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アナル記号試案(草稿)

アナルには別名がある。

菊の紋である。また、アナルを表す際、アスタリスク*を用いることがある。さて、ここで疑問に思ったことはないだろうか。アスタリスクも菊も、穴ではない。これら2つに穴は空いていない。にも関わらず我々はアスタリスクや菊をアナルの記号として用いている。

ここで私は、アナルの本質について思いを巡らせてみた。アナルは穴である。人間が主に排泄物を放つための穴である。つまり、空である。アナルというのは、実在しない空を指している語なのだ。

なんということだろうか。我々は“空”からウンコを出すというのか。“空”が痒くなるというのか。“空”を開発するというのか。否、アナルはアナルである。

この認識の矛盾を解決するため、人類はアナルに菊やアスタリスクといった記号を与えてきた。しかし、これらの記号は果たして適切なものなのだろうか。私にはどうしてもそうは思えないのだ。

アナルにはアナルの、本来の記号が付与されるべきだ。私はその記号について考えてみる。まず、空間がなければアナルの“空”を表現することはできない。「◯」はどうだろうか。いや、駄目だ。だいいち上品過ぎるし、◯というのはアナルのアンチ・マウス(口)としての存在意義をわかりにくくしてしまう。

「()」これはどうだろうか。駄目だ。全く駄目だ。その理由はお察し頂けるだろうが、この記号はアナルではなく、その、別の口そのものであって、それを書くことはこの原稿の品位のために慎まなければならない。

ああ、私はアナルという煉獄に閉じ込められてしまったかのように、アナルの記号を探して醜くもがいている。まるでアナルに突っ込まれたピンクローターのように。

ピンクローター……?私は、はっとした。
ひょっとすると、突っ込むものによって“空”を表現することが可能かもしれない。“空”を表現するためfillerとなるものを用意するのである。

⊂←

アナルなのか……?これは……アナルなのか……?
もう何もわからない。正解が何もわからない。
私はもう少し、考えを巡らしてみる必要がありそうだ。

***
以上は、発狂したガバーナ・ダ・D博士の自宅から発見された草稿である。

失踪した博士は、一週間ほど後、新宿二丁目の路地裏で身体中にアナルが空いた状態で発見され、即座に病院に運び込まれたが脳へのダメージから発狂してしまい、今は自分を淫獣だと思い込む妄想狂となっている。

彼は未だに精神病院で拘束の憂き目を見ているが、娑婆では彼の研究の再評価が進みつつある。この草稿も、彼の思想体系の理解への一助となることを願って公開された。なお、現在ガバーナ博士の著作を全集として出版する事業が進展中である。

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