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ムハッラム10夜目 イマーム・フサイン様らの追悼

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慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名によって

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おぉ、アッラーよ!祝福くださいムハンマド様を
そして彼の御一門を
そして彼らの救済を近づけてください

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イマーム・フサイン様にサラーム
アリー・ブン・フサイン様にサラーム
イマーム・フサイン様の子供たちにサラーム
イマーム・フサイン様の支援者たちにサラーム

ムハッラム10夜目

イマーム・フサイン様(彼にサラーム)

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彼を追悼します。


アーシューラーの前夜を
クルアーン朗誦と祈祷、礼拝、改悛の為に費やしたイマーム・フサイン様とその援助者たちは既に準備が整っていました。


アーシューラー当日の朝がやって来ました。

イマーム・フサイン様はクーファ総督軍とシャームからのヤズィード・ブン・ムアーウィヤ軍の人々に改めて呼びかけます。

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イマーム・フサイン様は

御自身が預言者様の直孫であり
イマーム・アリー様とファーティマ・ザフラー様の子供であること、

イマーム・ハサン様とイマーム・フサイン様は
天国における若者達の長である
という預言者様の伝承を思い起こさせます。

しかし、
それでも彼らの心には響きません。

・・・

司令官ウマル・ブン・サアドの出撃の号令が下ると
両軍入り乱れた戦いが始まりました。

一騎打ちにおいて、

イマーム・フサイン様側は敵なしの強さで
敵たちをなぎ倒していきます。

そこで、
勝ち目が無いと悟った敵軍司令官は
一騎打ちをさせず、

代わりに弓矢や槍などの攻撃で
イマーム・フサイン様たちの戦力を削ぐことにします。

・・・

次々と
イマーム・フサイン様の支援者たちが
殉教を遂げます。

・・・

遂に
アッバース様も殉教を遂げられ

残る戦士は
イマーム・フサイン様のみ独りとなりました。

イマーム・フサイン様は
残される人々にお別れを仰る為に宿営地のテントへ戻られます。

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全員が
この戦いが何との戦いか
理解していました。

しかし、
幾ら理解していても
愛する人との今生での別れは
語っても語りきれない辛さです。。。

哀歌を幾ら並べても
彼らの涙一滴にすら及びません・・・

ザイナブ様

ルカイヤ様

スカイナ様

イマーム・サッジャード様

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・・・

暑さと渇きで苦しむ乳児アリー・アスガル様への
同情も水も届かず
弓矢が乳児の首をえぐります

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首から流れ出るその血は
イマーム・フサイン様の血を受継ぐ乳児から・・・

血が天空へ飛び散り
熱された荒地に返り落ちます。

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・・・

遂に、
イマーム・フサイン様は戦場に出撃します。

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その勢いは猛虎の如く

イマーム・フサイン様に立ち向かう者はいません

大軍が散り散りに四方八方へと逃げだします

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猛虎の如く向かって来る
イマーム・フサイン様に立ち向かう勇気など
誰も持ち合わせていませんでした。

敵軍司令官は
彼を弓矢で射止めるよう指令を出します
・・・
豪雨のように弓矢が
イマーム・フサイン様の身体に降り注ぎます。
イマーム・フサイン様は
身体が弓矢だらけになるも倒れません。

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遂に、
イマーム・フサイン様の脇を目掛けて
鉄槍が突き刺さります。

その槍ごと
イマーム・フサイン様は
御馬ズゥ・ル=ジャナーフذوالجناحから振り落とされます。

そこに
恐る恐る
待ちわびた敵兵たちが攻撃を加えます

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・・・

イマーム・フサイン様を助けに駆け出してきた
まだ8歳程の子供アブドゥッラー・ブン・ハサンすらも

彼らは、
容赦なく殉教へと追いやりました。

・・・

しかし、

誰もが恐怖に慄き
イマーム・フサイン様にとどめを刺すことが出来ません。

・・・

そこに、
シムル・ブン・ズィ・ジャウシャン※1がやって来ると・・・

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あぁ、なんと!
イマーム・フサイン様の胸に足をのせて言うのです!!

何をやっているんだおまえらは?

さっさと、
楽にしてやれよ!

なんと、
無礼な口を!!!

イマーム・フサイン様は仰います:

私を殺そうというのか?

私が誰か知っていますか?


シムルはこの叱責の問いかけすらにも、

あぁ知っているとも・・・

母(ファーティマ・ザフラー様)も

父(アリー・ブン・アビー・ターリブ様)も

祖父(預言者ムハンマド様)もな!!!

・・・

・・・

・・・

暫く、

時間が流れると、


イマーム・フサイン様の御馬が
宿営地のテントへ戻ってきます。

しかし、

そこには主の姿はありません・・・

女性や子供たちは泣き崩れます・・・


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そして、
イマーム・フサイン様亡き今、

イマーム・フサイン様の首を槍に掲げて・・・

敵軍が
こちら目掛けて突進してくるのでした・・・

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訳者註:
―――――――――――――――――
※1.シムルではなく、
サナーン・ブン・アナスسَنان بن اَنَس بن عَمْرو نَخَعیが
最後のとどめを刺したとも伝承されています。
ーーーーー

多くの戦争は
領土拡大を達するための
侵略
略奪
征服
ですが

カルバラーの悲劇は
人間性の復権の為
真実の勝利を収める為
イスラームを生き返らせるため
の戦いです。

イマーム・フサイン様の戦士は全員殉教しました。
殉教は最高の命の捧げ方です。


1⃣クルアーンの視点では、

殉教者は唯一神のもとで
最後の審判の日まで生き続ける
と述べられています。

وَلاَ تَحْسَبَنَّ الَّذِينَ قُتِلُواْ فِي سَبِيلِ اللّهِ أَمْوَاتًا بَلْ أَحْيَاء عِندَ رَبِّهِمْ يُرْزَقُونَ
アッラーの道のために殺害された人たちを、死んだと思ってはならない。
いや、彼らはその主の御許で扶養されて、生きている。
3.イムラーン家169節
※クルアーン日本語訳は「聖クルアーン日本語訳 澤田達一」より引用

確かに
この世で、先程まで健常であった肉体は
剣や槍、弓矢あるいは爆撃でボロボロです。

しかし、
本当の人生とは
魂が肉体から去ってから始まります。

たとえば他人の権利を蹂躙した魂は
現世とあの世(幽玄界、برزخ)を自由に行き来出来ません。
囚われ、其々に応じた報復を最後の審判の日まで受けます。

しかし、
そうでない魂は自由です。

殉教者はまさに自由どころか
唯一神の傍という階位に到達します。

ヒトは誰もが死にます。
しかし死に方は色々です。

最も自分に有益な死に方
それは殉教以外にありません。


そして、
一般的な戦いの目的である

2⃣領土拡大や征服の視点ですが、

カルバラーの悲劇の地は現在どうなっているでしょうか?

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イマーム・フサイン様とアッバース様の聖廟がそびえ立っています。
アリー・アクバル様やアリー・アスガル様らに代表されるカルバラーの殉教者も共に埋葬されています。

ウバイドゥッラー・ブン・ズィヤードの墓は?
ウマル・ブン・サアドの墓は?
マルワーン一世の墓は?
ヤズィード・ブン・ムアーウィヤの墓は?
ムアーウィヤ・ブン・アブースフィヤーンの墓は?
シムル・ブン・ズィ・ジャウシャンの墓は?
・・・

彼らの政権は?
彼らの土地は?
彼らの子孫は?
彼らの遺産は?
彼らへの涙は?
彼らへの愛は?

ヤズィード・ブン・ムアーウィヤ
ウバイドゥッラー・ブン・ズィヤード
ウマル・ブン・サアド
シムル・ブン・ズィ・ジャウシャン
・・・

彼らは、
イマーム・フサイン様たちを殉教に追いやり、
亡骸を蹂躙し、
テントを襲撃して女性や子供たちを捕虜にしましたが、

彼らは何を得たのでしょうか?


典拠
――――――――――――――――
امام حسین علیه السلام

شمر بن ذی‌الجوشن ضبابی

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