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日本人の食事摂取基準(2025年版)案 その7(策定の留意事項)

今回で「3 策定の留意事項」が終わりです。

今回は個人的に何回読んでも、あまり頭に入らない苦手な「外挿方法」があります。

3-5 外挿方法

●基本的な考え方

食事摂取基準で算定された数値は、
ある限られた性及び年齢の者において観察されたものになります。
なので、何らかの方法を用いてこれらの値、すなわち参照値から外挿を行わなければなりません。
「推定平均必要量、目安量」と「耐容上限量」はそれぞれ個別に外挿方法を定めています。

●推定平均必要量と目安量

栄養素の特性を考慮した外挿方法を決定することは困難です。
そこで、エネルギー代謝効率と体表面積の間に高い相関があることに着目し、身長及び(又は)体重から体表面積を推定する式が多数提案されています。。今回は、1947 年に提唱された体重比の 0.75乗を用いる方法を採用しています。

◯1 日当たりの摂取量(重量/日)で与えられている場合

推定平均必要量又は目安量の参照値が 1 日当たりの摂取量(重量/日)で与えられ、参照値が得られた研究の対象集団における体重の代表値(中央値又は平均値)が明らかな場合は下記の式を用いて外挿した。

X:X0×(W/W0)0.75×(1+G)

X:求めたい年齢区分の推定平均必要量又は目安量(1 日当たり摂取量)
X0:推定平均必要量又は目安量の参照値(1 日当たり摂取量)
W:求めたい年齢区分の参照体重
W0:推定平均必要量又は目安量の参照値が得られた研究の対象者の体重の代表値(平均値又は中央値)
G:成長因子

◯体重1kg当たりで与えられている場合

X=X0×W×(1+G)

を外挿した。
X:求めたい年齢区分の推定平均必要量又は目安量(1 日当たり摂取量)
X0:推定平均必要量又は目安量の参照値(体重 1 kg 当たり摂取量)
W:求めたい年齢区分の参照体重
G:成長因子(数値は表 8 を参照

◯小児の場合(成長因子)

成長に利用される量、成長に伴って体内に蓄積される量を加味する必要がある。
成長因子として、FAO/WHO/UNUとアメリカ・カナダの食事摂取基準が採用している値を、日本人の年齢区分に合うように改変して用いた。下の表です。

◯6〜11ヶ月の場合

①0~5か月児の値から外挿する場合

式:(6~11 か月児の参照体位の体重÷0~5 か月児の参照体位の体重)0.75

②0~5か月児と1~2歳の中間値を採用する場合

③母乳からの栄養素の摂取量と、母乳以外からの摂取量に基づき算出

式:母乳中の栄養素濃度×哺乳量+母乳以外からの摂取量

④0~5か月児の食事摂取基準から外挿した値と、18~29歳の食事摂取基準から外挿した値から算出
水溶性ビタミンに用いた。
下記2つの方法で6〜11ヶ月の基準値を求め、男女ごとに値を平均し、男女同一の値にし、値の丸め処理を行なった。
・0~5 か月児の目安量からの外挿
式:(0~5 か月児の目安量)×(6~11 か月児の参照体重/0~5 か月児の参照体重)0.75

・18~29 歳の推定平均必要量(又は目安量)からの外挿
式:〔18~29 歳の推定平均必要量(又は目安量)〕×(6~11 か月児の参照体重/18~29 歳の参照 体重)0.75 ×(1+成長因子)

●耐容上限量

理論的かつ十分に信頼できる外挿方法は存在していない。

◯参照値が体重 1 kg 当たりで与えられる場合

X=X0×W

を用いた。ただし、
X:求めたい年齢区分の耐容上限量(1 日当たり摂取量)
X0:耐容上限量の参照値(体重 1 kg 当たり摂取量)
W:求めたい年齢区分の参照体位の体重

◯参照値が 1 日当たりで与えられる場合

X=X0×(W/W0)

を用いた。ただし、
X:求めたい年齢区分の耐容上限量(1 日当たり摂取量)
X0:耐容上限量の参照値(1 日当たり摂取量)
W:求めたい年齢区分の参照体位の体重
W0:耐容上限量の参照値が得られた研究の対象者の体重の代表値(平均値又は中央値)

●推奨値

①推定平均必要量の参照値から外挿して性・年齢区分別の推定平均必要量を求める。
②外挿された各推定平均必要量に推奨量算定係数を乗じて算定した。

●目標量

①現段階で理想的と考えられる摂取量から外挿して性・年齢区分別に理想的な摂取量を求める。
②外挿された性・年齢区分別の理想的な摂取量と性・年齢区分別摂取量の中央値を用いて、その性・年齢区分別の目標量を算定した。

3-6 値の丸め方

値の信頼度と活用の利便性を考慮して、基本的には下記の表に従って、丸め処理が行われています。
丸め処理をした後、年齢区分間で大きな凹凸が生じないように、必要に応じて数値の平滑化が行われています。
また、下記の表以外の方法で丸め処理を行った栄養素についてはそれぞれの所で記載されているようです。

丸め処理を行なっているのを知ると、「1つの値」に固執するより、「その値らへん」を目指して計画を立てるという感覚で良さそうな気がします。

●お疲れさまでした〜

今回で策定に関する章が終わりました。
個人的に苦手な外挿方法。
頭の中でまとめるのに時間がかかりました。
ほぼ文章をコピペしただけだけど。

今回、作成した目次がいい感じにまとめれているのではないかと思います。(自分的に)
目次って頭の中を整理するのにすごい役立つ。
目次考えた人すごい。

そして、1番驚いたのは、外挿方法で採用されてた体重比の 0.75乗を用いる方法の論文が1947年のものってこと。
70〜80年前の論文が今も使われてるのに、ロマンを感じる。

次回から活用に関する章に入ります。
食事摂取基準をどう使うのか。
ここを読まないと、食事摂取基準を理解できても使うことができません。
今、活用も同時進行で書いてますが、なかなかのボリュームです。

楽しんでいきましょうー!

では、お疲れさまでした〜

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(案)

厚生労働省ホームページ

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