うまくいえない。ースガシカオを少しお借りしてー

うまくいえない。
自分の気持ちをうまくいえない。

「好きです」と伝えることは、思いのほか簡単なことで。
「好きです」と伝え続けることは、思いのほか難しい。

肝心なことほど、うまくいえない。
いいたいことが体の内部に深く沈んでいるほど、
その核心をつかむことができなくて。
出てきた言葉は皮膚を掠めて消えていく。

君が笑ってる それだけでいいんだ
君が泣いている どうすればいいんだろう?
こんな遠回りばかりで 僕の手は君に届くの?

スガシカオ「コーヒー」

近道をしようとして、遠回りをしている。
短く伝えようとするから、長くなる。
伝わりやすい言葉ばかり選んで、
何も伝わらない。

言葉がいま詰まってしまったら
ぼくらの夏は ここで終わってしまいそう
上手に笑えてる自信なんか 
あるわけないのに でも笑った

スガシカオ「夏陰〜なつかげ〜」

どんなに悲しい時だって、
気づけば誰かの前で笑っている。

私は、笑うことしかできない。
誰かを楽しませる自信もないし、
何かを上手に伝える自信もない。

つらい時も楽しい時も、
ただニコニコと佇むことしかできない。
それで精一杯なんだ。

ーーーーーー

誰かを愛することを諦めてから、
旅が好きになった。

愛することに使っていたエネルギーを、
旅に使い始めたといってもよいのだろう。

誰かを愛し始めるときの感情は、知らない駅にひとりで降り立った感覚と似ている。周りのこと全てに神経質になって、気を遣って、ものすごく疲れてしまう。

目まぐるしく変化する事象の中で、
風に揺れる萩の花のように、
足元をみつめながら、
静かに、しなやかに、揺蕩う。

そんな生き方をしてみたい。

大事な言葉を 何度も言おうとして
すいこむ息は 胸の途中で途切れた
どんな言葉で 君に伝えればいい
吐き出す声は いつも途中で途切れた

スガシカオ「黄金の月」

人生は思いのほか早く終わる。

そう思えば、このなまくらな身体もいうことを聞いて、もう少し遠くに行けるかもしれない。

愛おしいともだちから、
大切にしてもらった記憶をかかえて、
次の旅先を夢見る。

その身を横たえることのできる小さなくぼみを探して、私は旅をつづける。



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