「お酒ではなく本を出すバー」で本と文化の「密」な話ができる場所を小さな本屋さんで作り出す
イスクーストバです。
今回は先月の11月1日と3日に古書店タバネルブックスと共同で行ったイベント、Book Bar at Tabaneruについて、軽く振り返っていこうと思います。
「お酒でなく本を出すバー」とは?
まず、「ブックバー」という単語を耳にしたときに皆さんが思いつくのは、お酒などのドリンクを提供するバーに本が置いてあり、お酒を嗜みながら本を読む、という場所だと思います。私自身そうした空間は好きですし、一人静かに人とではなく本と語り合える時間はとても充実して楽しいものです。
こうしたお店に置いてある本って、基本的には文学などの読み物が多くを占め、それも日本語の書籍ですよね。
ただ、イスクーストバが紹介している書籍は読み物ではなく、日本語ですらないロシア語の美術書がほとんどなので、普通にお酒を飲みながらのブックバーをやるとしても、ロシア語やチェコ語など外国語の書籍相手だと、お客さんが何を選んで良いかわからないことが多いのではないかと。
そこで思いついたのが、お客さんからなんとなくのお好み(たとえば、海の絵が見たいとか、シュールで可愛らしい絵本が見たいとか)を伝えていただいて、ぴったしの本を何冊かお出しし、その本の魅力や文化的な背景を適切にガイドしながら、本を通じて新しい世界を知ってもらう、そんな「本を出すバー」です。
イベント当日の様子
11月1、3日に開催したイベントの様子を写真を交えながら振り返っていきます。
こちらはメニュー表。お客様も初めてだとどんな本を見たらいいか分からないという懸念から、タバネルのアイデアで選書した書籍をなんとなくジャンル分けしてみました。左がイスクーストバ担当で、右がタバネル担当と分かれています。
タバネルの書棚の全体像。チェコの絵本コレクションがすごい。
感染症対策にフィルムや仕切りを用意。狭い店内で密にならないよう席の間隔も広めにとり、椅子とテーブルの消毒も適宜行いました。今回は完全予約制をとり、1回3席のみとしました。
今回はお酒などのアルコール類は提供せず、コーヒーか紅茶をお客様にお出しすることに。ゆっくりとアートブックを眺められる空間に仕上がったと思います。
この辺はロシア棚。美術館カタログや、絵本を中心に選書。お酒のラベルを眺めるような感覚で、アートブックの表紙が目に入るよう、なるべく面出ししています。
実際にお客様に参加頂いた時の様子。みなさん真剣に美術書や絵本を眺めていらしゃってました。
ロシア語が分からなくても、なんとなくでもロシア絵画の魅力を知ってもらえるよう努力しました。ロシア美術はイスクーストバの専門なので、お客様が美術書を眺める傍らで画家のバックグラウンドや作品解説など、丁寧にガイドしました。ソ連時代のアンダーグラウンドアートと絵本との関連性などについて、ipadで手持ちの資料写真をお見せしながら、本の図版と並べながら解説することもありました。
本と文化の「密」な話ができる場所を目指して
今回のブックバーでは、お客さんと本を通じた双方向のコミュニケーションが想像以上に活発になり、そういう絵の見方もあるのか!と、こちらもたくさんのことを教えて頂きました。
ロシアには海しか描かなかった画家もいれば、森しか描かなかった画家も存在した…。チェコの絵本にはシュールだがどこか憎めない可愛いさがある…。などなど、お客様の側としても、不思議な国の不思議な本と出会いによって未知なる世界への扉が開かれ、新たな発見やインスピレーションを感じ取れる場となれたはずです。
またイベントでは2時間制で席料として1500円を頂戴しており、正直、本を眺めるだけのイベントでこれは高いのではないか?と不安が募っていたのですが、実際にお客様にご感想を頂いたところ、映画一本くらいの感覚で特に高く感じることはなかったと、皆さんご納得された様子で安心しました。
どのお客様も、2時間はあっという間でもっと眺めていたかった、とおっしゃってくれたのがとても嬉しかったです。
一人静かに本を探したり眺めたりする本屋さんこそあるべき姿なのかもしれません。
でもたまには本と文化の「密」な話ができる場所があってもいいんじゃないかなと日頃感じていて、今回思い切ってタバネルさんをお誘いして今回の企画を立ててみることに。
何も初めての試みのため、当日どうなるのかもうビクビクしていたのですが、ご参加いただいたお客様にはかなり好評で、是非次回の開催も待っていますとのお声を多数頂いて内心ホッとしました。
そんな実態の分からない謎のイベントに、わざわざ遠方から来て頂いたお客様もいて、感謝しかありません。本当にありがとうございます。
タバネルブックスコメント
今回共同でイベントを開催したタバネルブックスの店主中野さんにもコメントを頂いています。
普段店舗ではお客様一人一人に本の説明の時間が割けなかったので今回選書をテーマの予約制のイベントとして形作ることにより、様々な視点からアート・絵本のお話を深掘りしつつじっくりご説明出来たのではないかと思います。
例えばロシアの1920-30年代の絵本はこういうイラスト、一方フランスの同じ年代の絵はこういったもので...と言う風に国を飛び越えデザインから絵画からも見てみると新しい発見・体験をしてもらえるといったようなことです。
こちら側にもまだまだ知識や接客力が必要であり、自分の思っている固定概念を打ち破らなければ発展させるのは難しい企画だなと感じました。
ですが、その後お客様からのご感想で気づくことも多く考えの幅を広げ成長出来るきっかけになったのでまたぜひ開催したいイベントだと思います。
好評につき次回開催も検討しています。昨今の状況を鑑みるとすぐには難しいのですが、場所はここに限らず来年の春先にでもまた開催できたらと思います。
その際には開催日時や席数も拡大し、より多くのお客様に来ていただこうと考えています。皆様のご参加を心よりお待ちしております。
【タバネルブックス】
東京都大田区東雪谷2-30-3
営業時間:
水・木・金・15:00〜21:00
土 13:00〜19:00
アクセス:東急池上線「石川台」駅を降りて徒歩8分ほど
店舗URL(オンラインショップ):
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