もったいない主義

関心をもたせる仕掛けを作るには?『もったいない主義』を読んで

小山薫堂さんの『もったいない主義』を手にとったのは、以前読んだ『くまモンの秘密』の文中にいくつも引用されていたからです。

日常に潜む普通の現象に、価値を付加して人にサプライズを仕掛けていくことに長けた小山さんの、さまざまなアイデアの源泉を垣間見える面白い本でした。

要約すると

小山薫堂さん流のアイデア発想法のポイントが散りばめられた本。具体的な事例から大事なポイントが機能法的に述べられています。

面白かったポイント

たくさんのアイデアや具体例から、小山薫堂さんの思考のクセを掴み取ることができそうです。面白いなと思った3点をご紹介します。

①すべてをメディアと捉える

まず、全てをメディアと捉えるというかんがえ方が面白かったです。本で出されている具体例としては病院の例で、飛行機の機内誌のように院内誌を作って、病院に来る年間10万人に対して同じコンテンツを楽しんでもらえばいいんじゃないかという話。病院の待合室で診察を待っている体験をしている人たちは健康であることがどれだけ幸せなことかを実感しているはずだから、その人たちが望むコンテンツや商品を紹介したらいいんじゃないかと書かれていました。

たしかに、自分自身の体験としても病院に置いてある雑誌に興味を惹かれた経験はしたことありません。例えば風邪を引いたタイミングで病院に行って、どうしたら風邪の予防ができるかとか、家に帰って寝込む際にやったほうがいいことはなにか、などの具体的なお役立ち情報だったり、治ったあとに食べたくなるような料理のレシピだったりあったら楽しそうだなと思います。

ある特定の体験の渦中にいる人に対して、その人たちに寄り添った情報を伝えることには価値があると理解しました。

②足し算引き算ではなく掛け算的なかんがえ方

PRというと、どうしても「どう伝えるか」ということにお金を使いがちですが、僕の場合は、お金を落として、そこに生まれた面白いものをみんなが見に来るようにする仕掛けをつくる、という発想をします。いまある予算でどれだけ広告を打てるかというのは単なる足し算引き算の世界。真ん中に落としたら、掛け算みたいに相乗効果でいろいろなものが絡まって広がっていく、というイメージです。 
(本書引用)

この思想が具現化された例として、昔実施された定額給付金の話が出ていました。一人あたり12,000円、総額2兆円を国民に渡してお金を使ってもらって経済を活性化させようという施策でしたが、結局貯金してしまう人がたくさんいるだろうし、うまくいったとは言えない認識です。

小山さんだったら、映画を1年間見放題にしたり、離島へ運行している赤字のフェリーを1年間無料で乗れるようにする、などを考えるそうです。すると、娯楽に伴って外食や観光、お土産など副次的な購買が生み出されるため、結果的に予算も数千億で足りるし一人あたりが生み出す経済効果も高いんじゃないかと。

これを政府がやったらどこかの業界に肩入れしているのか、と世の中から反発は出そうですが(笑)、一つの取組みによって他の要素にまで影響を与えて結果的に全体の総和は増えている、という考え方はクリエイティブの為せる技です。仕事でもシステム思考的な、複雑に絡み合った要素を紐解いて先手を打っていくような施策を考えてみたいものです。

③無意識のゴミ箱からもったいないのガラクタ箱へ

日常の小さな失敗を“〝 無意識のごみ箱”〟 に捨ててしまうのではなく、“〝 もったいないのガラクタ箱”〟 にストックしておくことが大切なのです。

この考え方は「もったいない主義」を端的に表している言葉だと思いました。日常に起きうる様々な出来事もアイデアの種になり得るのだから、ただ無意識的に通過するのではなく意識的にストックしておこうよ、ということ。

いわゆるデザイン思考的に事業を考えるときは、ユーザーを観察してそのインサイトから機会を発見していくというアプローチをしますが、まさに自分自身がユーザーであり日常の小さなペインを見逃さないための訓練にもなります。ずっと考えっぱなしだと疲れてしまいますが、習慣的に気づける力は養っていきたいなと思いました。

さいごに

言うが易し行うが難しがアイデア発想法のよくあるパターンだと思いますが、この本ではいざアイデアを出そう!というときではなく、日常の何気ない出来事もアイデアの種となるよ、といった心がけに近いメッセージがあるので、実践はできそうだなと思いました。

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