現代の超剋 - 線の構造と生命性      ①バイオハイブリッドとエスプリ

拝啓 スプツニ子様  -貴君は何に問いを立てますか?
線の構造と生命性     1 バイオハイブリッドとエスプリ

「金も時間もかかるし、かなり外国語だけど本当にミラノに一緒に行く?」
単に自己の感性、インディビジュアリズムに馴染まないというだけで誰かと遠
くへ行くのは億劫であった。

それでも先刻送られてきた航空機のチケットは机の上にあり、断る勇気が自分の中にはない。何より、旅行する理由や目的地が有るか無いかを感じていた自分が一体いつまで存在していたか、それすら分からない。

ゲーテも似た年齢でイタリアに逃げた。今はウンベルトやモランディがいるからと
妥協して荷造りをはじめ、せめて行くならここには無い太陽を見つけたいと1冊の本(ΠΛΑΝΗΤΕΣ; 幸村誠)をスーツケースに投げ入れる。

私たちは少なくとも漠然と、自分たちが無限の、身に迫るような、錯綜した、
巨きな何ものかのなかに浸っていることを識っていた。
それがどういう名前なのかは分からなかったが、しかしそれはぎざぎざになった雲縁や、雄鶏の夜の叫び、草のなかで風がうなる声と関わりのあるものであった。
この蠢き、めぐる環境に支配され、その偶然のうちに投げ出されていることを識っていたのだ。

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科学技術の発展が進み、他生物の生命機能を人間に応用するバイオハイブリッドの研究が盛んである。竹内昌治教授(東大生研)の講演を聞いた際、その応用範囲の広さに驚くと同時に、限られた生物種からさらに研究を拡げる可能性を検討した。

身体構造として骨格、関節、筋肉などを有する動物種は、その機能を人間に取り入れる(ハイブリッドする)上で共通性を見出しやすい一方、地球上の多細胞生物の99%を占めるのは植物である。(Stefano Mancuso, 2015)
講義でディスカッションされた“知性”(問題を解決する能力)の存在は、植物において古くから議論され、プラトンやダーウィンはその魂や知性を擁護したことで
知られる。
実用例として、植物生命からその機能を模倣する研究があり、動的平衡・相互作用・成長・再生といったデザインを応用した構造物が作られてきた。(日本建築学会、2018)


遺伝学の観点から分類距離が近い種の応用が先立つのは妥当だが、研究開発が進み他の生物種を議論する必要が出た際の有効な選択肢の一つに植物を提案する。
植物の生命機能をどう人間にハイブリッドさせるかの実用化には時間がかかるであろう点も考慮し、その現在地として‘自然+人間’のデザインが発展している例である
2018年ミラノで行われたファッションウィークのルックを取り上げることで、ハイブリッドする行為の精神性を眺める。


※デザインされたダンス(若しくはランウェイなど)は非言語空間に魂が宿ると信じ、1人のディレクター(Paul Andrew by SALVATORE FERRAGAMO)の解釈のみを付記し、以降は画像のキュレーションになることをご容赦いただきたい。出典はELLEでYoutube等でも映像を確認できる。

●生態社会学 植物を例にとって
光合成という代謝機能を持つ植物は、外部から酸素や日光を吸収しエネルギーとする。例えば光エネルギーの獲得にはクロロフィルが重要な役割を果たすが、日光照射量を最大化するために植物は枝の成長部分を調整し、種・個体によって形状を変化させる。
分かりやすいのが樹木で、その樹冠の形状や層構造は、その個体のエネルギー吸収の効率化の履歴を反映している。 (10,11,13)



    10 11 13

身近な自然を見てもわかるように植物は群落を形成し、その生物多様性を維持する。群落(社会)内では日光の獲得しやすさが高さ・層や水平方向への空間的な拡がりによって異なり、その種や個体の寿命の2クラス(陽樹/陰樹)で有意差があることが報告されている。(隅田、1996)
そして他個体との物理的な位置関係上、より多くのエネルギーを求め左右非対称な構造を取る個体で群落が維持される。(14)
このマクロ部分の樹冠で見られる最適化はミクロ部分の枝の生え方、葉の分布、形状に影響を及ぼす。(15,22;テクスタイル)


      14 15 22

この他に、外敵との接触表面としての樹皮パターンや、樹冠の風や重力への応答など人間社会学と比較し得る作品をまとめたのでご覧いただきたい。



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Prada

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