないが、時紀は割と本気で恵美梨を嫌っている。「エミ公」と侮蔑的に呼称し、消えてほしい、あるいは殺したいと考えている。

恵美梨との口喧嘩で実妹を口汚く罵った後、「くだらないことほざいてないでメシ出せ」と吐き捨て、出された食事に「手抜くなよ」と文句を言った。畜生すぎて笑う。

物語の始めに、ちょっとした言い合いがきっかけで栗原透子と一時的に肉体関係を持つことになる。

木田恵美梨

主人公の妹で、毎日のように兄妹喧嘩をしている。
両親多忙につき、家事を一手に引き受けている…というありがちなやつ。
主人公のことは「お兄ぃ」と呼び、喧嘩の際には「ぶぅ~!」「〇〇じゃないもん!〇〇だもん!」と怒る。かわいいかよ。

エロゲ妹にあるまじき口の悪さだが、性根は優しいので兄の影響によるものだと見て間違いない。

攻略対象ではない。 

攻略対象ではない。

以下、攻略順。全5ルート。

葉月真帆

主人公の悪友ポジにいる功という男の、彼女。時紀とは以前から面識がある。
攻略ヒロインで唯一破滅願望を持っていない普通の娘。

功はセックスをしたいと思っているが、真帆はその必要性を感じていない。そしてお互いその気持ちに気付いている。
なんだか高校の保健の教科書に載ってそうなカップル像。
心と体の繋がり、どちらを優先するか?あるいはどちらも交わらせるか?
そんな悩みに揺れ動くなか、真帆は時紀と透子の肉体関係を知ってしまう。
時紀は、セックスは簡単でドラッグより健康的だと、シンプルに捉えている旨を話す。

時紀「欲望のはけ口でしかないよ。結局、お互いに。だから簡単にできる」

真帆はそれを軽蔑したりせず、ひとつの形として受け入れる。

時紀は、功と喧嘩した真帆に迫られセックスする。

真帆「セックスで手に入るものなんかひとつもない…」
真帆「あるのは、あたしの心だけ」
真帆「望んだものは心に思い描いたものだから、きっとどんなに望んでも手に入らないんですね」
真帆「だから…だから…。みんな、誰かをスキになるんですね。初めから失われたものだから、取り戻したくて、みんな、誰かを好きになる」

拗らせ童貞には刺さる言葉だなぁ…。

功と真帆が破局し、真帆と時紀がお互いに分かり合うこともないと悟るとクリア。

麻生明日菜

時紀のバイト先の先輩で、女子大生。
明るい性格で親しみやすい。面倒見が良く、他のルートでもよく悩みの相談に乗ってくれている。

時紀を気に入り、猛アタックしてくる。
流されるままに交際を始めるが…いわゆるメンヘラちゃんでした。
発売当時はメンヘラなんて言葉なかっただろうし、意外と新鮮に映ったりしたのかな。

両親の離婚もあり、思春期に十分な愛情を受けられず。親戚夫婦の家に入り浸っていた。
学生時代は寂しさを紛らわすために円光を繰り返しており、学校も中退した。

明日菜「優しく抱きしめてあげて、優しさで満たしてやれば、きっと簡単にあたしに溺れてくれる」
明日菜「それとも、優しくて、楽しくて、セックスが気持ちいい以外になにか必要だったものがあったの?」

事実を知った時紀は、透子との肉体関係に逃げ帰る。
その一方で明日菜を失うことに耐えられず、最終的に透子を捨てる。

時紀「俺は、本当は俺のことしか想っていない。俺は心の弱さを覆い隠そうと、明日菜さんを抱きしめようとしている」
時紀「彼女が喜ぶ顔さえあれば、俺の心は痛まずに済むのだから」
時紀「それは恋でもなく、同情でもない想い…」

刹那的な感情でお互いを満たす決意をするとクリア。

榊しのぶ

時紀と透子のクラスの委員長。周囲からの人望が厚い。透子とは幼なじみでいつも一緒にいる。
透子を何よりも大切に想っており、透子をぞんざいに扱う時紀に対してしばしばビンタを浴びせる。
強気な性格で正義感が強い。

透子の言動を不審に思っていたしのぶは、ある日時紀と透子がセックスしているのを目撃してしまう。止めに入ろうにも動けず、ついには自らも昂ってしまう。

親友が犯されているのを見て興奮した最低な女であると自らを卑下し、罪の意識に苛まれていく。
自暴自棄になったしのぶは、時紀に自分を犯すよう要求する。
時紀自身も衝動を抑えきれず、しのぶとセックスしてしまう。
望み通りに犯されても罪の意識が薄れることはなく、しのぶはリストカットを繰り返すようになる。

しのぶ「身体が自分のモノっていう気がしない…。重いの…まるで水の入った袋みたい…」
しのぶ「薄気味悪い…ぶよぶよしてる…これが私の身体なの?」
しのぶ「私、血と肉の入った袋でしかないんだわ…」

自傷行為をやめさせるべく問い詰める時紀に対し、しのぶはある提案をする。
それは、体の代わりに心を痛めつけること。すなわち、時紀に犯され続けることだった。

この作品の攻略ルートの中で唯一、時紀がはっきりとヒロインへの思慕を自覚する。
時紀はしのぶを大切にしたいと伝えるが、しのぶはそれを拒み続ける。
しのぶは時紀の心を欲してはいなかったのだ。

しのぶ「心なんか…心なんかなければいいのに…」
しのぶ「身体だけになってしまえば、もうこんなつらい想いなんか二度としない。抱かれてよがるだけの女になってしまいたい」

しのぶが心を捨て、時紀との繋がりに逃避すればクリア。

須磨寺雪緒

同級生で、バイト先が同じ。物静かだが人当たりが良く、博識で成績もトップクラス。
昔はコンクールで賞を取るほどピアノに打ち込んでいたが、ある日もう意味がないと悟り辞めてしまった。今はアコースティックギターを爪で弾いている。
狂人。希死念慮持ち。

天いなで1番問題のヒロイン。現在もなお一部でカルト的人気を誇る。
このキャラにしか出せない、独特な魅力を持っている。
外面は美少女だけど、薄皮1枚めくると猛毒が詰まってる感じ。ゾクゾクする。
まず声に驚愕した。透き通っているのに重く響く感じがする。
井村屋ほのかさんが声を当てているが、完璧なハマリ役だと思う。
それにしても初登場の第一声が「殺したいの?」はヤバすぎる。

こんな化け物と実際に会話する時紀は、一発で精神をやられていた。
初対面では数分間話すだけで発狂していたし、トゥルーエンド以外では雪緒から逃げるために学校を辞めているほど。

雪緒に漂う死の香りにあてられた時紀は、まともな思考ができなくなっていく。
ついには、雪緒の生を実感し、自己を繋ぎとめるために雪緒とセックスする。
雪緒は初めから心と体が乖離しているため、ためらいなく時紀へ処女を捧げた。

雪緒「それにセックス自体は嫌いじゃないかもしれない」
雪緒「だって、セックスすれば、本当の自分になれる気がするから」
雪緒「須磨寺雪緒なんて名札のついたわたしじゃない」
雪緒「身体と本能だけのプリミティブなわたし」
雪緒「だから、嫌いじゃない」

雪緒「どうして…どうして心なんかあるの?」
雪緒「心なんかあったら不幸になるだけじゃない…」
雪緒「だって、なにもかも…この世界だって、記憶だって…永遠じゃないもの…」
雪緒「いつか、みんななくなってしまうじゃない…」

健康、家庭、生活、友人…なにかに問題を抱えているわけではない。
人生に絶望しているのではない。
ただ、生きるのを辞めようとしているのだった。

個人的に一番好きなルート。

雪緒と一緒に飛び降り自殺をするとクリア。

栗原透子

本作のメインヒロイン。
常におどおどしており、頭が悪く行動もトロい。しのぶ以外に交友関係がない。いじめられてはいないが、クラスメイトからは笑い者にされている。自己肯定感が限りなく低い。

透子「あたしだって、あたしだって生きてる理由くらい欲しいよ。誰かに必要なんだって言われたいよ」
透子「だから、木田くんに求められたとき、ホントにうれしかった」
透子「求めることも求められることもうれしかったから」
透子「それで十分だった…」
透子「どうやったら、心がつながるの…?」

時紀も透子も、お互い身体だけ求めていれば十分なはずだった。
しかし、回数を重ねれば重ねるほど、違和感が募っていく。

時紀「栗原の中は温かくて、いつもと変わらない快楽を俺に与えてくれていた」
時紀「なのに、こみ上げてくる感情は憤りや苛立ちしかない」
時紀「快楽をつむぎながら、その作業は単調で苦痛で…なにも生み出してくれない」

愛情があるからセックスするのか?セックスがあるから愛情が生まれるのか?
セックスという身体と心に直に響く快楽に惑わされているだけなのか?

そもそも時紀と透子の間には身体しかない。
2人が持つ想いが本物でも、できることはお互いの温もりを求めるだけ。
それすら感じなくなったとき、時紀と透子の関係は終わってしまう。

本作で、ひとつルートを終えるたびに必ず現れるメッセージがある。
それは永遠でなく 真実でなく ただ、そこにあるだけの想い

想い出という形をつくるために、2人は初めてキスをする。

グランドエンディング。

終わりに

この作品、私にとっては神ゲー以外の何物でもありませんでしたが、合わない人にはマジモンのクソゲーに映るんだと思います。それくらい人を選ぶゲームであることは間違いありません。

この作品を一番楽しめるのは、間違いなく捻くれた中高生だと思いますね(笑)

思春期の少年少女が抱える暗い感情と思考をここまで鮮やかに描き出したのですから、多感なお年頃にはたまらなく刺さるはずです。

特に、自己存在と世界の関わりの無意味さについて、自殺に希望を見出した雪緒ルートは圧巻でした。

やっぱりエロゲ―は18まで。

中二病を掘り返すわけではないですが、私はそれこそ中学の頃から暗い話やビターエンドが大好きで、それ系の本をよく読んでいた気がします。

この記事を書いていくうちに、中学2年の時に出された読書感想文課題に「ナルキッソス/片岡とも著」を選んでいたことを思い出しました。中学時代の俺、伸びすぎだろ…

(「ナルキッソス」超有名なフリーのノベルゲーム。死生観がテーマ。1巻完結のラノベにもなっていて、こちらも非常におすすめ!)

また12月にでも再プレイしようと思います。

何かおすすめの啓蒙させる系ゲームがありましたら、是非教えてください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

https://www.youtube.com/watch?v=cUvpHKICDAs


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?