マジック・リアリズム・ダイアリー

──日常はクロークの中に

3月24日
 日記をつけ始めることにした。我が家の裏に住んでいる「東京都民の日記を趣味で全て暗記している男」にそれを報告したら、奇声を発しながらオナニーを始めた。彼はいまや、東京都民の「」の部分を全て引き受けてしまっている。

3月25日
 最近は、血圧が一定以上になるとテレビがつく装置に自分を接続しているので、起床すると勝手にテレビが始まる。装置は銀色に輝いていて、気持ち悪いほどに僕の顔を反射させている。
 テレビで芸能人格付けチェックを見ていたら、『巨根黒人の陰茎をあてれば一流』という内容。“正解”は、マイケル・ジャクソンのチンポ、“不正解”は浜田のチンポだった。当然、芸能人がチンポを口に含んで“格”を判断するというものだ。この国のテレビは、終わってしまったんだと思っていると、僕のチンポをかたどったディルドが“絶対アカン”として使われていて、3人ほどの芸人が騙されていた。僕は不覚にも号泣してしまった。

3月26日
 21時、塾からの帰りに自転車を漕いでいると、部活帰りと思しき高校生の男女2人が(雨が上がり、要らなくなった傘をぶらぶらさせながら)別れ際に名残惜しそうに会話をしていた。
僕は、アオハル!!不純異性交遊!!!
と絶叫するのをこらえてその場を離れ、行きつけの団地の公園で、5m離れたところで私を見つめるタヌキに話しかけていた。タヌキに、彼女がほしい、と話しかけたら、大山のぶ代時代のドラえもんに変なエフェクトをかけた感じの声で、てめえのケツでファックしやがれ、と言われた。

3月27日
 今日も塾があった。土砂降りの雨だったので、近所のヘヴィ・メタル狂いに改造してもらった極彩色のレインコートを着て自転車(コンコルド号、と名付けている)を漕いだ。途中カゴに入れておいたレインコートの袋が風に飛ばされて、それを取ろうとしたら自転車ごとすっ転んだ僕はもうどうでも良くなり、自転車を全て分解してそれぞれのパーツを1つ1つ肛門に入れ、こんな夜にッッッ!!お前に乗れないなんてッッッッ!とRCサクセションを絶叫したところ、衝撃で内臓が全て飛び出てしまった。僕の内臓に残ったのは肛門から突っ込んだ全て自転車の部品だけになってしまった。それでも僕は僕なのだろうか。テセウスの斧。

3月28日
 風呂に入り始めた。
理由は、30年間風呂に入らず馬に跨っていたら馬と離れなくなったてしまった北守将軍の話を読んで、自転車(コンコルド号)と俺の体が癒着したら怖いと思ったから。
 久しぶりに風呂に入ったら、鼠蹊部が発光していた。多分、湿っていたのでヒカリゴケが生えたのだと思う。僕はヒカリゴケを天然記念物に登録してもらうためにフルチンで市役所に向かった。

3月29日
 電車に乗ると滅多刺しにされるので、電車には乗りたくない。電車に乗ると滅多刺しにされるかもしれない。キチガイは電車に多い。
 このあいだ西国分寺駅で乗り換えをしていると、折りたたみ傘をもったロシア人のように彫りの深い男が、なにかを叫んでいた。一緒にいた友人(天の声を聞ける)は、「アカシックレコード!」と叫んでその場で倒れていた。


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