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日本人の食事摂取基準(2025年版)案 その9(食事評価と留意点)

今回は「4-2 食事評価と留意点」です。
10ページ分あります。かなりボリュームがありますが、食事摂取基準を活用する第1歩目が食事評価です。ここを押さえておかないと始まりません。

ちゃんと読んだら、ちゃんと色んなことを書いてくれてるんですね。自分がどんだけ読んでいなかったのか思い知りました。

では、いきましょうー

4-2 食事評価と留意点

4-2-1 食事評価における摂取量推定と食事摂取基準の活用

エネルギー摂取量の過不足の評価には、
BMI 又は体重変化量を用います。

各栄養素の摂取状況の評価は、
摂取量推定によって得られる摂取量
食事摂取基準の各指標で示されている値
比較することで行います。

ここで重要なのは比較することです。

しかし、摂取量推定によって得られる摂取量には必ず測定誤差が伴います。
食事調査で得られた摂取量の測定誤差に関して、『基礎から学ぶ栄養学研究』(村上健太郎著)の本の中で下記の記載があります。
これを読んだ時は、「はっ」とさせられました。肝に銘じておきます。

"食事調査になじみのない人は,食事調査から得られた数字がどんなものであれ,それらを正確であると受け止めてしまいがちだ。そのような保証は実際には存在しないにもかかわらず。"

村上健太郎著『基礎から学ぶ栄養学研究』p.9より

また、
食品成分表の栄養素量実際にその摂取量を推定しようとする食品の中に含まれる栄養素量必ずしも同じではなく、誤差が存在します。
日本食品標準成分表の理解も欠かせないということです。

エネルギーや栄養素の摂取量が適切かどうかの評価は、生活環境や生活習慣等を踏まえ、対象者の状況に応じて臨床症状や臨床検査値も含め、総合的に行う必要があります。
その臨床症状や臨床検査値は、対象とする栄養素の摂取状況以外の影響も受けた結果であることに留意する必要があります。

4-2-2 食事調査

食事摂取状況に関する調査方法には、
①食事記録法
②24 時間食事思い出し法
③陰膳法
④食物摂取頻度法
⑤食事歴法
⑥生体指標
などがあります。

①〜③は短期間の食事を詳しく知るのに適していて、④〜⑤は習慣的な摂取量を知るのに適しています。
それぞれ長所、短所があるので下の表10でご確認ください。

表10

食事摂取基準は、習慣的な摂取量の基準を示したものです。
そのため、食事調査を行う場合は、
習慣的な摂取量の推定が可能な食事調査法
選択する必要があり、それが可能なのは
食物摂取頻度法食事歴法です。

この2つの方法で食事調査を行うときは信頼度(妥当性と再現性)に関する研究が論文化され、国際的にも認められているものを使用することが望ましいです。

4-2-3 食事調査の測定誤差

4-2-3-1 過小申告・過大申告

最も重要な申告誤差として、過小申告・過大申告が知られています。このうち、出現頻度が高いのは過小申告であり、その中でも特に留意を要するものはエネルギー摂取量の過小申告です。

どれくらい過少申告されるかについては
調査法や対象者によりことなりますが
エネルギー摂取量については
日本人の男性で11%、女性で15%の過少申告があることが報告されています。

下の図9からは、幼児期の過大申告と
小児期から成人期における過少申告の
可能性が読み取れます。

また、過小申告・過大申告の程度は肥満度の影響を強く受けることが知られています。

確かに昨日食べた物を思い出せないし、お菓子なんて、いつ何個チョコ食べたかも思い出せない。これがあまり食べてないのに太る(もしくは痩せない)の原因のひとつなんだろう。

図9

4-2-3-2 エネルギー調整

エネルギー摂取量と栄養素摂取量との間には、強い正の相関があります。また、過少・過大申告及び日間変動どちらとも強く相関し、同期します。
例えば、エネルギーが増えると栄養素Aの摂取量も増える。エネルギーが減ると栄養素Aの摂取量も減る、みたいに連動しているイメージです。
下の図10がその一例です。

エネルギー摂取量の過少・過大申告及び日間変動による影響を可能な限り小さくした上で栄養素摂取量を評価することが望まれ、その方法としてエネルギー調整をします。

エネルギー調整はいくつか方法があり大まかに分けると下記の3つになります。
①密度法
②残差法(主に研究に用いられる)
③一定のエネルギーを摂取した場合に摂取した栄養素量に推定エネルギー必要量を乗じた摂取量(密度法で得られた栄養素量に推定エネルギー必要量を乗じたイメージかなと思っています。)

図10

4-2-3-3 日間変動

日間変動は、人間は毎日違う食べ物を食べているので、エネルギー摂取量や栄養素摂取量は毎日違うということです。

下の図12を見ると、エネルギー及び栄養素ごとに毎日摂取量が異なることがわかります。
また、エネルギー及び栄養素ごとにぶれる程度も異なることがわかります。

日間変動があるため、1日間分の食事記録法又は24 時間食事思い出し法を行ったとしても、それで得られた栄養摂取量を食事摂取基準と比較しても、意味は乏しいのかも知れません。
たまたま魚を食べていない日だったら、ビタミンDはおそらく摂取量が少ないでしょう。

ですので、食事摂取基準と比較する場合は日間変動の影響を除いた摂取量の情報が必要です。

日間変動の程度は個人及び集団によっても異なります。
集団を対象として摂取状態の評価を行うときには、集団における摂取量の分布のばらつきが結果に無視できない影響を与えます。
調査日数が短いほど、習慣的な摂取量の分布曲線に比べて、調査から得られる分布曲線は幅が広くなります
その結果、摂取不足や過剰摂取を示す者の割合を算出しようとすると、短い日数の調査から得られた分布を用いる場合と習慣的な摂取量の分布を用いる場合では異なる結果になります。
それがわかるのが下の表13です。

また、日本には四季があります。
野菜によって旬の時期も異なり、季節によって食べる物が変わります。
日間変動だけでなく、季節感変動もあるのですが、栄養素単位で見ると、季節感変動があるのはビタミンCくらいだそうです。

●お疲れさまでした〜

今回は食事評価の中の
主に食事調査の部分について書きました。

どんな食事調査法で調査するのか。
その食事調査で必ず発生する過少申告と日間変動。

食事調査って難しいね。
食事調査で得られた値は「真の」値ではないことを知っておかないといけませんね。

それでは、お疲れさまでした〜

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(案)

厚生労働省ホームページ

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