「周辺情報掲示による観光スポットへのセレンディピティ誘発効果の検証」を読んだ感想

この記事は、岩手県立大学 Advent Calendar 2018の1日目の記事です。

Advent Calendar 2017 では、「アドベントカレンダーで穴が空いているところに最近読んだ論文の感想(成果を応用することによって具体的にどんなことができそうかという視点を中心に)をなるべく平易な言葉で1000字以内で書いていこうと思います。」ということをしていたのですが、2018でもそのようにしたいと思います。

さっそく1日目から使うと思いませんでしたが、ちょうど1年前に書いて未公開だったものが1記事あったので公開します。

さて、今回は、「周辺情報掲示による観光スポットへのセレンディピティ誘発効果の検証」(高野ら, DEIM Forum 2017)です。

[あらまし] (論文より引用)
本研究では地図インタフェース上での観光スポット探索に焦点をあて,どのように情報提示することで,ユーザにとって新たな観光スポットへの興味を誘発できるか検証する.具体的には,地図上に表示されている領域周辺の観光スポット情報を提示することで,周辺スポットへの興味を誘発するインタフェースを試作し,その有用性を検証する.評価指標としては特にセレンディピティに着目している.セレンディピティとは「偶然によって思いがけず価値あるものを発見する能力」という意味である.つまり,提案システムは,ユーザが地図操作というインタラクションを繰り返すことで,本来目的としていなかった思いがけず魅力のある観光スポットを発見していくというセレンディピティ的な効果を誘発する狙いがある.評価実験では,三つの異なるタスク(T1:目的地として一つのスポットを指定,T2:目的地として二つのスポットを指定,T3:目的地として地域を指定)において,Google Maps インタフェース(GM)をベースラインシステムとし,提案システムとして,周辺観光スポット名提示インタフェース(S)および周辺観光スポット名および関連特徴語提示インタフェース(SP)を比較した.結果,タスク T3 のように,目的地が漠然とした地域のみが指定されているだけであり明確には定まっていない場合には,提案システムのセレンディピティ的効果が高いことを示した.

感想

※解釈が間違っている可能性もあるので、正しくは原著を読んでね!

旅先で行きたいスポットが決まっていることもあれば、メインの行く先は決まっているものの細部は決まっていないということはよくあることではないだろうか。

この研究では、Google Maps 上に観光スポットや関連ワードを表示させ、思いがけず価値あるものを見つけることを促せるかに挑戦しています。

研究では、次の3つの表示方法を比較し、その違いをまとめていました。

1. 素のGogole Maps
2. 1. のうえにスポット名を表示する(5件)
3. 2 に加えて、表示している地図に関連する単語を画面端に表示する

評価の結果、2 が最もセレンディピティが高かったようです。つまり、詳細情報を載せるよりもシンプルにスポット名を表示するほうが、思いがけず価値あるスポットを見つけられやすいようです。感覚的には、3 が高そうと思いましたが、地図には余計な情報がないほうがいいというとらえ方もできそうです。

また、利用者側の条件としても、行き先が1点で決まっているときよりも、2点で決まっていたほうがより効果が高く、さらにそれ以上に都道府県レベルで漠然と旅の方面だけ決まっている利用者のほうが効果が高いようです。

旅先の決定では、写真や動画といった視覚的なものも影響度が高いので、そういった情報を使ってみた場合はどうなるのだろうかと思いました。また、3 は一概に悪いともいえないかと思っております。なぜならば、関連語(特徴語)の選出方法はたくさんあるのでその精度が評価されていないと考えられるためです。今回の地図上に関連する単語はTwitter上の位置情報付きツイートを利用したとのことでしたが、観光に関連しないツイートも多数含まれているでしょうから、各種旅行サイトのスポットの紹介文や旅行クチコミサイトのスポット別のレビューを使うのもいいのではないでしょうか。
また、今回はPC向けのプロトタイプでしたが、モバイル向けの場合はどう変わるのかというのも気になりました。

(約820文字)

おわりに (ただの宣伝です。)

普段は旅行系のWebサービスを開発しています。いつか学術的な成果を実装してサービスに組み込みこんでみたいという思いがあって論文読んでます。観光系サービス開発をしてみたい!観光系の業務や研究してるんです!という学生さんや社会人の方いらしたらぜひお気軽にお声掛けください。

そういえば岩手県立大学卒業生・学生であれば誰でも参加できる同窓生Slack 「IPU Slack」というのもあるのでこちらもぜひどうぞ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?