絵本を超えた絵本。ヴェーラ・パヴロワの耽美なる世界。
絵本「夏の夜の夢」
絵本って、子どもだけのものと思ってませんか?
本日ご紹介するのはロシアの画家、イラストレーターのヴェーラ・パヴロワ(1952-2015)の作品集です。
今でこそショップで多くの絵本を紹介しているイスクーストバですが、当初はショップで絵本を積極的に取り上げようとは考えていませんでした。ソビエト絵本などは日本でも有名で愛好家も多いですし、うちで扱う必要性をあまり感じなかったのです。
しかし、そんな先入観を打ち破ってくれたのが、ヴェーラ・パヴロワの絵本でした。
私とパヴロワとの出会いはお客様より彼女の絵本を探して欲しいとのご依頼を頂いた時です。そこでパヴロワ関連の書籍を探していると、一冊の本と出会いました。それが「ポーソロニ」です。
作:アレクセイ・レーミゾフ「ポーソロニ」復刻版
一目見た時、彼女の作品をどう言葉で表現したらいいか分かりませんでした。ロシアのイコンやビザンチン美術を思わせる画風はあまりにも独特で、飲み込むのに時間がかかりました。私の貧弱な語彙では表せる言葉などなく、ただ「美しい」という一言しかありませんでした。とにかく美しいのです。
「ポーソロニ」の挿絵より
この瞬間、私の中で絵本への見方が変わりました。絵本は一つの芸術作品になり得るのだと。
素晴らしいのは挿絵だけではありません。パヴロワは挿絵とタイポグラフィの統一性が重要と考えており、ブックデザイン全般にも関わっています。キリル文字がいまいち分からないという方も多いと思いますが、パヴロワの奇妙で美しい挿絵と読めない文字の羅列とのアンサンブルによって、まるで異世界にある魔法の本を開いたような不思議な感覚になります。
「ポーソロニ」の一節より
「おおきいものとちいさいものの物語」より
パヴロワの作品の特徴はこの独特で古めかしい絵柄にあります。人物の平面的なフォルム、能面のような表情は15世紀イタリアのルネサンス絵画を思わせます。
「ポーソロニ」の挿絵より
「きつねとつる」の挿絵はロシアの伝統的な版画であるルボークを彷彿とさせます。
イコン画、ビザンチン美術、ルネサンス絵画など中世の芸術から多分にインスピレーションを受けたパヴロワの作品は、現代の私たちが失ってしまった何かを思い起こさせてくれます。
イスクーストバではパヴロワの絵本をいくつか取り揃えています。
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