5代目イマームとキリスト教大司教との討論

ヒシャーム ブン アブドゥル=マリク[1]がイマーム バーキルをシャーム(シリア ダマスカス)に呼び寄せたと伝えられています。シリア到着後にイマームは人々の集会に参加し、彼らの質問に答えました。ある日、イマームはキリスト教徒たちがその地域の山に登っているのを見ました。
イマームは周囲の人々に「今日はイードですか?」と尋ねました。彼らは答えました「いいえ、そうではありません。毎年この日、彼らはイエスの使徒の仲間たち[2]を認識し理解した賢明なキリスト教学者のところに行き質問します」そこでイマームは覆面をして仲間たちとその山に行き、キリスト教徒たちの中に座りました。直ぐにこの報せがカリフであるヒシャームのもとに届くと、その集会でのイマームの様子を報告するよう命じました。
大司教は群衆を眺めるとイマーム バーキルの顔が目を惹きました。彼はイマームの方を向いて尋ねました:
司:あなたは我々キリスト教徒の者ですか?それともムスリムですか?
イ:ムスリムです。
司:学者ですか?それとも無学な者ですか?
イ:無知な人間ではありません。
司:私が先に質問しましょうか?それともあなたが質問しますか?
イ:もしお望みであれば、あなたが質問してください。

①天国に排泄物がないこと

司:なぜあなたたちイスラーム教徒は、楽園の人々は食べたり飲んだりするが糞便をしないと主張するのですか?この世にこの問題に関する明確な例はあるのでしょうか?
イ:はい、あります。この世におけるその明確な例とは、母親の子宮の中で栄養を摂取する一方で糞便をしない胎児です。
司:おおなんと!あなたは学者ではないと言ったではありませんか?!
イ:そうは言いませんでした。無知な人間ではないと私は言いました。

②天国での恩恵が減らないこと

大司教は続けて天国の果実と恩恵について質問しました。
司:天の果実や祝福、恩恵は減らず、そこから消費されるものはそのまま残り、減らないのはなぜだと思いますか。この問題について、この世における現象の明確な例を見つけることはできますか?
イ:はい、その明確な例は、五感で認識される[3]火があります。1つのロウソクの火から何百ものロウソクを点灯した場合、最初のロウソクの炎はその場所に残り、決して減ることはありません。

③特殊な時間について

司:別な質問をします。昼でも夜でもない時間を教えてください。
イ:それは、ファジルと日の出の間の時間であり、苦しむ人々が安らぎを見つける時間です。
この答えを聞くと、大司教は叫んでこう言いました「問題が1つ残っています。神に誓いますが、あなたは決してそれに答えることはできないでしょう」
イ:確かにあなたは誓って嘘をつきました。

④ウザイルと兄弟について

司:同じ日に生まれ、同じ日に亡くなり、一人は50年、もう一人は150年生きた双子について教えてください。
イ:彼らはウザイルとその兄弟で、25歳になったとき、ウザイルは馬に乗ってアンティオキアの村を通りかかったとき、村が完全に破壊されているのを見て、こう言いました「唯一のカミサマは破壊されたこの村をどのようにして復活させるのでしょうか?」
カミサマが彼を預言者として選び、導いたにもかかわらず、そのような言葉を言ったとき、カミサマは彼に怒り、彼の言った不適切な言葉によって彼を百年間死なせ、彼のロバと食物と飲物を伴わせて生き返らせました。
それから兄弟のところに戻りましたが自分の兄弟であることに彼は気づいてくれませんでした。ですが、客人としてもてなされました。ウザイルの子供と更には孫も集いました。そのときのウザイルは25歳の若者でした。ウザイルは兄弟と自身の子供や孫に続けざまに彼らに関する思い出話をすると、今やあなた方は老けてしまったのだ、と言いました。その時125歳であった兄弟は言いました「若い頃に私と兄の間に何が起こったのかを詳しく知っている25歳の若者を見たことがありません。ちょっとあなた!天使ですかそれとも人間ですか?」
ウザイルは言いました「おお兄弟よ、私はウザイルです。カミサマは私の不適切な言葉にお怒りを表し、私を罰するためにそして私の確信が増すために百年の間、私を死の状態に置かれました。そしてこれらは家から出る際に持っていた食事と飲物そしてロバです。まさに今カミサマは私をその当時の状態で蘇らせたのです」
ウザイルの兄弟は彼の話を受け入れました。それからウザイルは彼らと25年を共に過ごして、ある日一緒に亡くなったのでした。

大司教は難しいと思われる問いをすべて質問し、説得力のある答えを聞きました。そして自分が無力であることに気づいたとき、彼は非常に動揺して怒り、こう言いました「「皆さん!あなた方は、知識と宗教的知識のレベルが私よりも優れている偉大な学者をここに連れてきました。私に恥をかかせ、彼らの指導者が私たちよりも優れ、賢明であることをイスラーム教徒に知らせるためです!! 唯一神に誓います、もうあなたたちとは話しませんし、私があと一年生きたとしても、あなたたちは私をあなたたちの中に見ることはないでしょう!」彼はそう言って立ち上がり出て行きました。

この出来事はたちまちシャーム中に広まり、シャームの街は歓喜と興奮の熱気に包まれました。カリフのヒシャームは、キリスト教徒に対するイマーム バキールの輝かしい学術的勝利を喜ぶ一方で、イマームの精神性やカリスマ性をますます恐れるようになり、贈り物を送るふりをしながら、その日のうちにダマスカスを離れなければならないというメッセージをイマームに送りました。

他に有名なイマーム バーキルの討論:
مناظره با حسن بصری
مناظره با هشام بن عبدالملک
مناظره با محمد بن منکدر
مناظره با نافع بن ازرق
مناظره با عبدالله بن معمر لیثی
مناظره با قتادة بن دعامة


[1]. ウマイヤ朝10代目カリフ.
[2]. .حواریون
[3]. .عالم محسوسات

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