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映画『ナイトクローラー』

“ナイトクローラー”はミミズ、夜の中をはう生き物。

米国で公開週の興行収入1位に輝き、さまざまな賞にその名前が上がった本作。ロサンゼルスを舞台に、ルイス・ブルームという盗みを繰り返し、まともな職に就かず、テレビの明かりだけの薄暗い部屋で、友達も家族もいない暮らしをしている男がいた。

ある日、交通事故の現場で悲惨な事故の映像を撮影しているナイトクローラーと呼ばれるものに出逢う。事故、火災、犯罪などの映像をテレビ局に売っていると聞き、ルイスは自らがナイトクローラーになることを選択する。

劇場で去年公開されていて、『マイ・インターン』と『ナイトクローラー』のどちらを観るか悩んで、自分じゃあまり行かないであろうタイプの『マイ・インターン』を選び、結局TSUTAYAで準新作になるまで待っていたら、今頃になって、ようやく観ることができた映画だ。

なので予告編や前評判は目にしていたのだが、そこでよく見かけた「胸くそ悪い映画だ」というフレーズに騙されて、ちょっと先送りにしていたのだけど、実際はそんなことなく、最高に映画らしい映画だったのだ!

例えば、犯罪の現場(死体)を躊躇なく撮影していったり、特ダネのニオイを嗅ぎつければ車を爆走させたり、平気で嘘をつく行為は、映画そのものでありクリエイターの本質であると言えるので、観ていて道徳観の欠如を感じながらもエキサイトしてしまうのだ。

ルイスは警察や同じ業種のライバルよりも先に、現場にたどり着いてカメラに収めなければいけないので、道徳観や善悪の判断という時間のかかる思考はしない。

そしてロサンゼルスの「夜の闇に埋もれたネタを世間にさらす」ジャーナリストを描くというのが、タイトルの“ナイトクローラー”にピッタリとハマる。

カメラで何を映し、またカメラをコントロールする人間は何を求めて動くのか?ここ数年で普及したスマートフォンのカメラには、画質がより鮮明になり、容量も増えたことで、誰もが日常から「特ダネ」を引っ張り出してくることができるようになった。SNSを使ってジャーナリズムを行うことができる。

それ故か、主人公のルイスは罰を受けないのだ。

ダン・ギルロイ監督は59歳にして、初監督作品で今後ものすごく注目できる人だろう。兄のトニー・ギルロイが脚本を書いて、双子のジョン・ギルロイが映像編集をしているという、テーマもイカれたキャラもストーリーも映像も、こんなに1つにまとまっている映画を観れることは、背筋が伸びるおもいだ。

ルイスを演じたジェイク・ギレンホールは、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品にも度々出ている俳優なので、『ナイトクローラー』が好きな人は、ぜひそちらもチェックして欲しい。『プリズナーズ』と『複製された男』など



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