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スンナ派における救世主信仰(マフディー論)の言行録

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慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名によって

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著者:匿名イスラーム研究者

スンナ派における救世主信仰(マフディー論)言行録

救世主信仰に関する言行録の解釈

アッラーは、あなたたちのうち、信仰して善い行いをする人たちには、あなたたち以前の人たちに継がせたように、確かにこの大地を継がせることを約束なされた。そして彼らのために、かれが嘉される彼らの宗教としてゆるぎないものとされ、彼らの恐怖を、安心無事に変えられる。彼らはわれに仕え、われに何ものをも同位者としておかない。だがそれ以後になお不信心になる人たちこそは、放蕩者である。
24.御光章55節

唯一神は、24.御光章55節において、適正な信者へ、地上の統治を最終的に手中にする吉報を明白に齎された。そして、イスラームは世界を覆い、不安と恐怖は平穏と安寧に変わり、多神教が世界中から取り払われ、唯一神の僕たちは自由に唯一神信仰を続け、全人類への明証にピリオドが打たれる。もし、その後も不信仰を望み、その道を探索する者がいるならば、その者は罪人であり退廃者である。
クルアーンではこのように述べられている:

確かにわれらの訓戒の後、詩篇の中に、「まことにこの大地は、われの正しいしもべたちがこれを継ぐ」と記した。 
21.預言者章105節

この21.預言者章105節も、信仰して善い行いをする人たちは大地を継ぎ、その保持者となるという、確実な神的吉報を知らせている。つまりこの節は、諸大陸、諸地域、地下埋蔵資源の全てにおける、大地とその統治は、唯一神を信仰して善い行いをする人たちの手中となる時代が到来することを知らせている。このように、他の諸節においても、この決め事が述べられている。
その例として、28.物語章5節:


われらは、地上で虐げられている人たちに恩情をほどこそうとし、彼らを〔信仰の〕指導者となし、後継ぎにしようとした。 
28.物語章5節

たとえ、この重要な出来事が神的約束であっても、偉大なる預言者様(彼と彼の御一門をアッラーが祝福しサラームなされた)の時代に、それから後の時代、イスラーム勃興当時との比較において、広範囲に世界中のムスリム達にとって実現された。イスラームは、当時、敵たちの手中で、影響を及ぼす機会が最も少なく、その機会も与えられなかった程、艱難辛苦の渦中でムスリム達は常に不安と恐怖に直面していたが、最終的にアラビア半島に限らず、むしろ世界の広大な範囲を席巻し、敵たちはあらゆる戦で敗北を喫した;しかし、今この現状を持ってしても、世界を席巻し、多神・偶像崇拝を根絶して、安寧と平穏と自由と純粋な唯一神信仰(タウヒード)を全てに行き渡らせる世界的イスラーム統治は未だに実現していない。よって、その実現を期待しなければならない。多くの言行録と一致するこの出来事は、《マフディー》の蜂起の時代に実現する。

マフディーに関する言行録を、偉大なる預言者様(ص)から、多くの教友(サハーバ)が伝承している。待望されるマフディーの顕現は偉大なる預言者様(ص)本人から伝承された言行録、そして預言者様(ص)の教友が信用を伴って唯一神の使徒(ص)の言葉だと述べている(彼らの証言や誓いも、言行録を採用するか否かの裁定に用いられる)ものは、多くの著名なイスラーム諸文献や、偉大なる預言者様(ص)の言行録の原文において、スンナ派とシーア派を含んだより広範なイスラームの様々な諸宗派に見られる。あるイスラーム学者らは、マフディーに関する書籍を上梓し、イスラーム初期そして現代の偉人や学者らも、自身の著作でマフディーに関する言行録が大変多く伝承されていること、全くもって否定不能であることを明言している。

六つの真正言行録、もしくは六大真正ハディース(ハディースとは言行録)は、スンナ派で最も信頼されている言行録の書物であり、尊きクルアーンに次いで最重要な教義的典拠である。これらはスンナ派の人々に有用で、スンナ派の法学者により研究、使用される。この書物とは:

・サヒーフ・アル=ブハーリー
・サヒーフ・ムスリム
・スナン・アブー・ダーウード
・スナン・アル=ティルミズィー
・スナン・アル=ナサーイー
・スナン・イブン・マージャ

六大真正ハディースにおいて、主題を救世主信仰に据えて、言行録を二手に分けて検討する:一つは、主題の救世主信仰を総括的に言行録から論証する。もう一方は、主題が救世主マフディーに限り照合可能な、特殊な言行録である。この我々の解釈において、まず、総論的に救世主信仰について示す言行録を六大真正ハディースから検証し、後に救世主マフディーに関する特殊な言行録を検討する。

六大真正ハディースにおける救世主信仰の一般的な言行録

ハディース サカライン

イスラームの諸宗派すべてにおいて見解が一致している言行録の一つが《ハディース サカライン》である。最も信用度が高い言行録書物において叙述されているこの言行録を、およそ43名の預言者様(ص)の教友(サハーバ)が伝承しており、歴史においては、より多くの典拠で述べられている。内容は、一部の伝承で少々差異はあるものの、主軸において一つである。それは、サカラインを手放さなければ最後の審判まで迷誤に陥らない、という預言者様(ص)のイスラーム共同体(ウンマ)への遺言、そして指示・命令である。

言行録の内容
1. ムスリムが自身のサヒーフにおいて、ザイド・ブン・アルカムから伝承している:

ある日、唯一神の御使い様(ص)は、マッカとマディーナの間にある《フム》という名の池の傍で立ち止まられ、集まった群衆に説教を行った。その説教において、唯一神の賛美と訓戒の後、このように仰った:《さぁ、人々よ!この通り、私は人間であり、それ以上ではないのです。唯一神の御使いがやって来て、私の魂を取り上げ、私が唯一神のお招きに応じることは、直ぐそこまで来ています。私はあなた方の間に、二つの重要なものを残します:一つ目は、唯一神の啓典(クルアーン)です!手に取り、そしてしっかりとそれに掴まるのです》。預言者様(ص)は唯一神の啓典について、幾度も様々な指示・命令をされて、唯一神の啓典を行動に移すように人々を激励なされた。そしてその後、仰った:《そして、私の一門の人々(アフル・ル・バイト)です。あなた方に指示・命令します、私の一門の人々の側でいなさい》そして、この言葉を三度繰り返された。

2.ティルミズィーは自身に至る伝承経路で伝承する。唯一神の御使い(ص)は仰った:

私は、あなた方の間に二つのものを残します。それに掴まっている間は、決して迷誤に陥りません。一つは、もう一つより偉大です。天から地上に垂れる綱である唯一神の啓典(クルアーン)、そして私の家族と一門の人々です。この二つは、(天国にある)池で私と結びつくまで決して離れません。よく考えなさい、どのように私の信託に振舞えばよいのかを。

ハディース・サカラインの有益な要点

1. クルアーンと預言者様(ص)の御家族は、唯一神の御使い(ص)の傍らで、最も価値あるものであった。《サカラインثقلین》は、アラビア語で«ثقل»を語根とする名詞の双数形である。ثقلとは、旅行中の食糧を意味し、保存や保管の必要な高価なあらゆるものを指す。クルアーンと預言者様(ص)の御家族をサカラインと呼び、その二つの階位や地位が偉大であると明確に示した。

2. 導きと幸福は、クルアーンと預言者様(ص)の御家族のひろく深い木陰において実現する。ティルミズィーの伝承に基づくと、預言者様(ص)は仰った:《もし、この貴重な二つのものに掴まれば、決して迷誤に陥らない》。

3. 預言者様(ص)は仰った:《(天国にある)池で私と結びつくまで》そして《よく考えなさい、どのように私の信託に振舞えばよいのかを》、この2つの表現から、人類の導きは、2つに掴まることが条件であり、クルアーンに掴まり預言者様(ص)の御家族を手放すことではない。

4. ティルミズィーのスナンの記述において、預言者様(ص)は仰った:《この二つは、(天国にある)池で私と結びつくまで決して離れません》つまり、クルアーンと預言者様(ص)の御家族は、最後の審判まで存在し、残るのである。仮に、クルアーンが存在し、預言者様(ص)の御家族が存在しない時があるとすれば、互いが分離する方法を認めることになる。よって、尊きクルアーンが我々の間に残っているように、預言者様(ص)の御家族と御一門の人々、つまりアフル・ル・バイトも存続しなくてはならない。

5. 別な要点として、預言者様(ص)は、この伝承で仰った:よく考えなさい、あなた方の間に残すこの二つの跡継ぎに、どのように振舞えばよいのか?最重要な点は、預言者様(ص)はこの遺言の中で、自身の後にクルアーンと預言者様(ص)自身の御一門の人々を、サカライン、二つの跡継ぎ・代理人(カリフ)として紹介したこと、まさにこの点である。

6. サカラインの言行録を用いた最重要な点は、預言者様(ص)の御一門の人々、つまりアフル・ル・バイトの明証(حجة、フッジャ)と無謬性(عصمة、イスマ)である。アフル・ル・バイトをクルアーンの傍らに位置づけたこと、それも預言者様(ص)の手によって確証するために。これこそまさに重要な点である。クルアーンは、その中に、微塵の偽りも誤りも見出すことがない啓典であることに、まったく疑いの余地は無い。であるから、クルアーンと対抗することは適切ではない(禁止である)。預言者様(ص)は、自身の御一門の人々(アフル・ル・バイト)をクルアーンの傍らに位置づけ、この二つが最後の審判まで分離しないこと、そしてこの二つがすべての共同体(すべての時代とすべての地域の人々)の導き手であること、掴まらないことによる迷誤、これらすべては、この貴重で重要な二つが実際に結びついていることの証拠であり、無謬性(イスマ)以外に意味を為さない。

預言者様(ص)の御言葉に留意すると、《この二つは決して離れません》の意図とは、預言者様(ص)の御家族とクルアーンは、一つの不一致もお互いにないことと理解される。預言者様(ص)の御家族は、このことに言及しており、クルアーンもそのことを明言している。このことは、無謬性の他に意味があるだろうか?

ハディース・サカラインにおける預言者様(ص)のイトラ(家族)とアフル・ル・バイト(御一門の人々)

次に、アフル・ル・バイト(御一門の人々)、そして預言者様(ص)の言葉の中で述べられた、一門や家族という単語のイトラعترت、そしてクルアーンの公正さとは何を指すのかを検討しなくてはならない。
清浄節(33.部族連合章33節の一部分)の解釈において、この節の、アフル・ル・バイトاهل البیت(御一門の人々)とは誰を指すのか、唯一神はアフル・ル・バイトの存在自体が清浄であること、天性的清浄さを意図したのか、という問いを検討する。

預言者様(ص)のアフル・ル・バイトاهل البیت(御一門の人々)とは誰なのか?


スンナ派において複数の見解があるが、三つの有力な説が存在する:

1.アフル・ル・バイトとは、預言者様(ص)の妻たちのことである。

2.アフル・ル・バイトとは、預言者様(ص)の妻たち、すべてのハーシム家の人々[つまり、彼らハーシム家の人々はサダカ(宗教義務的サダカ)を施される対象になるが、ハーシム家以外の人々は彼らに宗教義務的サダカを施すことが禁じられる]である。ここでは、アリー家、アキール家、ジャアファル家、アッバース家も含まれる。

3.アフル・ル・バイトとは、預言者様(ص)自身、アリー(預言者様(ص)の娘婿であり従兄弟)、ファーティマ(預言者様(ص)の娘でありアリーの妻)、ハサンとフサイン(アリーとファーティマの二人の息子たちであり、預言者様(ص)の孫)である。

だが、この説明と諸解釈における真実は、預言者様(ص)自身の言葉を参照することにする。果たして、預言者様(ص)は、自身のアフル・ル・バイトを紹介し、それに適する人物を特定していたのか?幸い、我々はサヒーフ・ムスリムやサヒーフ・ティルミズィーで数々の言行録を目にする。預言者様(ص)は、自身の祝福された御言葉と行動で、自身のアフル・ル・バイトを紹介なされている:

1. ムスリムは自身のサヒーフで、預言者様(ص)の妻、アーイシャから伝承する。

唯一神の御使いは、朝、外へ出掛ける際に、肩にラクダの黒毛の縞模様の外套を羽織った。そして、ハサン・ブン・アリーがやって来ると、彼を外套の内に抱えた。その後、フサインが来ると、彼も内に抱えた。その後、ファーティマが来ると、彼女も内に抱えた。そして、その後、アリーが来ると、彼も内に抱えた。その時(この節、33.部族連合章33節の清浄節を)述べられた:アッラーはあなたたちから不浄を取り除かれ、あなたたちが完全に清浄であることのみを望まれる。

2.ムスリムは自身のサヒーフで、教友達の美徳の書(باب فضایل الصحابة)で、高貴なムバーハラ節(3.イムラーン家章61節)のもと、サアド・ブン・アビー・ワッカースからの言行録を伝承する:

この節が啓示されたとき、"さあ、私たちの子孫とあなたたちの子孫…を一緒に呼んで…″唯一神の預言者様(ص)は、アリー、ファーティマ、ハサンそしてフサインを呼んで仰った:アッラーよ!まことに、この者たちこそ私の人々です。

3.清浄節(33.部族連合章33節の後半部分)との関連で、ティルミズィーは自身に至る伝承承経路で伝承する。

この節《アッラーはあなたたちから不浄を取り除かれ、あなたたちが完全に清浄であることのみを望まれる》が預言者様に啓示された際、彼は家でウンム・サラマといらした。そして、ファーティマ、ハサンそしてフサインを呼び、外套(کساء)の内に抱えられた。彼の後ろにいたアリーをも呼び、外套の内に入られた。それから仰った:唯一神よ!彼らが私のアフル・ル・バイトです。そして、彼らからあらゆる不浄や罪を取り除かれ、清浄になされてください。このとき、ウンム・サラマは申し上げた:唯一神の御使いよ、私も彼らと一緒でしょうか?預言者様は仰った:あなたは、あなた自身の立場があります。善良と静謐があなたにありますように(だが、あなたはこのグループの内ではない)。

4.ティルミズィーは自身に至る伝承経路でアナス・ブン・マーリクから伝承する。

唯一神の御使い(ص)は六カ月に至るまで、夜明けの礼拝に出掛ける際に、ファーティマの家に差し掛かると扉に添い、仰っていた:《礼拝です、アフル・ル・バイトよ!唯一神は、あなたたちアフル・ル・バイトから不浄を取り除かれ、あなたたちが完全に清浄であることのみを望まれます》。

よって、確実に、預言者様(ص)のアフル・ル・バイト(御一門の人々)とは、特定の範囲であり特定の人物が含まれる。上述したムスリムの伝承に基づくと、預言者様(ص)のアフル・ル・バイトとは、預言者様(ص)の外套(کساء)の内にいた、もしくはムバーハラの出来事(3.イムラーン家章61節)の際に立ち会った人々である。彼らとはアリー、ファーティマ、ハサンそしてフサインである。

預言者様(ص)のイトラعترت(家族)が意図するのは、誰のことか?


イトラعترتとは、厳密には親戚そして身内個人のことを言う。そのため、一門や家族という単語のイトラعترتの意図とは、すべての親戚ではない。預言者様(ص)はサカラインについて幾度も提起なされ、そして宝珠の如きサカラインの言行録において、自身のイトラ(家族)とアフル・ル・バイト(御一門の人々)をクルアーンそしてクルアーンの公正さに匹敵すると位置づけ、いずれの二つも最後の審判まで、確立し、分離することを受け付けないとする。このことは、それへの理解に細心の注意を要する重要な点の証拠と運命開拓を有する。重要な点の一つとして:上述の通り、クルアーンは世界の終りまで残ることであり、預言者様(ص)のイトラ(家族)そしてアフル・ル・バイト(御一門の人々)からの人物もまた、クルアーンの傍らに存在しなければならず、どちらかが喪失することは預言者様の言葉を破棄することになる。同様に、二つのうちのどちらかに掴まらないことは、損失と迷誤を被ることになる。

大変多くのスンナ派の学者や研究者は、預言者様(ص)のアフル・ル・バイト(御一門の人々)を、アリー、ファーティマ、ファーティマの子供たち(つまり、ハサンとフサイン)と見做している。法学そしてハディース学の偉大な学者であるイブン・ハジャルは自身の著書においてアブー・バクルから、アリーは預言者様(ص)のイトラ(家族)に最も適する重要人物であると伝承する。そして、その後にイブン・ハジャルはこう記している:イトラ(家族)とは、最後の審判まで彼らに掴まることが相応しく、そして地上の人々にとって、生存と安全を齎す原因となる者たちでなくてはならない、尊きクルアーンのように。このために、預言者様(ص)はすべてのイスラーム教徒たちに、預言者様(ص)のアフル・ル・バイト(御一門の人々)に掴まりなさい、と命令したのだ。

では、この唯一神の使徒(ص)のアフル・ル・バイト(御一門の人々)とイトラ(御家族)の人物とは、現代において一体誰なのかを検討しなくてはならない。

ハディース・サカラインにおける預言者様(ص)の言葉は、厳粛で正確であるように、この世の終わりに至るまで、全時代・全地域のすべてのイスラーム教徒は、クルアーンとアフル・ル・バイトの間における《لن یفترقا―この二つは決して離れない》に適する人物が誰か明確となるまで、各々が預言者様(ص)のアフル・ル・バイトを認識しなくてはならない。目下、我々は現代における預言者様(ص)のアフル・ル・バイトとイトラに適する人物を追跡検討しなくてはならない。公正さを持つ人は、六大真正ハディースにおいても、預言者様(ص)のその言行録に留意し、祝福された存在であられる預言者様(ص)が、御自身のアフル・ル・バイトとイトラに適する人物を明確になされていることを解き明かすのである。一部のスンナ派の学者たちが、サカラインのハディースにおける預言者様(ص)のアフル・ル・バイトとイトラとは、まさに、預言者様(ص)の子孫に由来する12人のイマームたち(十二イマーム派の12人のイマーム様たち)であり、彼の12人のカリフ(跡継ぎ、代理人)である、と明言していたように。それに関する諸言行録(ハディース)をこれから検討する。

偉大な預言者様(ص)は、複数の言行録において、マフディーを自身のアフル・ル・バイト(御一門の人々)、そしてイトラ(御家族)からの人物であると提示しており、彼はクルアーンの公正さ、そしてイスマ(無謬性)を有するのである。つまり、祝福された存在であられる預言者様は、フッジャ(明証)をすべての人々の上に確証し終えたのである。クルアーンが地上から無くならないのと同様に、預言者様のアフル・ル・バイトとイトラが地上に不在である時は、まったくないのである。

スナンにおいて、ティルミズィーは唯一神の御使い(ص)から伝承する。彼の御方は仰った:

この世は消え去ることはありません、私の名前と彼の名前が同じである、私のアフル・ル・バイトからの男性がアラブたちを統治するまでは。

アブー・ダーウードのスナンにおいて、アブー・サイード・フドゥリーが伝える。預言者様(ص)は仰った:

マフディーは私からです。

アブー・ダーウードのスナンにおいて、ウンム・サラマが伝える。預言者様(ص)は仰った:

マフディーは私のイトラから、ファーティマの子孫からです。

イブン・マージャのスナンにおいて:

マフディーはファーティマの子孫からです。

既に述べた言行録(ハディース)によると、クルアーンそしてアフル・ル・バイトは、如何なる時も離れ離れにならず、片方無しで片方は存在し得ない。そして、マフディーはファーティマの子孫からであり、預言者様(ص)のアフル・ル・バイトとイトラからである。そして、マフディーはサカラインの一つであり、クルアーンに匹敵し、クルアーンと並んで彼に掴まることは幸福に繋がるのである。

12のカリフ(跡継ぎ、代理人)のハディース


六大真正ハディース、そして他の信用性のあるスンナ派の典拠で述べられている、サヒーフで伝承の鎖が十全である言行録(ハディース)の一つが、12のカリフというハディースである。このハディースは、様々な経路により、預言者様(ص)から伝承されている。出所が預言者様(ص)からであるのは、確実であり明白である。

六大真正ハディースにおける、言行録の本文


ブハーリーは、自身に至る伝承経路でジャービル・ブン・サムラから伝承している。預言者様(ص)は仰った:

まことに、12人の司令官がやって来る。その時、私はそれを聞いていない、という声が上がった。私の父は言った:預言者様は仰った;彼ら全員がクライシュ族からです。

同様に、サヒーフ・ムスリムにおいて:

ジャービル・ブン・サムラが言う:父と共に、唯一神の御使いにお目にかかると、彼は仰った:イスラームのカリフの命令は途絶えることがありません、12人の代理人が彼らの間を統治する以外は。その後に言葉を仰られたが、私には、はっきりとしなかったので、父に尋ねた:かの御方は何と仰いましたか?父は言った:かの御方は仰った:この12人のカリフはすべて、クライシュ族からです。

もしくは、この言行録:

アーミル・ブン・サアド・ブン・アビー・ワッカースは言う:私は私の奴隷を伴い、唯一神の御使い(ص)から聞いたことを我々のために書くよう、ジャービル・ブン・サムラに記した。ジャービルは我々に記した。アスラミーが石打ち刑に処された金曜日の夕暮れ時、唯一神の御使いから聞いた。かの御方はこう仰った:常にイスラームは、最後の審判が起こるまで堅固であるのです。そして、あなた方のために、彼らのすべてがクライシュ族からである12人のカリフがいます。

六大真正ハディースに見られる、12人のカリフについての言行録を総合することで、幾つかの要点が論証可能である:

1.唯一神の御使い(ص)の後、カリフは12人に限定される。

2.彼らのすべては、預言者様(ص)の出身であるクライシュ族からである。

3.イスラームの栄誉、宗教の名誉はこのカリフたちの存在に関係がある。つまり、このカリフたちのうちの一人が存命の時、イスラームは堅固に確立するのである。

4.12人のカリフが統治する間は、イスラームには終わりが無い。

5.言行録から得られる重要な点として、カリフ制は継続し、途切れることが無いことである。この点で、カリフ《خلیفه》という単語が用いられる。辞書的意味として、カリフخلیفهとは:

とある者が、彼の人々の諸義務に立脚する時、とある人々の間でカリフخلیفهになる。カリフخلیفهとは、代理を要請した者の不在や死去やその人物の不能を理由として、自身よりも前に出て何かを行う、個人の代理人である。

12人のカリフに適した人物


唯一神の御使い(ص)のカリフとは、内面的において魂の自己浄化、心におけるタクワー(悪事をしないブレーキ)を有し、外面的にも公正公明さに基づく、勧善懲悪に立脚する人物が相応しく、この点は明白である。もし、ある人が自身を唯一神の御使い(ص)のカリフと自認する一方で、彼のすべての振る舞いや行動から、放蕩や圧制が明らかとなれば、確実に彼は唯一神の御使い(ص)のカリフでなく、むしろ悪魔のカリフである。何故なら、カリフは代理を任せる者自身の顕現でなくてはならないからである。

この唯一神の御使い(ص)の12人のカリフ(跡継ぎ、代理人)に適する人物について、スンナ派の間では複数の解釈が提唱されているが、一部のものは脆く批判に値する。

そこから二つの解釈を示す。

a)
一つ目の解釈として、この12人のカリフとは:1.アブー・バクル、2.ウマル、3.ウスマーン、4.アリー、5.ムアーウィヤ、6.ヤズィード・ブン・ムアーウィヤ、7.ムアーウィヤ・ブン・ヤズィード、8.マルワーン・ブン・ハカム、9.アブドゥルマリク・ブン・マルワーン、10.ワリード・ブン・アブドゥルマリク、11.スライマーン・ブン・アブドゥルマリク、そして、12.ウマル・ブン・アブドゥルアズィーズである。

既に述べた通り、第一にこの言行録におけるカリフとは、唯一神の御使い(ص)のカリフ(跡継ぎ、代理人)のことである。唯一神の御使い(ص)のカリフとされる人物であるが、振る舞いや行動において、唯一神の啓典や唯一神の御使い(ص)の慣行(スンナ)や素行(シーラ)に反する行いをするだろうか?第二に、この12人のカリフはイスラームの栄誉そしてムスリムたちの支えの要因である、という神々しい預言者様(ص)の言葉が残っている。これらの人物の時代は、果たしてこのようであっただろうか?この言行録(ハディース)はヤズィード・ブン・ムアーウィヤや彼のような人物に適するであろうか?ある者がウマル・ブン・アブドゥルアズィーズの傍でヤズィード・ブン・ムアーウィヤを雄大豪壮な人物であると述べた。ウマル・ブン・アブドゥルアズィーズは酷い不快感を示し、直ちにその人物を20回の鞭打ち刑に処するよう命じた。

ヤズィードは、唯一神の御使い(ص)の直孫で分身であるフサイン・ブン・アリーを殉教に追いやり、放蕩者で酒飲みであった。ヤズィード・ブン・ムアーウィヤが四年間の統治で犯した幾つもの犯罪行為を以って、彼を預言者様(ص)の12人のカリフに相応しいと見るのか?スユーティーは著書カリフの歴史の中で、彼らの犯罪や放蕩や姦通を挙げて、すべてのムスリムたちが、彼らをムスリムたちのカリフと見なすことを恥だと述べている。

b)
12人のカリフの言行録のために提起した、他方の解釈と比較検討とは、この12人のカリフは、間を空けず連続して繋がる必要はない、というよりむしろ、彼らの一部は、初期に在任した4人の正統カリフである、というものであった。1.ハサン・ブン・アリー(唯一神の御使いの直孫)、2.ムアーウィヤ、3.イブン・ズバイル、そして4.ウマル・ブン・アブドゥルアズィーズも後の4人のカリフであり、残りの4人は最後の審判が起こる前までにやって来て、統治する。しかし、この解釈も正しくない。何故なら、預言者様(ص)から伝承される言行録は、12人のカリフが連続して、間を空けることなくやって来ることを示しているからである。この解釈と正当化は、多大な徒労の原因となり、言行録から信用を手放す原因となることに疑いの余地はない。

有名なクルアーンの解釈者イブン・カスィールは、自身の著書で明確に述べている:12人のカリフのハディースの意味を述べる。彼らは善良で敬虔で適任なカリフであり、真実そして公正さ、正義を提示する…この12人のカリフの一人は《マフディー》であり、様々な言行録において、かの御方の存在の吉報を報せている。

同様に、アブー・ダーウードのスナンの注釈書バズル・ル・マジュフード
(بذل المجهود)において、12人のカリフについて様々な伝承を述べた後に、こう記している:12番目の最後のカリフは、イマーム・マフディーであるのは確実である。そして、私はこの伝承を真実であると理解する。
サヒーフ・ムスリムにさえ伝承されている。預言者様(ص)は仰った:

最後の時代において私の共同体(ウンマ)の中でカリフとなる者、彼は多大な財産を授けて、数え上げることすらしないのです。

この言行録(ハディース)においても《خلیفه》カリフの単語が用いられていることは、留意されるべきである。

一方の12イマーム=シーア派の言行録においても、この12人のカリフは提起されており、それは12人のシーア派イマームと照合一致されている。最初はアリー・ブン・アビー・ターリブ、そしてハサン、フサイン、そしてその後は九人のフサインの子孫で最後の者はマフディーであり、すべて連続して繋がっている。12人のイマームにおける言行録との照合一致が、言行録の信憑性と12という数字の信用性の根拠になることを示している。つまり、カリフは12人に限られる理由となる。

一部のスンナ派の研究者の言葉に留意する必要がある。彼らは述べている:12人のカリフという意図は、まさに預言者様(ص)のアフル・ル・バイトからの12イマーム=シーア派の12人のイマームのことである。そして、12人をウマイヤ朝の為政者たちに適用することは出来ない。何故なら、彼らの数は12人より多いうえに、彼らの多くが大変醜い罪の数々を犯している。同様に、この12人をアッバース朝の為政者に適用することは出来ない。何故なら、それはウマイヤ朝の理由と同様である。よって、この12人のカリフという意図は、まさに、彼らのすべてが公正で清純でアリーから始まりマフディーで終わる、預言者様(ص)のアフル・ル・バイト12人のイマームたちである。



六大真正ハディースにおける特殊な言行録

マフディーの家系の言行録


あらゆるものの身分証明とは、それらの血統と家系のことである。よって、身分証明は重要な主題である。何故なら《マフディー》は、12人の正統カリフの最後の人物であり、その偉大なる最後のカリフの家系は明白であるようにと、預言者様が言行録(ハディース)で報せているからである。

1.マフディーはアブドゥ・ル・ムッタリブの子孫である
イブン・マージャはスナンにおいて、自身に至る伝承経路でアナス・ブン・マーリクから、そして彼は唯一神の御使い(ص)から伝承する:

我々はアブドゥ・ル・ムッタリブの子孫で天国の民のリーダーです、私、ハムザ、アリー、ジャアフル、ハサン、フサイン、そしてマフディー。

この言行録(ハディース)は、マフディーがアブドゥ・ル・ムタッリブ(預言者ムハンマド様の祖父)の子孫であることを示している。

2.マフディーは預言者様の子孫である。
アブー・サイード・フドゥリーから伝承されている。唯一神の御使い(ص)は仰った:

マフディーは私からです。彼は、はっきりと広いおでこを持ち、鼻立ちがよく(知的な容姿であり)、地上を公正さと正義で満たしますが、彼以前は、圧制と不正で満ちていたのです。彼は七年間、地上を統治するでしょう。

3.マフディーは預言者様(ص)のアフル・ル・バイトからである。
六大真正ハディースで、アブー・ダーウード、ティルミズィーそして、イブン・マージャのスナンにおいて複数の言行録があり、マフディーがアフル・ル・バイトへ明確に帰属することを預言者様は明言しており、それらの一部は伝承経路の点で堅固で十分に信用できる。

1.アブーダーウードは自身のスナンで、アビー・トゥファイルから、彼はアリーから伝承する。預言者様は仰った:

もし、この世の寿命が一日以上無いならば、その日、唯一神は私のアフル・ル・バイトからの男性を遣わすでしょう。彼は、圧制と不正で満ちた地上を公正さと正義で満たします。

2.ティルミズィーは自身のスナンにおいて、アースィムから、彼はザルから、彼はアブドゥッラー・ブン・マスウードから伝承する。預言者様は仰った:

この世が消え去ることはありません。私と同じ名前で私のアフル・ル・バイトからの男性がアラブ人たちを治めるまでは。

3.そしてまた、ティルミズィーは別な伝承経路でアースィムから、彼はザルから、彼はアブドゥッラー・ブン・マスウードから伝承する。預言者様は仰った:

私と同じ名前で、私のアフル・ル・バイトからの男性がやって来ます。

4.イブン・マージャは自身のスナンにおいて、自身に至る伝承経路で、ムハンマド・ブン・ハナフィーから、彼はアリーから伝承する。預言者様は仰った:

マフディーは我々アフル・ル・バイトからです。唯一神は、彼の任務を一夜
において調整します。

5.同様に、イブン・マージャのスナンに記述がある:

アブドゥッラーは伝承する。我々が唯一神の御使い(ص)とご一緒する機会を得た時、ハーシム家の若者たちの集団がそこを通った。唯一神の御使い(ص)は彼らを見ると、まさに、彼の方の目もとが涙で潤み、顔色が変わった。我々は申し上げた:おぉ、唯一神の御使いよ!我々は、決してあなたの悲嘆や悲哀の表情を見ないことを所望いたします!唯一神の御使い(ص)は仰った:我々とは、この世の場所に来世を、至高なる唯一神が我々のためにお選びになった一門です;そして、まさに私が死んだ後、私のアフル・ル・バイトは災難や浮浪、放浪や追放に直面するでしょう、東から黒旗を掲げた部族がやって来るまで。彼らは彼らに与えられない善を要求します。それから(善に辿り着く道中で)彼らは戦いをして、助けられ、そして勝利を収めます。その後、彼らが求めていたものを彼らに与えます。ですが、彼らが私のアフル・ル・バイトからの男性に服従するまで彼らはそれを受け入れません。彼は世界を公正さと正義で満たします。まさに他の者たちがこの世を不正と圧制で満たした通りに。だから、その時代を理解したあなた方の一人一人は、仮に雪の上を這ってでさえも、彼らの許に急ぐのです。

4.マフディーはファーティマからの子孫
六大真正ハディースにおける言行録は、マフディーがファーティマからの子孫であることを示す:
1.イブン・マージャは自身のスナンにおいて、自身に至る伝承経路で、サイード・ブン・ムサィイブから、彼は唯一神の御使い(ص)の妻ウンム・サラマから伝承する。預言者様(ص)は仰った:

マフディーはファーティマからの子孫です。

2.アブー・ダーウードは自身のスナンにおいて、サイード・ブン・ムサィイブから、彼はウンム・サラマから伝承する。預言者様(ص)は仰った:

マフディーは私の一門から、そしてファーティマの子孫です。


預言者様(ص)とマフディーが同名である言行録


ティルミズィーのスナンにおいても、アブドゥッラー・ブン・マスウードから伝承する。預言者様(ص)は仰った:

この世は消滅しないのです、私と同名である私のアフル・ル・バイトからの男性がアラブ人を統治するまで。

また、ティルミズィーはスナンにおいて、別の伝承経路で、ザルから、彼はアブドゥッラー・ブン・マスウードから伝承する。預言者様(ص)は仰った:

私と同名の男性が私のアフル・ル・バイトからやって来ます。

このように、マフディーの名前はまさに偉大なる預言者様(ص)の清浄な御名、つまり《ムハンマド》であることを言行録は示す。



別の重要な言行録

1.ティルミズィーのスナンにおいて:

アブー・サイード・フドゥリーは有名な唯一神の御使い(ص)の教友から伝承する。彼は言った:我々の恐れと心配とは、唯一神の御使い(ص)の後での望まない事件の発生が、預言者様ご自身にこの問題を尋ねる原因となるかもしれないことからです(つまり、不明な事柄を預言者様に尋ねたいが、それが叶わない事態が来ることを心配している)。唯一神の御使い(ص)は仰った:私の共同体(ウンマ)の中から、マフディーが顕現します。顕現から五年か七年か、もしくは九年生存するでしょう―この言行録の語り手は懐疑的であるがゼイドである―結局彼の寿命はどのくらいか、幾つかの年数のどれが正しいかと伝承者に質問が提起された。すると、彼の寿命は幾年であると言った―唯一神の御使い(ص)はその後で仰った:彼の傍にある者がやって来て助けを求めます。そして、言います《おぉ、マフディー!私に与えてください》。彼もその者が運べるだけの量の金銀を彼の裾元に注ぎ込みます。

2.サヒーフ・ムスリムにおいて、ジャービル・ブン・アブディッラーから伝承される。唯一神の御使い(ص)は仰った:

私の共同体(ウンマ)から繋がる人々が真実の道において、最後の審判まで戦争する。それからイーサー・ブン・マリヤム(イエス・キリスト)が降臨する。そして、その信徒のグループの司令官が彼に言う:お越しください、我々の導師として礼拝にお立ちください(集団礼拝の導師)。イーサー様(彼にサラーム)はお答えになる:いいえ、あなた方のある者は、他の者にとって司令官です;なぜなら、唯一神はこの共同体を尊重なされたいのです。

この最後の言行録に注目して、幾つかの項目を理解する。
第一:イーサー様(彼にサラーム)が降臨する際に、ムスリムたちからの男性が彼らの事柄の管理人である。

第二:その司令官がイーサー様(彼にサラーム)に集団礼拝の導師を引き受けるよう要請することは、その司令官の信仰と適性をそれ自体が示す;このため、この言行録において、たとえ《マフディー》の単語が明言されていなくても、《マフディー》や《導きを得た者》の性質をその司令官について証明したことになる。

第三:イーサー様(彼にサラーム)がこの司令官に追従し、彼が導師を受け入れないことは、ムスリムたちの司令官がイーサー様(彼にサラーム)より優位であることをそれ自体が示す;なぜなら、他よりも劣る者が優れる者に対して上位に立つのは不穏当だからである。

第四:この言行録における《司令官(امیر)》とは、この司令官もまたマフディー以外になり得ないことを説明する。イーサー様(彼にサラーム)は、キリスト教の最後をイスラームの旗手であり相続人のマフディーの手に委ねるため、最後の時期に降臨することを知らなくてはならない。そして、世界のキリスト教徒をマフディーへ追従しイスラームを受諾することに招待することで、この二つの宗派(キリスト教とイスラーム)を有機的に結び付ける。このために、彼は人々がいる面前でマフディーを集団礼拝の導師に立てて、彼に追従するのである。

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※クルアーン日本語訳は「聖クルアーン日本語訳 澤田達一」より引用

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