ムハッラム12日目 クーファの人々とザイナブ様たち
慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名によって
おぉ、アッラーよ!祝福くださいムハンマド様を
そして彼の御一門を
そして彼らの救済を近づけてください
イマーム・フサイン様にサラーム
アリー・ブン・フサイン様にサラーム
イマーム・フサイン様の子供たちにサラーム
イマーム・フサイン様の支援者たちにサラーム
ムハッラム12日目
クーファ入りする捕虜となったザイナブ様たち
ムハッラム10日が終わり翌日の午後敵側が戦死者たちを葬った後、
カルバラーからクーファまでザイナブ様たちは連行されました。
その距離は凡そ80kmあります。
しかも、何と辛いことに移動の際には何かしら欠陥を持つ馬やラクダなどがザイナブ様たちにあてがわれました。動くたびに激しく揺れ、振り落とされるたびに鞭が叩き込まれ、泣き叫ぶと何故泣くのだ!泣くな!と罵声を浴びせられ…ではどうしろというのでしょう…カルバラーで愛する者たちが惨殺され、亡骸の下着まで剝がされては略奪され、宿営していたテントに火が放たれ、耳を引き千切られて耳飾りが奪われ…その上、愛する人々の生首が刺さった鉄槍と並びながら、欠陥のある動物の乗り物に乗せられて振り落とされ、罵声を浴びせられながら鞭で打たれて笑っていろというのでしょうか?!…また、心清らかなザイナブ様たちはそのような動物に苦しい思いをさせることにも重ねて胸を痛めたのでした。
ですが、大変な試練と災厄であったカルバラーの悲劇に遭遇して愛する人々を失ったザイナブ様たちは、一切恥辱には屈しませんでした。
この災厄の最中にも拘らず、ザイナブ様は貞潔さを常に保ち、唯一神への謙虚さに満ちた発言をされました。そして、真実に抗う者たちへ偉大なる無謬な人々の風体を顕したのでした。それはまさに、ザイナブ様の父上でアミール・アル=ムウミニーンであられるイマーム・アリー様がお言葉を述べられているかの如く、大変雄弁でした。
بشیر بن خزیم اسدیは唯一神に誓ったうえで、これ程までに恥じらい貞節さを順守する雄弁な女性は見たことが無い、それはまるでアミール・アル=ムウミニーンであられるイマーム・アリー様が語られているようであった、と伝承しています。
ザイナブ様がお言葉を発して、命じると、クーファの人々と居合わせた人々は静まるよりほかありませんでした。
ザイナブ様が固唾を呑み込まれると、
駱駝が揺れて鈴がなり、それが止むと同時に説教を始められたのでした。
クーファの人々へのザイナブ様の説教
まず、唯一神を称賛され、預言者ムハンマド様とその御一門に祝福とサラームを述べられました。
続けて:
よく聞きなさい、クーファの人々!
さぁ、詐欺師で裏切った人々!
あなた方は泣いているのですか?!
あなた方の涙が乾きませんように
あなた方の泣き叫ぶ声が止みませんように
まさにあなた方のやっていることは
女性が自身で強く編んだ紐をまた解いて
一本ずつバラバラにするようなものです
あなた方もお互いに約束を破りなさい
いいですか、クーファの人々!
あなた方の中に自惚れ屋で、不浄(穢れた、接触すら忌み嫌われる存在)、約束を破り、嫉妬心に湧き、情欲を掻き立て、媚びへつらい、敵陣に軽蔑され、或いはたとえば、ドブに湧くヘドロみたいな藻や苔、そして墓地における金銀装飾品のようではない、そのようなヒトでもいるのですか?
よく覚えておきなさい、
あなた方は自身の来世の為に悪い旅支度をしたのです、なぜ唯一神の怒りに直面して、永遠である応報の中に留まるのでしょう。
あなた方は泣いてるのですか?嘆き嗚咽してるのですか?
えぇそうです、唯一神に誓って、あなた方はもっと号泣しなくてはなりませんし、少ししか笑ってはなりません(笑うこと自体はあなた方の権利ですから)、なぜなら今後、決してあなた方はどんな洗剤でもってもそれを洗い清めることはできない、そのような不名誉と恥辱、屈辱と悪名に沈んでしまっているのですから!
覚えておきなさい
あなた方は悪い罪を犯したのです、唯一神の慈悲があなた方から遠ざかりますように、あなた方の努力は水の泡と成り果て、あなた方の手は出し惜しみしてすぼんでしまい、あなた方は取引で損を被ったのです、そしてあなた方は唯一神の怒りに直面して、あなた方の額には恥辱と屈辱の烙印が捺されたのです。
あぁ、なんてことを…クーファの人々よ!
分かっているんですか?あなた方は唯一神の御使いが愛してやまないどの子をバラバラに(惨殺 إرْباً إرباً)したのかを?!そして唯一神の御使いのどの敬意、名誉を覆いの内側から引きずり出したのかを?!
唯一神の御使いのどの血を流したのか?!
唯一神の御使いのどの敬意を粉々に打ち砕いたのか?!
あなた方は酷く悪い罪を犯したのです、醜く、望ましくない、とても重く、不正で暴虐な罪、広大な大地と天空の広さほどに不吉で醜い罪
もしや、
あなた方は驚いているのですか?
天空が血を降らせることを?!
しかも来世の応報はより過酷で誰もあなた方を助けないというのに?!
(あなた方に残された)この短い機会が(応報を減らす為に)あなた方を努力や奔走へと駆り立てませんように、あなた方が急ぐことはあなた方の応報において唯一神が急ぐことの要因にはなりません。なぜなら、唯一神の血の復讐が無くなることを唯一神は怖れないからです(唯一神の血の復讐は確固なものです)、まさにあなた方の養育の主は待ち構えています。
伝承者は語ります:
唯一神に誓って、その日、どうしていいか分からず困惑して泣きじゃくる人々を私は見ました。そして(激しく深い後悔から)自分の手を口の中に咥えてかぶりついている人々を。そしてまた私の傍に立ち尽くして涙で髭までびっしょりと濡れた老人はそのままで言いました:
私の両親をあなたに捧げます(註:何よりもあなたは大切な方ですの意味)
あなたの老いは最高の老い、あなたの若さは最高の若さ、あなたの妻たちは最上の妻、そしてあなたの子孫は最上の子孫です。彼の御方らは卑小にならず、彼の御方らに敗北はないのです。
説教の解説を始める前に、伝承者の言葉を熟考してみましょう:
唯一神に誓ったうえで、これ程までに恥じらい貞節さを順守する雄弁な女性は見たことが無い
あらゆる女性の恥じらい貞節さは、大声を出したり、或いは大衆の面前で説教をする障害になること、これは当たり前なことです。そして、このような女性は説教や演説に慣れていない場合、当然ですがトーク力や表現力を持たないでしょう。しかし、この伝承者は言います:
唯一神に誓ったうえで、これ程までに恥じらい貞節さを順守する雄弁な女性は見たことが無い
つまり、彼女よりも演説において能弁で、説教の中での批判において的確に指摘する能力に長けた人物を見たことがない、このことに加えて大変恥じらい貞節さを持たれていたのです。
彼女の演説はまるでアミール・アル=ムウミニーンであられるイマーム・アリー様(彼にサラーム)の口から発せられたかのようでした。
まさにアミール・アル=ムウミニーンであられるイマーム・アリー様(彼にサラーム)は説教と雄弁さのイマームです。雄弁であり、雄弁さや説教での批判は、独特な手法と偉大で特別な位を有します。つまり、彼の言葉は他の人々の言葉から区別されるのです(そうです、イマーム様の聴衆は)最良の雄弁さや能弁さ、解釈や解説の頂点に位置するのです。そして、それには最上の知識と文学の地位が割り当てられる(に相応しい)のです。
伝承者は、この説教をアミール・アル=ムウミニーンであられるイマーム・アリー様を目の当たりにして彼の言葉を聞いたことがあり、今まさにザイナブ様の言葉を聞いて、彼女の言葉を彼女の偉大な父(イマーム・アリー様)の語られた言葉そのものであると知る人々からだと伝えます。
なぜ、ザイナブ様は父上イマーム・アリー様のような能力と能弁さと重み、深い意味を持たせて説教ができたのでしょうか?
伝承者は語ります:
彼女はクーファの人々に静粛にするよう指示しました。
その後で、ザイナブ様が固唾を呑み込まれると
駱駝が揺れて鈴がなり、それが止むと同時に説教を始められたのでした。
人々の波が頂点に達する人だかりで、空間は喧騒と緊張で満ちています。
しかし、伝承者の言うところでは、ザイナブ様が静粛さのサインを示しただけで、人々と動物たち、そこにあるものを支配しコントロールしたのです。
そうです、ザイナブ様は1回の指示でもって、強靭な魂と盤石な自我でもって情況を支配してコントロールしたのです。
説教の解説:
準備中
典拠
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ザイナブ様のクーファでの説教
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