「ウェブアプリを用いた位置・速度・加速度情報の取得と観光情報配信の試み」を読んだ感想

この記事は、岩手県立大学 Advent Calendar 2017の6日目の記事です。

5日目に引き続き、最近読んだ論文の感想をなるべく平易な言葉で1000字以内で書いていこうと思います。

今回は、「ウェブアプリを用いた位置・速度・加速度情報の取得と観光情報配信の試み」(青池ら, 観光情報学会第16回研究発表会 講演論文集, 2017)です。

[概要] (論文より引用)
本研究の最終目標は、スマートフォンの各種センサーで取得できるデータの即時的な解析を通じて、利用者の観光行動を惹起できる可能性のある「散策行動」を自動判別することで、適時に観光情報を通知する仕組みの構築である。筆者らは今回、位置情報と速度情報を用いて判別された利用者の散策状態に従い観光情報を提示し、利用者にその配信時機を評価してもらうウェブアプリを開発した。本報告では、埼玉県川越市と神奈川県横浜市で被験者実験を行い、(1)スマートフォンで取得できる位置情報がGPSロガーと同等の精度を確保できるか、(2) GISでの事後的な散策行動判別法と同等の散策行動判別がウェブアプリ上で即時的に実現できているか、(3)ウェブアプリによる観光情報の配信時機が適切であったかを検証した。(1)と(2)に関しては概ね良好な結果を得た。(3)については被験者によって評価が異なっており、今回の被験者実験で取得している加速度やジャイロセンサーデータを含めた解析を通じて改良を図る予定である。

感想

※解釈が間違っている可能性もあるので、正しくは原著を読んでね!

スマホの各種センサーで取得できるデータをもとに、「散策中」という状態を判別したいというのが目標のようだ。たしかに、観光アプリは多々あるものの日常生活圏内でばんばん観光情報が困るので、観光中であるときにのみ情報をPushしてもらいたい。

著者らのこれまでの研究によると、「散策行動中は歩行速度が当該個人の平均に対して8割程度とやや低速の状態が一定時間以上継続し、途中で立ち止まっているという特徴」があるそうだ。

この研究では、上記の条件を満たすときにのみ「散策中」と見なし、付近の観光情報を配信するようにし、その時機が適切であったかを利用者に「いいね!」「いまじゃない!」の二択で評価してもらう設計になっていた。

その結果、75% が適切な時期に配信されたとのこと。ただし、これはいわゆる適合率であり、再現率は考慮されていなかったので、f値のような指標が必要かなとは思いました。

この論文を読んでいいなと思ったところは、失敗した点、問題となった点がきちんと記載されていることでした。参考になります。

いくつかあるので紹介すると次のとおりです。

1. OSや機種によって、ブラウザがアクティブのときしか位置情報が取得できずデータ欠損が一部被験者にあった

2. 過剰に散策行動を判別していた

3. スマホでの速度取得には限界があること。WiFi 等をベースに位置情報を推定する手法では、速度情報が取得できず、有効な入力にできなかった。2点間の位置データで推定もできるが精度が悪い。

4. 歩行速度の個人差の学習が必要なこと。

今後は、加速度センサーやジャイロセンサーを使って精度向上を試すとのことで次の結果に期待したいです。あとウェブアプリではなくて、スマホアプリのほうが 1, 4 のあたりの解決に向いているかなと思ったけれど、ウェブアプリにあえてこだわっているのか気になりました。

(約780文字)


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