現代の超剋 - 線の構造と生命性      ②全地球システムにおける新自由主義の動態

拝啓 スプツニ子様  -貴君は何に問いを立てますか?
線の構造と生命性     2 全地球システムにおける新自由主義の動態


何かを求め、行き着いた先に来し方を振り返り、
道程が一筋だったか分岐していたかも今となっては思い出せない。
ゆらゆら漂っていた断片的な記憶に通底していたのは、’重力’や‘聖性’に見間違う
何か一瞬の煌めきであった。

「今度はどこに行くの?」
大して親しみの無い顔見知りに聞かれる上に、血縁や婚姻を契ったパートナーにも同じ様に答えるしかない社交辞令に閉口した。
次という時空のモーメンタムがどこにあるのか逡巡し、挨拶のようにアフリカとだけ嘯き、「出来るだけ遠いどこかで、例えばサーフィンとかしてくたばりたいだけなんだけど」と答えることに辟易する、変わらぬ自分に飽きて目を反らす。


Ludovico Einaudi Elegy of the Arctic (Greenpeace)
https://www.youtube.com/watch?v=2DLnhdnSUVs

プロメテウシズムの行き着く先はどこなのか。
それを媒介する現行の通貨は何を守り、何を失ったのか。

総体への思慮は未来の支持者で、正しく理解された利己主義の内の正しい理解をもたらす。それが市民社会の基盤を強くし、皆が共有しているが断片化されてしまった利益の再統合を可能にする。

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プロテスタンティシズムの倫理が近代資本主義成立に寄与したように、日本の急速な経済発展には儒教思想の貢献が指摘されている。(曾暁霞、2019)
現代思想としてポスト-ポストモダニティの議論が盛んになる中、プロメテウシズムへの反駁が1つの重要な話題になりつつある。

経済格差の緩和を目指す試みの1つの例として仮想地球プロジェクトEXAがある。
仮想通貨を扱う事業会社タイムバンクの代表である佐藤航陽氏は現行の通貨を1とした場合、−1となる経済圏の可能性を検討したいという理念で衛星画像から得られる電力消費のデータにブロックチェーンを掛け合わせた開発を行なっている。
しかし電力消費データが、生産消費といった単純な経済活動のみに依拠していると
いう仮定は、極めて限定された条件下での議論となる(所謂ミクセル問題)。
そこで、単に都合の良いファクトを援用する形式を補足する考えとして、経済システムの相対的な位相を検討する。

議論を始めるにあたり佐藤氏の主張を拡張する。佐藤氏が講演で話した図式は以下であったが、
+1(経済活動) + -1(逆経済活動) = 0(経済格差が是正された状態)
実際のプロジェクトでは、、重み付きで
   a(+1) + b(-1) = 0 …①
議論がなされていると推察する。さらに、経済圏に閉じたシステムで電力消費のデータと所得のピクセルデータで一定程度の相関が取るのも可能ではあるが、
  a(+1) + b(-1) + c(±1) ≒ 0 …②
と解釈項を入れるのが現実の経済圏中心の通貨制度を反映しやすいと考える。

この図式の考察として以下、二点を議論する。
(1) ‘ゼロサムゲーム’にはならない (①)
まずは a(+1) + b(-1)=0を議論する妥当性を検討するが、二項対立としてa, bの係数の重みを議論して、その和を0と結論づけるのは難点がある。
通貨を他者との交換履歴を記録する会計システムだと定義するとテクノロジーが発展しても、個人の主観を排除しきれないため、その履歴の総和が0となるシステムに現行の通貨はなっていない。
信用の管理を行う発行体の体制が異なり“為替”(交換レート)に歪みが生じる問題を解決する方策としてブロックチェーン技術が注目されたが、政治的、技術的な問題がありクリティカルな代替策にはなり得ていない。


(1’) データを採取、可視化し係数を調整するデザイン
左辺で重み付き多項式を議論する行為自体は、ブロックチェーンや衛星画像の解析技術と高い符号を示すと考える。テクノロジーを用いたデザインで通貨を規定する試みとして妥当性があり、今後の推移に注目したい。


(2) 通貨や市場思想が取り込んだ要素と潜在可能性 (②)
そして、+1と-1という経済圏で閉じた議論の限界が指摘されている。
物々交換のメディアから発展した通貨は、アダム・スミスが導入した見えざる手
に代表されるように、労働の概念を取り込んできた。
②で付記した様に、通貨はメディアとしての性質、そして規制が少ない、もしくは追いついていない現状から多分に柔軟性が内在されている。
したがって、(1)の重み調整のデザインと同様に、解釈項という外部性を取り込む可能性を検討するデザインが可能かつ重要である。

その例として炭素価格があり、取引可能な二酸化炭素排出枠の設定(キャップアンドトレード)か、二酸化炭素排出への課税(炭素税)に分類される。
炭素価格関連の政策にアプローチする際、「全世界の参加」「特定の年のすべての利用において限界費用の均等化」「時間に伴う政策の厳格化」の三原則に基づくことで、国際的に足並みを揃えて対策を進めることが可能となる。

この取り組みは、②式の経済活動(a)とのバランスの取り方が重要で、(1’)で指摘したテクノロジーによる係数調整というデザインが今後求められる。

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